舞踏会
舞踏会は、それはそれは豪華で煌びやかなものでした。私こそが王子様の妻に、と意気込む娘たちは、ドレスと宝石で着飾り、美しく舞っています。
王子様は、彼女たちと順番に踊りながら、あの少女を待っていました。彼女に対して何か思うところがあったのでしょうか、王妃様が彼女にドレスを着付け、化粧を施し、舞踏会の準備をしているのです。
そろそろ舞踏会の山場、ワルツが始まる頃、ついに彼女がやってきました。王妃様の侍女に先導され、大階段をゆっくりと下ってくる少女は、言葉では言い表せないほど美しく、宝石は身につけていないのに、まるでダイアモンドのような輝きを放っていました。
王子様は少女に近づき、そっと手を取ると、大広間の中央まで進んで行きました。王妃様の指示でワルツの演奏が始まると、ふたりは見つめ合い、微笑み合いながら踊り始めました。周りの人々は、少女が王のおふれに背いた罪人であることも忘れ、ふたりの踊りをうっとりと眺めています。それほどに優雅な舞だったのです。
舞踏会が終わり、賑やかな立食パーティーが始まると、王子様は少女の手を引いて、こっそりと庭へ連れ出しました。夜空には丸く大きな満月が浮かび、ふたりを見守るように優しく照らしています。少女の心も、その満月のように明るく満ち足りていました。
「美しい月だ」
「ええ、本当に。この時間がずっと続けばいいのに、と思うほどですわ」
「本当だな。…君は、名前は?」
「私はダイアナと申します…ダイアナ・アメジストです」
フルネームを言うのに少し躊躇ったのに気付いた王子様は、尋ねました。
「アメジスト家の娘、ではないのか」
「いえ…私は、召使いです。本来、このように王子様と並んで歩けるような身分ではございません」
「あぁ、それで今日来ることができなかったんだな?」
少女は、召使いと聞いて王子様が嫌な顔をすると思っていたので、目を見開いたまま答えます。
「…そうなのです。ご主人様に、仕事が全て終わるまで家を出てはいけないと言われて、連絡もできませんでした…。申し訳ありません」
言いながら少女はぎゅっと辛そうに顔を歪めました。王子様は少女の頭を撫でながら、
「そんな事情なら仕方ないな。父上に話して、君の処罰の件は取り下げてもらおう」
と微笑みました。少女はまだ不安そうです。
「ありがとうございます。ですが、皆さんは私の言葉を信じてくださるでしょうか…」
「大丈夫さ。心優しく美しい君なら絶対に信じてもらえる」
王子様の言葉に頬を染める少女を見て、王子様とふっと息を吐き、跪きました。
「ダイアナ、僕と結婚してくれないか」




