周りの奴らと、つながった
時を戻そう。
回想のおかげか、説教の記憶がほとんどない。
鬼のように怒られてたことだけは覚えてる。すげぇ迫力だったなあ。
「いや~、鬼に怒られちゃったね~」
隣を歩くアキさんが反省するようにつぶやく。
僕らの破壊騒動もひとまず落ち着いたが、
オリエンテーションは別の場所で行われるとのことで今は移動中だ。
・・・ん?鬼に?
「鬼のように、じゃないんですか?それだと鬼から怒られてたみたいじゃないですか」
ははは、と笑いながら僕は指摘してあげた。
「何言ってんの、あの先生オーガだったよ?猛烈に怖かったよ~」
え?
「鬼の種族なだけあってすごい迫力だったのに、アキくん平然としてるんだもん!意外と度胸あるんだね!」
まじか。回想でぼーっとしてたからわからんかった。
角生えてるように見えたのは、比喩表現のつもりだったのに・・・ガチ角だったのか。
あとでじっくり観察しよう。
「えーと、壊れちゃった講堂の代わりにどこでやるんだっけ?オリエンテーション」
「大講義室って言ってましたよ。あと壊れちゃったんじゃなくて、壊しちゃったんですよ。わかってます?」
「原因はキミのガーゴイル号だからね。私の責任はアキくんの責任です」
なんてガキ大将理論持ち出してんだこの女。シバいたろか。
「てかアキくん、同じ新入生でしょ?敬語とかさん付けとかやめてよ、なんかムズムズするよ~」
そういえば、事故った時のままでしゃべってたからなんか他人行儀だったわ。
「それもそうだね。考えたらタメ語でいいじゃん。改めてよろっぷよろっぷ」
「えぇ、いきなり馴れ馴れしいじゃん・・・やっぱり敬語戻してよ」
「自分から敬語やめろって言っといて?」
理不尽極まりねぇ。やっぱりシバいたる。
そうこう言ってるうちに大講義室なるところに着いたようだ。
わりとでかい。100人入っても大丈夫、って天の声が聞こえてきた気がするわ。
僕らが入って少ししたタイミングで、オリエンテーションが始まったようだ。
集まった人は見た感じ、100人いない感じかな?
他種族も割とたくさんだ。魔界の種族もいるようだし、その辺はフランクな学校なのか。
辺境ということもあり、大学にしては少なめの生徒数っぽい。
あんな破壊事件が起こった後だったが、何事もなかったかのように
淡々とオリエンテーションは進んでいく。
なんか周りの僕を見る目がとても痛々しく感じたが、とりあえず流しとこう。
そうこうしていると、司会のオーガ教授が在校生らしきひとりを呼んだ。
というかオーガさん司会なんすか。結構上の立場の人だったのか、目を付けられちゃまずい人だっただろうか・・・。
『在校生代表、挨拶をお願いします。』
オーガさんが呼ぶと、美人な感じのすらっとした人が登壇する。
あんな人もいるのか、おらワクワクしてきたぞ。
周りの男子たちも明らかにそわそわしてる。そりゃ美人さんみればそうなるよね。全種族同じです。
というか、よく見たらミナさんも・・・あ、さん付けやめろって言ってたか。
ミナもよく見たらそわそわしてる。ほかの女子はそんな感じじゃないけど、どうしたんだろ。
『えー・・まずは入学された皆様、おめでとうございます!』
声も明るくて素敵だ。惚れてまうやろ。
『不安なこともあると思いますが、この大学は種族関係なく、優しい人ばかりです!何かあればいつでも相談してください!』
言ってる内容はありふれたものだが、優しさを感じる。こんな人がいるんだ、きっと校風もよいものに違いない。
『いきなり大事故起こした人もいるみたいですが、みなさん仲良くしていきましょう!』
その通りだ。みんな仲良くな。ほんとに仲良くな、頼むわ。ぼくを前科者扱いしないでくれよな。
『では、以上で挨拶とさせていただきます。ぜひ、よいキャンパスライフを!』
パチパチパチ・・・
ありふれた挨拶だったが、美人さんがやるとあんなになるのか。
感動しました。全種族が涙した。涙出てないけど。
そんなくだらない事を考えていて、ふとミナに目をやると・・・
「ううっ、グスッ・・・」
えっ、ガチ泣き?まさか今さら罪悪感?
仕方ない。ここはぼくの囁きで罪をミナが被るよう誘導して、ぼくは無罪に・・・
「グスン・・お姉ちゃんすごいな・・・。思わず泣いちゃった・・・。」
悪どい考えを巡らせていると、そんなつぶやきが聞こえてきた。
え?お、おねえちゃん?あの美人さんが?
まさかミナ、人種だと思ってたのに・・・
(((妹という種族なのか!!!???)))
この時だけ、見た目も考えも多種多様な周りの奴らと、
意思がつながった気がした。