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第18話 最後の1枚

※最新話投稿につき、第12話エリーの内容を少し変更しました。

 確認よろしくお願いします。

 

「ただいまー……って誰もいないんだよなあ」

 

 わかってはいるけど、おかえりが返ってこないのは結構寂しい。

 1人暮らしに慣れるまで少し時間がかかりそうだ。


 手洗いうがいを済ませて、自分の部屋に行く。

 どうやら記憶喪失前の俺は、1LDKの洋室で基本的に生活していたらしい。

 勉強机やベッド、タンスなど生活に必要な家具が所狭しと並べられている。


「さてと……手紙探し始めますか」


 1人暮らしは独り言が多くなるらしいけど、本当かもしれない。

 気合を入れるためでもあったけど、無意識に誰も居ない空間に向かって喋っちゃってる。


「まあ、静かなのもあれだしな……よっしゃ、声出していこー!」

 

 目的は家の中からある手紙を探すこと。

 黒崎に教えてもらった、俺が小さい頃にエリーという名の女の子と結んだ約束に関係する重要な手がかり。


 アイスを食べ終え時には既に19時を回り、辺りは暗くなっていた。

 店を出る前に、ちゃっかり撮影スペースでポーズを決めた黒崎がとても可愛かったのは置いておこう。

 

 帰宅ラッシュに巻き込まれながら帰りの電車に乗っている間、俺はようやく黒崎から知りたかった情報を聞くことが出来た。

 まんまと騙され、アイスを食べている間に聞けなかった俺が公園で穴を掘ってた理由。


 黒崎曰く、俺は小学校を卒業するときに埋めたタイムカプセルを探していたらしい。

 やはり俺は何も覚えていなかったが、幸いなことに黒崎はその中身を知っていた。

 もちろん気になって、俺は何を埋めたのかを聞いたら。


「家に帰ってからピンク色の封筒に入った手紙を探してみて。私から聞くより、そっちの方がいいと思う」


 駅に着いて解散する手前、黒崎が意味深な言葉を残していった。

 そのまま、バイバイと手を振って別れたけど……


「結局、告白の日に黒崎が俺を説得したって内容聞けてねえ!」


 まあ学校でどうせ会うし、いつでも聞く機会はあるんだけど。

 後それだけ聞ければ、とりあえず俺が置かれている状況に整理が付く。

 

 今やるべきは手紙探し。

 なんで黒崎が俺の家に手紙あること、しかも封筒の色まで知っているのかは謎だけど、どうせどっかで聞いたとかそんな感じだろう。

 場所までは知らないのか教えてもらってないから、部屋の片っ端から探すことになる。


 書類入れは外れ。

 タンスは外れ。

 勉強机の引き出し……。


「花柄だ……ピンク色の封筒ってこれか?」


 手に取り中身を見ると、白色の便箋が1枚入っている。


「えーっと? たかなぎゆうまくんへ……すっごい汚い字だな。全部ひらがなだし読みづれえ……」

 

 確か、この手紙を書いたのはエリーという女の子だったはずだ。

 外国人で、日本語が不慣れだったのかもしれない。

 ぐちゃぐちゃで認識に時間がかかるが、読めないことは無い。

 ここは脳内で漢字に変換して読むのが良さそうだ。


 高凪優真君へ

 転校してきてイジメられていた私を助けてくれてありがとう。

 イジワルしてくる子を追い返してくれたり、隠されたものを見つけたり。

 エリーがイジメられない様に、ずっと一緒にいてくれてとても嬉しかった。

 ユーマのお陰で日本の事を好きになれました。

 私はアメリカに帰っちゃうけど、ユーマの事は絶対忘れません。

 ユーマも私の事を覚えていてくれると嬉しいです。


「2枚目は私とお別れした後に読んでください……って2枚目無いじゃん!」


 封筒は空っぽ。

 手紙が入っていたのと同じ引き出しを探しても、もう1枚は見当たらない。

 黒崎の話だと、手紙には俺とエリーが交わした約束の内容が書いてあるはず。

 1枚目に書いてなかったと言うことは、2枚目にその約束が書いてある可能性が高い。


「おっかしいな……他の場所に分けてしまってるとかか?」


 普通なら1つの封筒に入れるはずなんだけどなあ……。

 とりあえず家の中を隈なく探そう。



 ・

 ・

 ・



「無い……」


 洋室だけではなく、リビングを始めとして、お風呂やキッチンなど絶対に手紙なんて保管しない場所までもれなく探した。

 それでも1枚目の続きらしい手紙は出てこなかった。


「俺がアメリカから転校してきた女の子をイジメから救ったってねえ……覚えてないよなあ……」


 探し物の捜索、スランプ脱出への手助けに続き、正義のヒーローときた。


「ほんと、記憶喪失前の俺はどんだけ性格いいんだよ……」


 記憶を失う前のことを聞くと、本当に同一人物か疑いたくなる人物像が浮かび上がってくる。

 どれもこれも、今の俺には到底考えづらいことばかりだ。

 

