異世界転移 1
初作品です。拙い文章ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
いつものように入った教室。
座る椅子はいつもと同じで見渡す風景すら変わらない。
賑やかで少しうるさいところもあった。だけど、そんなところすらもいつの日か、俺は好きになっていたんだ。そんな中大切な物ほど無くした時に気づくなんて事を今更俺は知った。
ーー魔法陣から出た眩い光によって俺の日常は崩れ落ちたーー
(あれ? ここはどこだ? さっきまで教室にいたはずなのに)
周りはいつのまにか白い壁と天井、床で埋め尽くされていた。ただ、大輝は自分の足元の感触に違和感を感じていた。
(なんだこれ? この床、柔らかいな)
大輝はよく床に目を凝らした。どうやら白い床だと思っていた物は一面に咲いた花らしい。
(これは何の花なんだろう?)
大輝は気になって花を一本抜いてみる。すると、手に取った花は砂のようにサラサラと崩れ落ちていく。
大輝はしばらく不思議な花を観察していたが、別段花に詳しいわけじゃないからよく分からない。
これ以上調べてもどうしようもないので、気を取り直して一面を見渡して見るがやはり何もない。白い壁も何でできているのか気になって叩いたが帰ってきたのは「ゴンッ」という硬い音だけだ。
(なんでこんな場所にいるんだっけ)
不意にいつもの癖で時計を見てみたが「8時44分」でさっきから全然時間が経っていない。スマホの時計でも確かめて見るがやはり同じ時刻だった。
(俺は一体どうしたんだ……)
大輝はずっと同じ白いものばかりを見ているので気が狂いそうだった。
(早くここから出たいな。ゲームとかだと壁や天井なんかにスイッチがあるんだよな)
所構わず様々な場所を触っていくが何も起こらない。
(そうだ! もしかしたら近くに人がいるかもしれない)
「誰かいませんかー?」
大きな声で叫んで見るが、何も聞こえてこない。
しばらく他にもいろいろ試して見たが、何も起こらなかった。ずっと同じものばかり見ているとおかしくなりそうなので寝ることにした。
ーーーー
「おはよう、大輝!」
教室に入ると俺の親友、結城慎司が声をかけてきた。
この親友は朝からハイテンションで元気らしい。
挨拶をされた少年、相坂大輝は朝が苦手なので控え気味に返事を返した。
「おはよう、慎司」
「おう。なあ、聞いてくれよ。今日は朝から朝食に納豆と卵とソーセージが出てきたんだぜ」
「普通の家庭じゃねえか」
「違うんだ! それにプラスして俺の母さんが『これと元気が付くように私も食べて♡』って言ってきたんだ。最悪だぜ」
「いつも通りじゃないか」
大輝の薄いリアクションに真司は納得できないのかオーバーに頭を抱えた。
「どこがいつも通りだ! 普通の家庭ではこんな気持
ち悪い母親はいないぞ!」
「愛されてるー、ヒューヒュー」
これにもまた大輝は適当に返事を返す。
慎司の母親はとても息子のことが好きでとても可愛いがっている。
いつも息子に自分の事を襲って宣言してはベットに忍びこんだりご飯に媚薬が盛り込まれていたりと。
しかし、そんな日常も小学生から高校生までの付き合いの大輝には慎司の家庭事情も日常化していた。
(ん? これが当たり前ってやばくね)
大輝は自分の両親は普通で良かったと心から安堵した。
母親はお喋りが好きでいつも元気。父親は無口だがその裏で大輝にとても優しい。大輝はそんな2人が俺の親というのはとても幸せだと感じていた。
(慎司の父のように毎晩、泣きながら息子に嫉妬するようなやつじゃなくて良かった)
なにわともあれ、大輝と慎司が親友という点は変わらないのだが……
しばらく大輝と慎司が話しているとほかの男子たちも集まってきて賑やかになってきた。
「大輝、何してんのー?」
「慎司、聞いてくれよ。昨日ソシャゲのガチャでアヌビスが当たったんだ」
「まったく、本当に大輝と慎司は仲良いな。羨ましいぐらい」
「この前なんて2人でお弁当の中身を交換し合ってたもんな」
「しかも、食べかけのおかずだぜ」
「もしかして2人ってもう出来てたりしてな」
友達の1人の発言でクラスに笑いが起きる。俺もおかしくてつい笑ってしまう。もっともっと話したくてたくさん喋っていく。
「話変わるけど、今日の授業はーーーー」
瞬間、視界が捻れる錯覚を覚える。今まで見えていた
壁や机、イスなどがガラスが割れるように粉々になっていく。それは世界が崩れ落ちていくようで。
あれ? 俺は何をしていたんだっけ?
