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過去と未来

 二月、今年度三回目の、今の面子で最後の五校会議である。会場は西工。

「初回にもまして敷居が高いなあ」

 とぼやく矩総。

「なんで?」

 と首を傾げる副会長の総志。初回は北女で、女性ばかりのところへ乗り込むのは確かにやりにくかっただろうが、

「西工と言えば、その昔父さんが単身乗り込んだところだろ」

 と答える矩総。

「心配なら、現役の獅子王を護衛に付けようか?」

 とからかわれる。

「それはそれで面倒なことになりそうだ」

 ともあれ足取り重く西工正門まで来ると、

「あら偶然ですね」

 と声を掛けてきたのは北女の会長久世希理華。西工までの距離的には南高よりも北女の方が若干近いのだが、裏で矩総の出立時間を知らされて時間調整しながらかち合うように計算してきたのである。

「やあ久世会長、ちょうどいい所へ」

 とにっこり笑う矩総。

 二人並んで門をくぐると、門から玄関までの道筋の左右にずらりと西工の生徒が並んでお出迎えしている。

「これは入りにくいですね」

 と希理華も苦笑する。

 すると列の中から一人が進み出て、

「お待ちしていました。瀬尾会長、久世会長」

 西工の文化祭で面識を持った副会長の樋田陣八である。

「この出迎えは全員にやっているの?」

 と矩総。

「ええ」

「女性の生徒会長にはちょっと威圧的すぎないかしら」

「済みません。普段女っ気がないので、女性に対する応対がいささか大仰になってしまって」

 かと言って今更解散を命じることもできない。

「他の会長は来ているの?」

「中央の白雪会長は既に。残りは東商の松方会長だけです」

 と言っている間にその当人が現れた。

「ようこそ西工へ」

 と左右から重低音が響く。

「どうもぉ」

 松方女史は飄々と受け流しながら、

「瀬尾会長、久世会長。お久です」

 と手を振って駆け寄ってきた。

「一緒に来られたんですか?」

「たまたま門のところで一緒になったんですよ」

 と弁解めいた発言をする二人。

「そうですか。ここを一人で抜けるのはかなりの度胸が必要ですものね」

「白雪さんは既に通過したらしいですよ」

「へえ」

 などと言いながら進む。

 一方の西工生徒会室。先着した白雪会長は幹事の桐原会長に対して、

「桐原会長は南高の瀬尾会長とは以前から親しいんですか?」

「親同士が知り合いなだけで」

 と受け流す丈美に、

「かつての敵同士の子供ですか。なんかロマンチックですね」

「まあ当時はうちと南高とでいざこざがあったらしいけど、別にうちの父と瀬尾の小父様が直接やりあった訳でもないし」

 と笑いとばす。

「でも私は桐原さんが一番の強敵だと思っているんだけど」

 と真顔の白雪さん。

「何の?」

 と言いかけて、

「そっち方面なら、最大の敵は久世さんだと思うけどね」

「確かに希理華さんはお奇麗だと思うけど」

 と首を捻り、

「文化祭で二人と一緒に回ったときは、全く会話が無くてよそよそしい感じでしたよ」

「それはむしろばりばり意識しあっていた所為じゃないかしら」

 傍目には、矩総は希理華に対してだけ態度が違って見えるのだが。

「もしかして、もう付き合っているとか?」

「それは無いと思うけど」

 と言っているタイミングで三人が到着した。

「あら皆さんお揃いで」

 と丈美。

「ちょうど門のところで行き会ったんです」

 と矩総が代表して答える。

「では始めましょうか」

 議長の丈美を中心にして、左手に白雪と矩総。右手に松方と希理華が座った。

「私と白雪会長はもう一回ありますけど、残りのお三方はこれが最後の五校会議ですね。お疲れさまでした」

 三人が順に挨拶をする。

「男性が一人と言うことでなかなかにスリリングな半年余りでした」

 と矩総。

「文化祭では相互交流がこれまでになく活発で楽しかったです」

 と松方。

「私は昨年度の副会長から生徒会活動に関わってきたので、ようやく肩の荷が下りると言う感じる一方で、少し寂しい気もしますね」

