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エルフの森 2

「おい、大輝どうしたんだよ? 顔色が悪いぞ?」


親友の真司に話しかけられていたっようだが、少しの間意識が朦朧としていて聞いていなかった。

そういえば、今日は真司と一緒にファストフード店に勉強しにきているんだった。


「ああ、悪い。ちょっと考え事してた」


記憶がぼんやりしているので、大輝は曖昧に返事した。


真司は「うーん」と少しばかり考えたが、暫くすると「まあいっか」と勝手に自分で納得して、次の話を切り出した。


「なんか、最近俺の周りに可愛い子が多くないか?」


「そうか?」


「今までは皆んなのアイドルなずなちゃん、通称なずっしーが押しだったんだけどな。つい先日、親に俺の部屋のポスターが破られてしまってな…………。あれは残酷だった」


「勝手にポスター破られるのは確かにドンマイだ。だけど、なお前の母親はアイドルにのめりこむお前に現実に戻ってきてほしかったんだろうよ」


実際、アイドルのDVDを見ながら「なずっしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 結婚してくれぇぇ!」とテレビ画面に叫ぶ姿は見るに耐えないものだった。


「いや、それがさ。あの親俺のポスターを発見した途端、目付きが変わってさ。「私の大ちゃんをたぶらかしてるのはこのむすめかな?」、ていってきたんだぜ」


「確かにそれは可哀想だけど親にそういうの捨てられるのはあるあるだからな。今回はあまり常識からずれてないんじゃないか?」


これを常識とする大輝も相当な物であるが結城家はそれだけじゃ止まらない。


「さらに俺が本棚の裏に隠してた写真集やDVDなんかも見つかってさ…………全部燃やされたよ」


「まじか⁉︎ それは同情するわ」


「そして、最後には写真集と同じポーズをしたり、DVDと同じような言動をしてくるようになりましたとさ。終わり」


「怖っ! それもう半分ホラー入ってんだろ!」


大輝はこれからはもうちょっと真司に優しくしてあげようと思った。ちょっとだけだが……。


「それから、急に周りの女子が可愛く見えてきてさ。俺、今とっても幸せ♡」


「良い精神病院を紹介してやるよ」


結構、本気で思う大輝。


「まあ、大輝には一条さんがいるからいいよなー」


「一条、なんで? あいつはただの友達だぜ」


「あれでただの友達とか本当にお前は鈍感だな」


「ん、そうか。俺は普通の友達だと思うけど……」


そうは言うが一条の恋心に気づいてないのは大輝だけだったりする。本当に大輝は鈍感なのである。


「まあ、まだまだ高校生活は長いんだしこれから考えていけばいっか……」


その言葉とともに大輝の意識は途切れていった。

















ーーーー









「おかあ……ん! このひとい……なった……起きるの?」


(何かが聞こえる……)


大輝の意識は隣で話している人たちの声で呼び覚まされた。


大輝は体の埋もれていく柔らかい感触からベッドに寝かされているということはわかった。

しかし、意識は戻ったが、あまり力が入らず瞼を開けることすら重鎮が乗ったように重く感じる。

それでも、現状を確認したいという思いの方が強かったので恐る恐る瞼を開ける。


すると、目の前のイスに座った女の子がこちらを覗き込んでいた。それもとても可愛らしい女の子。

身長からして10歳くらいだろうか。全体的に幼い印象に見える。髪はショートで日本ではあまり見ない金髪。つぶらな瞳とこちらを心配そうに伺うような様子には年相応の幼さと、純真で綺麗な心を持っているように見えた。


目の前の女の子は大輝が起きたことに気づくと、予め言われていたのか、「お母さーん、男の人おきたよー」と自分の母親を呼びに行った。


(すごい可愛らしい女の子だったな。将来はものすごい美人になりそうだ)


