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第2話 どっちも彼女!?

 


 ちょっと何言ってるかわからない。


 今確かに、青宮と黒崎の2人から彼女宣言をされたよな。


 それってつまり……。


「俺、二股してるってこと!?」

「まあ、世間一般から見たらそうなりますね……」

「記憶喪失前の俺、最低じゃねえか……」

「優真が気にすることじゃない。今の状況は、私たちが望んだことなんだ」


 そう言われたって気にするに決まっている。

 

 今の状況を望んだって、二股を望んだってことなのか?


 一体何の理由で?


 こういう時、記憶があったらどんなに楽だろうと思う。

 どんなに頭を捻っても、俺は過去の出来事を知る由がない。


 だいたい、この2人はどうして俺に惚れたんだよ。


 自分で言うのは虚しいが、俺はお世辞にもイケメンとは言えない。

 かといってブサイクとも思っていないが、どんなに良く見積もっても中の中……出血大サービスで中の上の少し下くらいだと思っている。

 身長も平均プラス数センチくらいで特段高いわけではなく、運動神経が良いとか、勉強ができるといった誇れる特徴も無い。


 そんな普通の俺が超絶美少女とお付き合い、ましてや2股などできる御身分じゃないのだ。 


「もしかして、優真。どうして普通の俺が超絶美少女とお付き合い、ましてや2股など……みたいなこと考えてる?」

「図星なんだけど……黒崎さんってエスパー?」

「やっぱりね。優真の考えそうなことはわかるよ」


 いや、わかるレベルの話じゃないだろ。


 一字一句合っちゃってるし、自分で超絶美少女とかいうか普通……まあ超絶美少女なのは間違いないんだけど。


「だって、おかしいじゃんか。普通に考えて、俺が2人と付き合えるわけが――」

「おかしくなんてないよ!」


 俺の言葉が、甲高い大きな声に遮られる。

 横に首をぶんぶんと振る青宮から発せられた声だ。

 丁寧に手入れされた黒髪が、左右に激しく揺れている。


「おかしくなんてない。私が優真くんを好きになって告白したんだもん!」

「私もそうだ。出会って、惚れて、そして告白した。他でもない優真にね」

 

 青宮と黒崎の曇りのない真剣な眼差しが俺の目を真っ直ぐに捉える。


 そんなにストレートに異性からの好意を寄せられると、こっちが恥ずかしくなって思わず顔を逸らしてしまう。


「信じられないなら、今から優真くんの好きなところを列挙しましょうか? まずは――」

「わかったわかったわかった! 信じるよ、信じるから、それ以上はやめてくれ」

「いいえ、優真くんはわかってません! 私がどんなに優真くんのことを好きか、思い出してもらえるまでやめません!」


 え――……そんなこと言われても困ってしまう。

 

 不満そうに口を尖らせる青宮は怒っているのだろうか、ぷくっと頬を膨らませた姿がリス見たいでめちゃくちゃ可愛い。

 身長と相まって、なんとなく小動物っぽいイメージが当てはまる。


「なあ、優真。私たちのことは全く覚えていないんだろう?」


 優しいところ、カッコいいところ、と本当に俺の好きなところ列挙を始めてしまった青宮の口を片手で塞いだ黒崎が、相変わらず凛とした顔のまま俺に問いかけてくる。


 モゴモゴ、と青宮の口がまだ動いているが、残念ながら声になっていない。


「申し訳ないけど、これっぽっちも……。俺にとって2人は初対面みたいなものなんだ」

「だってよ、楓。優真が今の状況が信じられないのも仕方ないだろ? まずは記憶喪失前に、何があってこうなったのかを1から全て話す必要があるんじゃないか?」

「うーー。香菜ちゃんの言う通りです。私、ずっと覚悟してきたんですけど、結局焦って早とちりしてしまいました……」


 黒崎になだめられ、口塞ぎから解放された青宮ががっくりと肩を落とす。

 

 喋り口調からなんとなく、青宮は落ち着いていてる人だと思っていたが、実際には結構活発な性格のようだ。

 逆に、運動大好き、今すぐ動きたい! って感じのビジュアルをしている黒崎の方がブレーキ役として冷静に動いてくれている。


 このまま学校へ登校するまでの道で、事のあらましを話してくれれば最高だ。

 一刻も早く、この理解に苦しむモテモテ状態の全貌を知りたい。

 そうじゃないと、とても授業に集中できそうにない。


「ということで、後は頼んだぞ楓」

「香菜ちゃん、お任せください! 練習頑張ってね!」

「えっ? どういうこと?」


 説明担当は黒崎がいいなあ、などと考えていた矢先。


 俺の肩をポン、と叩いた黒崎が、すぐ横を通って走り抜けていった。


「最後に優真。記憶を無くした優真にとって私たちは初対面だから、一応さん付けをしているんでしょ? こっちとしては折角詰めた距離が遠く離れたようで悲しい。出来れば呼び捨て。欲を言えば名前で呼んでほしいな」


