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#1 筆記編

「読めません。書き直してください」

「え〜」


鉛子は少年Aに書き直しを提案します。


「これなら、どう?」

「読めません。顔を洗って出直してください」


鉛子は少年Aに人生のやり直しを提案します。


鉛筆の申し子、鉛子。

スマートにしてエレガントな体型。無駄を一切排除したその姿勢に、憧れる者は少なくない。書けば書くほど、誰もが鉛子に魅了されていきます。


ただし鉛子は、人を選びます。

いくら告白されようが、字の汚い方の申し込みは遠慮させて頂いています。


更に鉛子は、非常にプライドが高いのです。

何故なら、その身を削りながら一字一句に命を吹き込み、言葉の世界を創造しているのです。そのため鉛子は、その世界を汚す者を許しません。常に上を志す者のみが、鉛子のパートナーとして認められるのです。


そんな鉛子にも悩みがあります。

それはまだ、これはと思う方と出会えていないことです。鉛子も、もう立派な大人です。お年頃です。それは、この世に生を受けた時からお年頃です。


腕に自信と度胸、それと少々の財力があれば鉛子のパートナー候補としてのチャンスが有るかもしれません。


さあ、どうしますか?



「綺麗に書けました!」

「貴方はこの世界を脅かす者。成敗致します。お覚悟を!」

「えー」


その後、少年Aの目の前に異世界への扉が開き、何処かに召喚されて行きました。これで一つ、この世界は守られたようです。成敗完了です。



「何ですか? それは絵ですか? それとも記号ですか?」

「ちゃんと書いてるじゃん」


少女Aは鉛子に反抗します。


「読めればいいの! 読めれば」

「勝手は許しませんよ。さあ、心を込めて書くのです」

「こころ? キャッハー、笑えるー」

「仕方のない方ですね。はあ」


鉛子は人に優しく、忍耐強いのです。時に寛容で、おおらかな心を持ち合わせています。つまり、()抱強いのです。


少女Aは好きなように書きなぐっていきます。

何を書いているのか、もしかしたら本人にも分からないかもしれません。


暫くして少女Aは『終わったー』と叫ぶと、鉛子を放り投げてしまいました。その時です。ポキッと芯が折れてしまいます。


「キャー」


鉛子は悲鳴を上げます。

そうです。鉛子の心も折れてしまったのです。


「何をなさるのですか!」


「えー、ちゃんとココロ? 入れたよー、てんこ盛りだよ〜。あたいのラブまでブッ込んだよ〜。もう、鼻血も出ねーよ」


「貴女は私にとって脅威です。排除致します。出でよ! 消し子!」


鉛子は消し子を召喚。その使命を伝達します。


「呼んだ〜」

「消し子! 少女Aの痕跡をこの世界から消し去るのです」



消しゴムの申し子、消し子。

そのグラマラスで柔軟な体を駆使し、この世のあらゆる汚れを消去する力を持つ能力者。彼女の綺麗好きは、あらゆる筆記男子から羨望と憧れの対象になっています。恋人候補ナンバーワンは伊達ではありません。彼女もまた、お年頃です。貴方にもチャンスはあるかも、です。


「いいの〜」

「おやりなさい。ターン・エンド」


「じゃあ、いっくよー」


消し子は彼女の能力、オール・デリートで少女Aの書きなぐった”もの”を消していきます。


「おおおおおおおおおおおおおおお、おがあちゃん!」


少女Aは泣き狂います。

しかし、もう遅いのです。消えた”もの”は、この世界には存在しません。


”ひらがなのようなもの”、消去。多い〜

”カタカナのようなもの”、消去。多い〜

”漢字のようなもの”、消去。少な〜


「消去完了!」


少女Aの手元には句読点だけが残りました。


「せめてもの情け。精進されたし」


「おがあちゃん! 鉛子がいじめるー」


少女Aは泣きながら去って行きました。

これで一つ、この世界は守られたようです。



「オーホホホ」

「その声は!」


「ま〜だ、そのような、書いては消し〜の書いては、などと愚かな行為を続けてらっしゃるのですか〜」


「万年筆子!」


さあ、続きは『友達編』でお会い致しましょう。

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