王妃の過去
私はある明るい春の日に生まれた。貧しいけれど美しい家で、優しい両親に囲まれて。
「あなたの名前はガーネット。ガーネット・サフィアよ」
「なんてかわいいんだ!お前の母さんが美人だからだぞ、ガーネット」
「うふふ、あなたったら」
幸せだった。
隣の家には同い年の女の子がいて、すぐに仲良くなった。エメラルドという名前の彼女は、活発で可愛らしい子だった。
そして私たちは、すごくよく似ていた。瞳の色以外は。ブラウンの瞳だった私は、エメラルドの薄緑色の瞳が羨ましかった。でも、それを口に出すと、エメラルドは驚いたようにこう言った。
「ブラウンの瞳だって素敵よ!それに、ガーネットの目の色があたしと一緒だったら、あたしたち見分けがつかなくなっちゃうわ。ひとつくらい違う方がいいわよ」
この言葉は本当に嬉しかった。おかげで、私たちが似ていることはもちろん、ひとつの違いも今は私の誇りだ。
でも、こんな幸せな日々は突然壊れた。アクア・アメジスト。彼女のせいで。
私とエメラルドがふたりで公園で遊んでいるときに、彼女はやってきたのだ。
「こんにちは、お嬢さんたち」
「…こんにちは。あなたは誰?」
「私はアクア・アメジスト。国では有名な貴族だよ。そして今は、孤児を助ける活動をしているの。あなたたちも見たところそうよね?そんな汚い格好で、子どもだけで公園にいるんだものね」
「違うわ!私たちには素敵な両親がいますもの」
「そうよ。それにあなた、ぜんぜん優しい人には見えないわ!」
エメラルドのその一言がまずかったのかもしれない。アクアは家臣に指示してあっという間に私たちを縛り上げると、そのまま馬車に放り込んで屋敷まで連れ去ってしまったのだった。
アクアが孤児を助ける活動をしている、というのは真っ赤な嘘だった。彼女は私たちを召使にした。毎朝、大きな紙にびっしりとその日の仕事を書いて渡され、それをこなすために朝から晩まで働いた。
失敗をすると暴力を振るわれることもあり、エメラルドとともに、買い物の途中によく街の病院に行った。クォーツという名のその医師はとても優しくて、私たちからお金を取ることはなかった。
こっそり逃げ出そうとしたこともあったが、すぐに捕まり、三日間ご飯を抜かれてしまったので、諦めるしかなかった。
こんな日々の中、エメラルドと一緒であることだけが心の救いだった。しかし、しばらくすると彼女とも引き離されてしまった。
アクアの娘、マリンが結婚したときに、エメラルドが一緒に連れていかれてしまったのだ。私はひとりぼっちになった。辛くて辛くて仕方がなかった。でも、いつかきっと救われるはず。エメラルドと言い合ったその言葉をひとりで呟き、なんとか耐えていたのだった。




