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序曲-Overture

 昔々あるところに、小さな国がありました。

 その国の王様と王妃様にはひとりの息子、国の跡継ぎとなる王子様がいらっしゃいました。王子様はすくすくと成長し、立派な青年になりました。そこで王様は、王子様を結婚させるために、王宮で舞踏会を開くことにし、国中におふれを出しました。

「次に満月の晩に、王宮で舞踏会を開く。王子の結婚式も続けて開くため、全員出席するように。」と。

 とうとうその日がやってきました。王宮にはぞくぞくと、きらびやかな馬車に乗り、華やかな正装に身を包んだ国民たちが集まってきます。

 ところが、舞踏会が始まる時間になっても、一人だけ出席していない人がいました。何か事情があれば王宮の兵隊に連絡が来るはずでしたが、それもありません。

 この国には昔から、王のおふれに背いた者は王宮の牢獄に一年間捕らえられるという法律がありました。さらに、出席していないその人は未婚の女性でしたから、王子様の結婚相手を選ぶ上では、絶対に出席していなくてはならない人でした。

 ですから、王様はとてもお怒りになりました。家臣にその女性を探させ、先に舞踏会を始めてしまおうとする王様に、王子様が声をかけます。

「父上、あと一人の到着を待たずに会を始めるおつもりですか」

「うむ。そのものは罪人という扱いになるから、お前と結婚させるわけにもいかぬしな」

「しかし、父上は全ての女性に参加せよとおっしゃいましたよね。そういった以上、彼女も参加すべきだと僕は思うのです。何か事情があったのかもしれませんし」

「だがしかしなぁ…」

 渋る王様の心を変えさせたのは、

「良いではありませんか、待ちましょう」

という王妃様の一言でした。

 会の前の軽食を楽しみながら残る一人の到着を待っていると、すぐにその人が家臣に連れられて大広間に現れました。

 なんと美しい少女でしょう。エメラルド色の瞳に、白い肌に映えるバラ色の唇、そして、美しく長いブロンドの髪。王子様と同い年くらいに見える彼女は、宝石箱のようなこの場には場違いな質素な服を着ていましたが、それでも、周りの人々に勝るほどの美しさを備えていたのです。

 大広間にいる全員が、少女を見てざわめいています。王子様も例外ではなく、玉座を降りてすっと彼女に近づきました。

「初めまして。王子のジョージ・トパーズです。少なくとも会の間は君は自由ですよ。会にはぜひ参加してください。君の処罰については、事情を聞いて僕がなんとかしましょう。それでは、また後で」

 目を見開いている少女に微笑みかけ、王子様は王様に、

「さあ、舞踏会を始めましょう」

とささやきました。少女に向けられる嫉妬の視線には気づかないままでした。

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