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エルフの森 1

 ーーーー



(ここは……どこだ?)


 大輝はようやく目を覚ました。

 時計を見るとまださっきから全然時間が立っていないはずなのに、外は暗かった。

 そして、目を覚ました先は俺が見たこともないようなところでもあった。


 辺りには木々が生えていて下は草だらけ。

 木の高さは大輝の身長の二倍すら優に超えていていている。

 木が密集し過ぎて遠くが何も見えてこない。

 これらのことから、森林の奥深くだろうと大輝は予測する。


(こんなところじゃ何も出来ないな。まあ、俺にできることなんて最初からあまりないけど……)


 大輝は不安からか自分のことについて深く考える。


(世界を救えなんて言われたけど、俺にはほとんど何も出来ない。喧嘩だってろくに強くないし頼れる頭脳がある訳でもないない。俺に出来ることなんて本当にちっぽけなものだ)


(まあ、こうやってうじうじ考えてたって何かが進む訳でも無い。とりあえず周りを散策してみるか)


 大輝は辺り一面を散策していく。


 しかし、あれからここら一帯を散策して見たものの一向にこれといった結果は見つからなかった。


(それどころが……本当に何にもねぇ……)


 どこもかしこも探したがあるのは木、木、木、木、木


(そりゃ、森の中だからこうなるのは当然と言えばそれまでなのだが。なんだかもう少し、こう、すぐそこに住人がたくさん住んでいる古典的な街があったぞ! や森の中に知らない美少女が襲われてるぞ! と言った展開などがあってもいいんじゃないか)


 大輝は求めていた異世界転生とは違うようで落胆する。


(これじゃさっきまでいたあの何もない白い空間とそんなに変わりやしない)


(そろそろ腹も空いてきたんだが、この辺りにあるのはよく見たことのない木の実や果実だけ。こんなよくわからないものを食べたらお腹を壊すだろうし……)


(まあ、なによりいきなりしらないものを食べる勇気なんて俺には無いけど……)


 それと同時に寝る場所を探さないと言えない。今晩はもう眠いって言うのに、安全に寝られそうな場所がないのだから。


 こういう時には洞窟なんかに寝れたら一番なんだろうが、本当に木しかないのだ。少なくとも半径1キロ以内には。


(最悪このまま寝なくてはならないだろうが、幸いなことに周りに危険な虫なんかもいなかった……し、とり……あえず、このま……………………)


 今日の疲れもあってか眠気が押し寄せ、思考している最中にも大輝の意識は途絶えてしまった。













 ーーーー



 ギィィィィィィイイイ


(ん? なんの音だ?)


 奇妙な甲高い音で大輝は目をさます。。それはどうやらすぐ近くで鳴いてるらしくとても耳に響いてくる。それと同時にバキバキという何かの音も聞こえて睡眠に悪い。


(全くまだ夜だってのにうるさいな……)


 大輝は寝起きということもあり頭がボケていたんだろう。


 近くで聞こえるバキバキという音の違和感にきずかなかったのだから。


 大輝は辺りを見渡す。そこでようやくある異変に気付く。


(あれ? 周りにあった木がほとんどなくなってる!)


 それに気付くと同時に再び鳴き声も聞こえてくる。



 ギィィィィィィッィィィ



(近くに猿でもいるのかな?)


 反射的に顔を出した瞬間、大輝は見た。


 体の大きさは全長4メートルくらい。


 下には昆虫のような細い足が6本。


 体には沢山の太い棘が生えていて、紫色のドロドロとした液が溢れ出でいる。


 頭にはクワガタのそれを何倍にも大きくしたようなノコギリがあり開いたり閉じたりギチギチしている。


 そしてノコギリの開いた先には……何本もの短い触手が生えた口があった。


(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!)