 と希理華。

 堅苦し話は終わり、

「今月は二月ですね。少し早いけど」

 と丈美が差し出したのはバレンタインのチョコ。それに呼応して他の三人も一斉に取り出した。

「困ったな」

 と頭を掻きながら、

「これはお返しに」

 と手作りのクッキーを出した。

「まさか瀬尾会長のお手製、じゃあ無いですよね」

 と丈美。

「うちの父が用意してくれたものですが」

「そうですか。折角だからみんなで頂きましょう」

 と言ってお茶を用意する丈美。

 矩総はもらったチョコの詰め合わせをそれぞれ少しずつ食べて、残りは供出。矩総の持ってきたクッキーも五人全員でシェアして、完全なお茶会モードになった。

「ところで瀬尾会長」

 と丈美。

「この中で付き合うなら誰が良い?」

 とぶち上げた。

「それは僕に選択権があると言う前提なんですか?」

 と受け流す矩総。

「そうね。四人から同時に告白されて一人を選んでと言われたら?」

 と条件を限定してくる。

「それって、一人だけを選ばないと駄目ですか?」

 と矩総が言うと、丈美は唖然とし、白雪さんは憤然とした。松方は手を叩いて大うけしたが、希理華は独り無反応だった。

「全員と付き合うんですか?」

 と気色ばむ白雪に、

「男一人に女四人ってそもそもバランスが悪いし」

 とフォローに回る松方さん。

「第一に」

 と人差し指を立てて、

「選ばれなかった三人は納得して引いてくれるんでしょうか」

「そうよねえ。選ばれた子は、選ばれなかった三人から疎遠にされるでしょうしね」

 と松方さん。

「第二に」

 と中指を加えて、

「好きと言う感情を定量化はしにくいでしょうけど」

 と前置きしつつ、

「付き合いでなんとなく参加した子がいて、うっかりその子を選んじゃったりしたら大変ですよね」

「それもありそうね。オーディションに付き合いで参加したら、その子だけ受かっちゃったみたいな」

 と乗ってくる松方さん。

「第三に、これが一番重要なんだけど。四人以外に本命がいた場合はどうすればいいんでしょうかね」

「その場合は、全員揃って振られるから、結果的には平和に収まるかもね」

 と笑っている松方さん。

「でも、即答しないのは賢明だわ。私彼氏がいるから、選ばれても困っちゃうし」

「そうなの?」

 と丈美。

「丈美ちゃんのところなんか、うちと違って男子生徒がいっぱいいるから、無理に他校に手を出さなくても良いでしょ」

「私は本気ですけど」

 と白雪さん。

「じゃあ私と丈美ちゃんは除いて、白雪さんと久世さんのどっちを選ぶ?」

 と完全に楽しんでいる松方さん。

「久世さんは、降りないんですね」

 と戦闘モードの白雪さんに、

「残酷な話ですね」

 と、どこか他人事のような希理華。

「二択を迫れば選ばれなかった方は傷つく。だけど選ぶ方も決して楽しい体験ではないのに、愛する人にそんな苦しみを強いるなんて」

「だから二股を認めると?」

 と険しい表情を浮かべる白雪だが、

「あら。男一人に女二人なら、適法でしょ」

 と松方。

「誰の所為かしらね」

 矩総の父瀬尾総一郎によって制定された多重婚姻法の賜物だ。

「当事者が合意しないと犯罪だけどな」

 これをセットで姦通罪も復活している。以前とは違い、男女どちらにも適用される男女同権の法律である。

「本当にそんな法律が機能しているのかしら?」

 と懐疑的な白雪に、

「僕の母はその手の問題を専門的に扱っていますからね」

 と矩総。

「比率で言えば、男二人に女一人と言う組み合わせの方が多いらしいですよ」

「やっぱり理解できないわ」

「価値観の相違は致し方ないですね」


 帰宅して話を聞いた兄の総志は、

「それはどこかで聞いたような話だな」

 と笑った。

「どういう事?」

 と首をかしげる矩総に、

「その昔、父さんがハーレム宣言をしたときに、真っ先に参加表明したのが希代乃さんで、ハーレムそのものに大反対したのが木島波流歌さん。日野君のお母さんだって言う話だ」