大輝は女の子に見とれてしまったいた。しかし、何か大切なことを忘れているようで……


「あれ、俺さっきまで確かーーー」


考え始めると共にさっきまでぼやけていた記憶のモヤモヤが解けていくような感覚がする。それに伴い、忘れていたことを思い出して行った。


「そうだ! 俺は変なクワガタに追われていて。あいつはどこだ!? まだ近くにいるかもしれない!」


思い出した記憶に大輝で大輝は落ち着きを欠いていく。


「そもそもここもどこなんだ? アイツらがまだ近くにいるんだったら襲われるに決まってる! 早く逃げないと!」


「大丈夫ですよ。この近くに少なくともクワガタはいませんよ」


そんな荒ぶった大輝に金髪の綺麗な女性が優しく声をかけた。顔が似ているから、女の子の母親だとっ予測する。


「ここら辺は安全なので落ち着いてください。温かいお茶を作ってきたのでどうぞ」


「あのねー! セルラレムで取れるお茶っ葉はね、とっても美味しいんだよ! その中でも特にお母さんが作るお茶はとっても美味しいの!」


女の子もお茶の美味しさを自慢したいのか元気に話しかけてくる。


その2人の賑やかさに和まされて、大輝も次第に落ち着いていく。


「取り乱してすみません。自己紹介がまだでした。俺は大輝って言います。日本の東京って言うところ出身何ですけど」


もちろんセルラレムの人が異世界の地名について知っているはずもなく、2人揃って「日本ってどこだ?」と首を傾げていた。


「ってそれは分からないか……。まあとにかくここから凄く遠いところ出身です。そこから訳あってここまで来ることになったんです」


大輝が自分で異世界出身だと言わなかったのには理由がある。

それは異世界出身ということで狙われる可能性があるからである。


大輝はこの世界を救うという名目でこのセルラレムと呼ばれる場所に来た。しかし、世界を救うと言うことは反対に壊れる原因もあるということで、それがこの2人じゃないとは限らない。


よって、大輝はこの2人を疑い切れていないが、念には念を入れて大輝は自分の素性を隠したのである。


「へー、そんな遠いところがあるのね。あ、私の名前はカルナ・マクシムと言います。そして、この娘は……」


「アリサ・マクシムだよ! よろしくね、お兄ちゃん!」


「見ての通りお天パな娘ですが、仲良くしてやってください」


「い、いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」


大輝は年下の美幼女にお兄ちゃんと呼ばれたことに照れながらもなんとか絞り出していった。


大輝は自分を助けてくれた2人に最大限の敬意を持って接する。


「それで、ここはなんという場所なんですか?」


「さっきも言ったと思うけどここはセルラレムって言うの。人数は50人くらいの小さな村だけど、その分皆優しくしてくれると思うからすぐ馴染めると思うわよ」


「こんなところが近くにあったんだ。俺はどうやら森の中に入ってしまったみたいで凄くでかい……2メートルくらいはあるクワガタに追いかけられたんですよ」


「森!? ということはまさか、『霊祭の樹林』に入ったの!?」


カルナは説明する時に言った森という言葉に異常に反応していた。『霊祭の樹林』という名前から感じる雰囲気からして、どうやら大輝が入った森はただの森ではなかったらしい。


「多分、そう呼ばれているところだと思います。周りの木は15メートルを越すような大樹ばかりで先が見えない盛りでした」


大輝のその言葉に再び驚いたのかカルナは頭を抱える仕草をした。


「よくあの森から無傷で帰って来れたわね。あそこは本当に危険なの。まず沢山の木が広範囲に生えていて、地元の私たちでも迷う確率が高い。それに加えてあそこには強力な魔物が住んでいるわ。ラッドボーンやギガザクロ、ライブバードなどね。多分、貴方があったのはギガザクロよ」


「道理で強い訳だ。名前から強さがビンビン伝わってきますよ」


カルナは肯定するように首を縦に降った。


「その通り、私達でもあの森に入ったら一溜りもない。だから、私たち村民でも滅多にあそこには近づかないわ」


「そんなところにはいっていたのか……よく無事だったな、俺」


「本当にね。私が料理をしていたら、急にアリサが呼んで来て何事かと思って見て見たら人が川から流れてくるんですもの。とてもびっくりしたわ」


「お兄ちゃんがね、川の上の方からザーッって流れてきたの! それにお兄ちゃん口から泡出してたからまずいって思って急いでお母さん呼びに行ったんだー」


「本当に危ないところでしたよ。あと一歩人工呼吸が遅かったら助かっていたかどうか」


「なに⁉︎ 人工呼吸だと⁉︎ ということはまさか……」


大輝は美人な人妻に人工呼吸をしてもらったかもしれないと思いニヤニヤし始めた。


「まあ、人工呼吸をしたのは村長なんですけどね」


「⁉︎ いやでもワンチャン、美しい女性の方が村長という可能性も……」


「村長はね、すごーく老けたおじいさんなんだよ」


「そっか……そうだよな…………分かってたよ…………」


大輝はここに来てから二番目くらいのショックを受けていた。といってもここに来てまだ1日と過ごしていないが。

ちなみに一番のショックはクワガタ、もといギガザクロに出会った事である。



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