ーーーー
ここは……? そうかあの白い場所か。俺は夢を見ていたのか。まだ、いつもの日常に戻れるんじゃないかと期待している自分がどこかにいるのかもしれない。
腕時計で時刻を確かめて見るが、10時20分まだ全然時間はたっていなかった。
(どうすりゃいいんだよ)
さっきスマホが繋がっていないのは確認していたが、暇なのでオフラインでもできるゲームでもやるかとスマホを取り出すと……
そいつは突然現れた
言うなれば黒い靄だった。確かに人間の形はしているがその上に無理矢理、黒い靄で隠しているような。白い空間に対照的なその黒さは見ているだけで何故か見が惹き付けられる。
(ダメだ、ずっと見ていると引き寄せられる!)
大輝はそいつを見ていたいという能動的な自分に理想的な自分で抑え込む。
そんな大輝を見かねたのか、そいつは男でも女でもない、ノイズ混じりの声で言った。
「やあ、初めまして大輝くん」
「あ、は、初めまして。そのー、あなたはどなたでしょうか」
「僕の名前はゼン、まあ所謂神様みたいなものかな」
神様なんてものが本当にいることにびっくりする。しかし、そんなことよりもわからないことの方が多いので、ありのままの疑問をぶつけてみる。
「それでそのここは一体どこなんでしょうか?」
大輝は開口一番に自分の気になったことを聞いた。そいつは少しの時間も開けずに言ってきた。
「大丈夫、ここは天国でも地獄でもないよ。君たちの世界と別の世界の時空の狭間だと考えてもらって構わない」
「そうなんですか。それで今、俺はどうゆう状態なんですか?」
「僕が日本で過ごしている君をここに召喚したんだ。安心していい、死んだわけじゃないから……。では、早速本題だ。君には今から違う世界……いわゆる異世界に行ってもらう」
「それって最近日本で有名な?」
「そうだ。そこに行って君には世界を救ってもらいたい」
(世界を救う…………そんなアニメや漫画の主人公みたいなことを普通の高校生である俺に出来るのだろうか)
燃え上がる期待と共に一筋の不安も頭をよぎる。
「俺に出来るんでしょうか」
「分からない、がきっとやってくれるだろう。そうでなくては困る。僕が君を選んだんだから」
「どうして俺を選んだんですか?」
どうして世界に70億といる人間の中からたった一人の俺を選んだんだろう。他にもっとすごいやつがいるはずなのに……。
「それはね………………適当だ。たまたま君だっただけだよ」
(へ? どうゆうことだ?)
まさかとは思ったが大輝はその可能性を口にせずにはいられなかった。
「俺はあなたに適当に選ばれたんですか?」
「まあそう言えばそうだが、こっちでも選べなかったんだ。そこら辺は色々事情があってね。済まないが納得してくれ」
「まあ取りあえずは分かりました。それで俺にはなにかチートが授けられるんですか?」
異世界召喚といえばチートが有名だ。
あるものは【ステータス】というものを開き自己を強化する。また、あるものは自分だけの最強の【固有スキル】を持って異世界を無双する。
(それくらいのものがないと俺なんかにはできないだろうしな)
「それも分からないんだ」
返って来た言葉は大輝にとって残酷なものだった……
「まず、向こうの世界には魔法というものがーーーーすまないもう時間みたいだ。あとのことは自分で確かめてくれ」
「俺、まだ聞いてないことがたくさんあるんですけど! どうすれば世界を救えるんですか⁉︎」
「それも言えないよ。君の思うがままに行動してくれ」
白い空間がまるで水に溶けているかのごとく消えていく。消えた先には丸い地球のようなものがたくさんあった。それはひとつの宇宙のようでとても綺麗だった。
それをバックにたった一言小さく、消え入りそうな声で確かにそいつは言った。
「世界を救ってくれ、未来の英雄」