「それって、沙弥加さんのお母さんは娘と兄さんとの交際に反対する理由になるんじゃないの?」

「どうだろうか。日野君のお母さんは、父さんが好きだったけど、誰かと分かち合うことには反対と言うスタンスだから」

「なるほど。兄さんに沙弥加さん以外と付き合う気がないなら問題ないのか」

 と納得している矩総。

「俺の事よりもお前の方はどうなんだよ?」

 父と子の事例を比較すると、白雪さんが木島波流歌に、希理華が希代乃に対応するわけだが、

「別に久世さんから告白をされた訳でもないし」

「でも彼女だけは降りなかったんだろ。それは脈ありと見て良いんじゃないか?」

「どうなんだろう?」

「父さんに意見を聞いてみようか?」

 と総志が言うが、

「今日は外だよ」

 総一郎が月に一回だけ外に泊まる日。泊まる場所と言えば滝川千里のところだ。

「じゃあ同じ立場だった人に意見を聞いてみようじゃないか」

 と言って内線で四号室を呼び出す。

「やあ希総。希代乃さんはまだだよな」

「なに総志兄さん。母さんに何か話でも?」

「ちょっと昔の話を聞きたかったんだけど」

「いつも通りなら八時には帰ってくるよ。念のためメールで確認しておくけど」

 しばらくして、

「大丈夫そうだよ。夕食がまだならこっちで一緒に摂ろうよ」

 二人の夕食は妹の華理那が作るのだけど、

「今日はお母さんも遅いから、希総兄さんが作ってれるなら助かるわ」

 既に炊いてあった米をお櫃に移し、三人分の材料と食器とともに一号室に常備されている配膳カートに乗せて廊下を移動する。子供たちが生まれる前は一号室で総一郎が作った朝食を運ぶのに使われたが、今は料理も各部屋で分担して作られるため今は出番が少ない。

「いらっしゃい」

 希総が出迎えてくれる。

 希総の料理の師は言うまでもなく母の希代乃。華理那の師は父の総一郎であるが、希代乃の味付けは総一郎の好みに合わせてあるので、二人の弟子である希総と華理那の料理の味もほとんど同じである。とは言えプロ直伝の希代乃の流れに対して、総一郎は全くの我流のため、若干の違いはある。希代乃と一緒になってからは、今まで使わなかった食材も使うようになり、総一郎の料理の幅は格段に広がった。一方で希代乃も総一郎風の手抜き、もとい、時短料理法をマスターするようになっていた。

 食器を片付ける華理那に、

「宿題があったら教えるけど」

 と兄たち。

「大丈夫よ」

 華理那は学年トップで、勉学で困ったことがない。その点ではここに居る兄たちも同様ではあるが。希総も就学以来トップを譲ったことがなく、総志も弟矩総が高校デビューするまでは万年首席だった。その矩総はと言えば、就学年齢を迎える前にそのレベルをクリアしてしまったほどの天才児だ。