「結局2枚目の手紙は見つからなかったけど、これを発見したのは大きいな……」


 押し入れから出てきた2つの大きな重量感のある本。

 小学校と、中学校の卒業アルバムだ。


 今まで言葉で過去を教えてもらっても明確なイメージが出来ず、事実として新たに記憶されるにとどまった。

 だけど、写真となると話は変わってくる。

 長方形の台紙に在りし日の一瞬を閉じ込めるそれは、俺の記憶が戻るきっかけになる可能性が大いにある。


「黒崎がエリーは小学6年生の1年間日本にいたって言ってたな。クラスページみたいなのに写ってるかもしれない……」


 目次のクラス名簿を上から順に目を通す。

 6年1組から4組まであるけど、ぱっと見カタカナ表記の名前は無い。


「エリーを見つける前に俺の名前を見つけちゃったよ……えーっと、4組の集合写真はここか」


 とりあえず小学6年生、まだ幼さが残る俺の写真を見る。

 

「今と顔はあまり変わってないなー。身長はやっぱり今と比べて大分小さい……って、ん?」


 みんな行儀よく背筋を伸ばして気を付けの格好をしているのに、俺だけ……手を繋いでる!?

 

「この手を繋いでる隣の女の子ってまさか……エリー!?」

 

 黒髪一色のクラスでとても目立つ、ウェーブのかかった明るい金色の髪。

 明らかに外国人なのに、顔立ちは何処か日本人っぽさがある。

 ぱっちり二重の大きな目、瞳は海の様に深い青色。


 満面の笑みで俺としっかりと手を繋いでいる女の子は約束を交わした相手、エリーで間違いない。

 はっきりとまだ思い出せないが、これだけは断言できる。

 

「エリーって名前は名簿に無かったはず……エリー、エリーってもしかして……」


 神代(かみしろ)恵莉花(えりか)


「思い出した……神代恵莉花。日本とアメリカのハーフで、エリーって呼ばれてた女の子! そうだ、思い出したぞ! エリーって、あの泣き虫エリーか!」


 確か、お父さんが日本人で、お母さんがアメリカ人。

 生まれの育ちもアメリカだけど、お父さんの仕事の都合で1年間だけ日本にいたんだ。

 日本語があまりうまくなくて、意思疎通が難しかったけ。

 そのせいで、クラスのいじめっ子の標的になってよく泣かされてた。


 覚えてる……確かにこれは俺の記憶だ。

 全部の記憶が戻ったわけじゃないけど、エリーとの記憶は大分思い出した。


 卒業式前にアメリカに帰ることになったエリーのためにお別れ会をしたことも思い出した。

 その時だ、俺がエリーから手紙を貰ったのはお別れ会だ。

 けど、その先は……くそっ、肝心な約束の内容は思い出せねえ……。


 それでも記憶の一部が戻ったのは大きな進展だ。

 1度失くした記憶が戻ってきた。

 思い出すことが出来るとわかったのが凄く大きい。


「この調子でアルバム全部見返すぞ……記憶が全部戻るのも夢じゃない!」


 

 

第18話を最後まで読んでくださった皆様ありがとうございます!


これにて黒崎香菜デート編は終わりです。

急な場面展開で戸惑ってしまった方は申し訳ありません。

この章は説明回が少し長くなってしまいましたが、香菜ちゃんの魅力が少しでも読者の皆様に伝わっていたら嬉しいです。


物語は優真の記憶の一部が戻るという大きな展開を迎えました。

明日投稿の第19話からどんどん物語が動いていくので、まだブクマしてないよって方はブクマをして最新話を待ってもらえると嬉しいです!

既にブクマして定期的に読んでくれている方は今後とも変わらずよろしくお願いします。


物語が一区切りしたタイミングで、是非感想、評価を貰えるととても嬉しいです!

少しでも面白かったと感じた方は、些細なことでも感想、そして後書きの下の評価ボタンからポイントをよろしくお願いします!

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