 それを見た瞬間、大輝は走り出していた。あたりに生えているきときの隙間を上手にくぐり抜けて逃げる。



 ギィィィッギャァァァァァアアアア



 しかし、どうやら向こうも大輝を見つけたらしく、甲高い声をあげる。そして、



 バキッバキバキバキ



 そいつは頭についてるノコギリで木をバッタバッタなぎ倒しながら進んでくる。にも関わらず全力で走っている大輝にも負けないどころが、それよりも早いくらいのスピードで追ってくる。


(逃げないと逃げないと逃げないと逃げないと)


 全力で走っているが体格の差からなのか、追われている側という立場からはわからないが、大輝はもう疲れているが、向こうはまだまだ元気に泣きながら走ってくる。


(このままじゃ追いつかれる……⁉︎ くそ、何とかしないと! ただ闇雲に走っているだけじゃダメだ。もっと木が沢山生えているところに行けばあいつは時間がかかるはず!)


 大輝は森のもっと木が沢山生えている方へと走り出す。向こうも大輝を追おうとしているが木がうまく挟まって動けていない。


(これで撒けるか⁉︎)


 そう思った時、そのクワガタらしきものは体に生えていた棘を射出する。棘はそいつの周りに刺さっていくと、棘の先から液体が出てきて、10メートルもある木がいとも簡単に溶かしていく。


(何だよあれは⁉︎ 最近の異世界小説ものでもあんなキモいモンスターは出てこないぞ! うげぇ、それにまたあの棘また生えてくんのかよ……)


 棘が無くなった場所からはドポドポドポという鈍い音とともに新しいものが生えてくる。それの気味悪さに泣き言を言っていた大輝だったが、やがてまた走り出す。

 しかし、今度は逃さないとばかりにそいつは自分の棘を飛ばしてきた。


「危ねぇ! 少し掠った!」



 間一髪のとろで棘を避けるが服には液体がこびりついていた。すると、その液体はきているワイシャツすら溶かしていき……


「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 遂には大輝の腹の部分の皮膚を溶かしていく。しかし、それだけでは飽き足らず、液体は肉までもとかさんとばかりに浸食していく。


 大輝は急いで服で拭こうとするが拭ったそばからとけていくので、一向に効果がない。


「ぐっ!」


 痛みで思わず声が出てしまう。


  (痛え!どうすれば消える……んだ! そうだ、水。あたりのどこかで川の流れるような音はするんだ。近くにあるはず!)


 辺りを見渡すが一向に見当たらない。それに加えてもうすぐそこまでそいつが迫っていた。


(時間がない。早く見つけないと! ぐっ、痛いけど集中するんだ。川はきっとこの近くにあるはずなんだ。)


 大輝は周囲の音を聞く。しかし、木をなぎ倒す雑音とすぐそこまでそいつが迫っているという焦燥感で上手く集中できない。


(もっとだ! もっと集中するんだ。周りの雑音なんていらない。すぐそこに迫っているあいつのことも一旦消す。そしてもっと深く入り込め!)


 大輝は思考の海に飛び込む。そしてただひたすら、


  潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る潜る


















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 潜り込んだ先でたったひとつの音の場所を探し当てる。

 しかし、見つけた場所は一か八かのところ。今の大輝にはあまりにも残酷だ。


(音の位置からして川はこの先にある崖の下、落ちたら助かるかどうかわからない。どうすれば……⁉︎)


 そのとき、集中が切れた大輝に再び痛みが襲ってくる。先ほどよりも深く抉られてきたである腹の痛みが大輝の選択を早まらせる。


(結局、ここで走り続けたところでおれは長くは持たない……なら! 逃げ切ってやろうじゃないか。あいつも崖の下までは追ってこないだろうし、飛び込んだら俺の勝ちだ!)


 大輝は選択と共に走り出す。大輝の現在の唯一の希望に向かって。

 後ろからバキッバキバキバキという木がなぎ倒される音が聞こえるが関係ない。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 大輝の体が宙に舞う。そして大輝は希望を胸に重力に引っ張られるままおちていく。


 うおおおおおおおおおおおおお!













 バシャアァァァァァン


 歯切れのいい音と共に大輝は水の底へと沈んでいく。


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