「じゃあ私は帰るね」

 と華理那が気を利かせる。

 入れ替わりで希代乃が帰宅する。

「途中で華理那ちゃんとすれ違ったけど、あの子が作ってくれたの?」

「いいえ。主に僕が」

 と希総。

「取敢えずシャワーを浴びて汗を流すわね」

 と来客二人に断りながらスーツを脱ぎ始める希代乃。上着は良いとしても、スカートまでするりと脱ぎだしたので目を丸くする二人。上下を受け取りながら、

「後はお風呂で脱いでね」

 とフォローを入れる息子。

「ああ、いつもの癖で」

 と言いながら舌を出して浴室へ消えていく希代乃。

「いつもあんななの?」

 意外そうな声を上げる総志。

「まあうちの母さんもあんなものだけど」

 と余裕を見せる矩総。

「意外だな」

「外で気を張っているから、帰ってきて緩むんだろうねえ」

 と希総。

「このフロアは僕らの父さんが築いたテリトリーだからね」

 しばらくして風呂から出てきた希代乃。白いバスローブに身を包み、濡れた頭髪はバスタオルでくるんでいる。

 ゲストの二人が長い椅子に並んで座り、左手の一人掛けに希総。その対面に希代乃が座る。

「なにか昔話を聞きたいと言うことだったけど、何故総志君も一緒なの?」

「兄さんが気にしているのは未来の義母に絡むから」

 と矩総が言うと、

「それは気が早いよ」

 と頭を掻く。

「先に、今日の出来事を話します」

 と矩総。

「生徒会長ハーレム会議、だっけ?」

 といたずらっぽく笑う希代乃。

「先に女の子たちの情報を頂戴」

「既に調査済みなんじゃあ?」

 と言われ、

「実際に相対しての感想が欲しいのよ」

 と否定しない希代乃。

「これは文化祭の時の集合写真ですが」

 と総志。

「一番右が西工業初の女性生徒会長桐原丈美さん」

「ショートカットの元気系ね」

「父親はうちの両親と同じ時期に西工で生徒会長をやっていて、瀬尾総一郎に獅子王の称号を贈った人物です」

「桐原組はうちは付き合いがないけど、真冬ちゃんのところは何度か仕事を任せているわね」

「次は東商業の松方美智子さん」

「女子力高そうねえ」

「チョコを貰ったけど、彼女一人だけ完全に手作りでした」

 と矩総。

「完全に?」

 と希総が訊ねる。

「溶かして固めたとかじゃなくて、豆から作ったってこと」

 と答える矩総。

「市販品との違いが判るの?」

「そりゃあ。小さいころから父の作ったお菓子を食べていましたから」

 もともとは貧しい生活の中で舌を満たすための手作りだったが、プロを志してからは材料にこだわってむしろ割高になっているのではと思われる。希代乃が持つ神林家の販路もその傾向に拍車をかけている様だ。

「そして中央の白雪沙織さん」

「黒髪ロングで眼鏡か。なんとなく矩華さんを思わせるわね」

「多分、父に会う前の母がこんな感じじゃ無かったのかなと思います」

「矩華さんは、総一郎様と会って変わった。それに対してこの子は変わらなかったと言うことね」

 と指摘されて少し落ち込んでいる矩総。

「矩華さんが変わったのは、私がそこに居なかったからだと思うわよ」

 と希代乃。

「は?」

「矩華さんが総一郎様と出会った時、ライバルと対峙していたのは私じゃなくて木島波流歌ちゃん。一対一を絶対とするはるちゃんへの対抗上、矩華さんとしてはハーレムを認めるしかなかった」

「それは裏を返せば、波流歌さんが変わらなかったのは希代乃さんへの対抗意識と言うことになりますね」

 と総志。

「そうねえ。でも良かったでしょ。波流歌ちゃんが総一郎の女の一人になっていたら、貴方の沙弥加ちゃんはこの世に生まれていなかったわけで」

 と言われて真顔で考え込む総志。

「兄さん真面目過ぎ」

 と笑う希総。

「貴方の沙弥加ちゃん、は否定しないんだ」

 とからかう矩総。

「そもそも母さんはなぜハーレム容認だったの?」

 と希総。

「総一郎様は、私を神林と言う看板抜きで見てくれた初めての男性だから。それに、私以外でハーレムを容認する女が他に出てくるなんて予想していなかったし」

 と舌を出す。

「特にうちの母が乗っかったのが想定外だったんでしょ」

 と総志に言われ、苦笑いする希代乃。

「しーちゃんには感謝しているわ。私たちの約束が子供の遊びに終わらなかったのは、しーちゃんが二人の間を繋ぐ糸になってくれていたから。もっとも、西条家には西条家の思惑があったようだけど」

 希代乃と志保美の交流をきっかけに、神林ほのかが個人的に持っていた不動産の管理を西条不動産が任されるようになった。

「実はここの地面も母の持ち物で、西条家が管理していたの。私がここに住んだからこそ、最終的に総さまに売却されることになった訳で」

「あくまでも売却なんですね」

 と苦笑する矩総。

「一般論として女性の浮気が許されないのは、パートナーと異なる男性の子を宿すことが契約違反だから。対して男性の浮気はと言えば、男性の稼ぎを他の女性に持っていかれること。女性が自分で稼ぐとなれば両者のハードルの高さが変わる。私みたいな家付き女にとって男性は種馬に過ぎず、金を握っている限り浮気はさほど問題にならないでしょ」