突然すぎて一瞬固まってしまい、声が聞こえてきた方に振り向いた時には黒崎の姿は見えなくなっていた。



「ねえ、青宮さ……青宮。黒崎はどこに行ったの?」


 さんを付けないでください、と青宮に目で訴えられたので、慌てて訂正する。

 名前呼びではないが、青宮は満足そうにニコッ、と笑ったので合格だろう。


「香菜ちゃんは部活に参加するために学校へ行きました。今週末に大きな大会の予選があるみたいですよ。香菜ちゃんってすっごい選手なんです。中学校の時も強豪校からいくつもオファーがあったって聞きます」


「へーそうなんだ……じゃなくて! 学校を案内してくれるって話は!? あっ、黒崎は俺に会いに来てくれただけで、案内してくれるのは青宮さんだけみたいな? それよりだいぶ立ち話してるけど、時間大丈夫なの? もうすぐ授業始まるんじゃ……」

「落ち着いて優真くん。スマホ持ってますよね? 今日の曜日を見てみてください」


 さっきまで落ち着いてなかった青宮に言われるのは癪だが、言われた通りにポケットに入れていたスマホを取り出す。


 記憶喪失の影響でパスワードがわからず、ただの大きな長方形の時計と化していたスマホだが、幸いここでは役に立つ。


 電源をオンにすると、7月17日土曜日と表示される。


「今日は土曜日だけど、それがどうかした?」

「そうです、今日は土曜日。つまり、学校は午前授業なんです」


 土曜日は午前授業。

 知らなかったが、なんだかとてもしっくりくる響きだ。


 今から学校に行っても放課後ということか。

 黒崎は午後から始まる部活に出るために離脱したということで説明が付く。


「それじゃあ、学校案内って話は何だったんだ……?」

「いきなり授業に参加よりは、学校全体を見て回って慣れることから、って先生は言ってました」

「なるほど、凄く理にかなっている……」


 そういえば、黒崎と青宮はわざわざ授業を受け終わってからここまで来てくれたのか。

 外見だけじゃなく、内面まで素晴らしいとなると、いよいよ完璧という表現がぴったりになってくる。

 

 本当にこの2人のどちらも俺の彼女だなんて、未だに信じることが出来ない。

 いったい記憶の空白の期間の俺はどんな人間だったのだろう。


 まあ考えても無駄なんだから、2人が説明してくれるのを待とう。

 登校中に青宮が話してくれるかもしれないし。


「じゃあ結局学校に行くってことでいいんだよね。急いで制服に着替えてくるわ」

「優真くん待って! さっき、香菜ちゃんと相談して決めたんだけどね……」


 待たせたら悪いと思って、メモに記された101の部屋に向かおうとしたところを、青宮に両手で押し止められる。


 相談というのは、2人でこしょこしょ話をしていたアレだろうか。

 ずいぶん楽しそうに話していたが、俺に関することであんなに笑っていたと思うと不安になってくる。

 

「話し合った結果、今日の学校案内は中止になりました!」

「ええーー……」

「そんな露骨に嫌な感じださないでくださいよ!」

「だって今日学校に行かなかったら、日曜を挟んで月曜からいきなり授業だろ? 先生が言ってた、慣れの時間ってのが無くなるじゃないか」

「確かにそうですが、それ以上に価値のある、素晴らしい1日を過ごす計画が私にはあるのです!」


 両手を腰に当てて、軽く胸を張る以上、相当青宮は自信があるらしい。

 

 というか、ただでさえキツキツだった校章が全方位にめいいっぱい伸びて悲鳴を上げているので何とかしてほしい。

 今の体勢は校章的にも、俺の目のやり場的にも困ってしまう。

 

「青宮、是非その素晴らしい計画とやらを聞かせてくれ。ついでに、そのえっへんポーズを辞めるんだ」


 後半の不可解な俺の要求に青宮は首を傾げたが、特に何の追及もせずに両手を腰の後ろで組む、ザ・女の子スタイルに変えてくれた。


 これで校章の命は救われた。

 

 俺の目のやり場はというと、元々美少女に目を合わせるなんてことが出来ないので、結局変わらず空気を見つめることになる。


「発表しますよー! 青宮楓プレゼンツ、優真くんの記憶を取り戻そう計画の内容は――」


 青宮がセルフでダラララララララララララ、とドラムロールを始める。


 この子、意外とノリがいいのかもしれない。


 ダラララララララララララ


 言葉遣いとか、仕草は育ちのいいお嬢様っぽいのに。


 ダラララララララララララ


 そういや、俺の記憶を取り戻そう計画ってなんだ?

 そんな計画初耳なんだけど。

 

 ダラララララララララララ


「いや、ドラムロール長くね!」


 ダラララララララララララ


 これ、俺がアレをやらなきゃ終わらないやつ?


 ダラララララ……ララララララ


 終わらないやつだわ。

 段々と青宮の息が続かなくなってるし、早く早くと目で訴えてるのが痛いほどわかる。


 よしわかった。

 欲しいのはこれだろ?

 これなんだろ?


「デデン!」 

 

 ドラムロールの締めとしてお決まりのアレを言う。

 

 予想通り、そろそろ限界っぽかった青宮の声が止まり、正解発表の時間が訪れた。







「今日は夜まで私と放課後デートです!」


第2話を最後まで読んでくださった皆様ありがとうございます!


作者の木本真夜は、三度の飯より感想が好きなので、どんなに些細なことでも書いて貰えると嬉しいです。


また、この作品を少しでも面白いと感じて下さった方は、是非ブクマ、評価をよろしくお願いします。

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