「割り切ってますね」

「こちらとしては婿を取るしかない訳で、総さまがそれを受けいれられない以上はこちらとしても譲歩するしかない」

 と言いながら、

「まあ全部後付けの理屈よ。その時は総さまが私を一人の女として見てくれたことが嬉しくて仕方なかっただけ」

 と含羞んだ。

「うちの母はどうだったんでしょうね」

 と首を捻る矩総。

「好きが先行して後はどうでも良かった。と言うのはあの人らしくない気もするし」

「私は総一郎様に会う以前の矩華さんを知らないから。その点には答えられないわ。一番良いのは本人に聞くことだけど」

「あの人が素直に答えると思いますか?」

「だったら、そばで見ていた第三者に聞くのが一番だね」

 と希総。

 三人の視線が総志に集まる。

「じゃあ呼んでみましょうか」

 総志は五号室に電話して母志保美を呼び出す。

「きーちゃん。なかなかにレアな恰好ね」

 希代乃は志保美が来る前に白いジャージ姿に着替えていた。

「あら、息子の応援の時にはこの格好なのよ」

 と答える希代乃。

「しーちゃんこそ決まっているわね」

 志保美は代名詞とも言える赤いジャケットを羽織っているが、その下は見せブラに膝下のショートパンツ。彼女の場合あまり胸は大きくないので、これで外に出てもあまり違和感は持たれないだろう。

「取敢えず座ってください」

 とお茶出しする希総。志保美は矩総と総志の間に割って入った。

「二人ともイメージカラーですね」

 と矩総。

「そう。私が白でしーちゃんが赤。矩華さんが青で千里さんが黒だったわ」

「イメージ的には白と黒、赤と青が対になる気がするんだけど」

 と総志が首を傾げるが、

「日本語の語源から言えば白はしろし、青はあわし。つまり色の鮮明度。それに対して赤はあかし、黒はくらし。つまり色の明暗を示すんだ」

 と蘊蓄を垂れる矩総。

「つまり白と青、母さんと矩華さんが対になって、赤と黒。志保美さんと千里さんが対になるんだね」

 と納得する希総。

「それなら納得できるな。母さんと千里さんは色っぽさと言う点で見事に真逆だし」

 と笑う総志。

「あら、そうは言ってもお前はこのお乳を吸って大きく」

 と総志の肩を抱き寄せて迫る。

「総志君は、お腹が空くと大きなみちるちゃんの胸に向かって、でも何も出ないから不思議そうにしていたわね」

 と希代乃。

「総美はすぐに学習して、こっちにやってきていたのにねえ」

 とからかわれて顔を赤らめている総志。

「でも。なんで母さんが赤なの?」

 となおも突っかかる総志に、

「小さいころ、戦隊ごっこで私がリーダー役だったのよ。で総ちゃんがサブリーダーで青」

「普通は紅一点はピンクじゃあ?」

「ピンクは波流歌がやっていたわ。私は女子枠に入っていなかったから」

 全員が納得した。

「それで、昔の話が聞きたいとか?」

 希代乃が手早く説明を加える。

「じゃあのりりんとの出会いの話から」


 以下志保美の話。

 私が永瀬矩華と知り合ったのは中二の春。

「西条さん。貴女、瀬尾君とはどういう関係なの?」

「単なる幼馴染よ。今のところは」

 それは違うわよ、矩総君。会う前はあくまでも学業上のライバルとして一方的に意識していただけで恋愛感情は無かったみたいよ。もし恋愛対象として見ていたなら、真っ先に敵視すべきは私よりも波流歌だと思うし。

 ハーレム構想について言えば、ミイラ取りがミイラにの典型ね。初めは単なる思考実験のつもりで議論を始めたのに、いつの間にかどんなシステムなら自分が納得して参加できるかに変わっていたわ。むしろ自分抜きで「瀬尾ハーレムは成立するはずがない」みたなノリになっていたし。

「それってやっぱり先着の希代乃さんを意識していたんでしょうね」

 そうね。結局二人が揃わないとこのハーレムは成立しないのよ。


「やっぱり矩華さん本人の意見も聞きたいな」

 と総志。

「でもあの人が素直に語ってくれるとは思えない」

 と懐疑的な息子矩総。

「特に息子の前じゃあね」

 と共感する希代乃。

「それなら」

 と志保美が提案したのは、子供たちは別室に隠れて希代乃と志保美だけでインタビューすると言うもの。

 そして呼び出された矩華。

「何よ、いきなり」

 と機嫌のよろしくない矩華。

「たまには女だけも良いでしょ」

 と希代乃。クラッカーにチーズを乗せたものを用意している。

「高いワインじゃないでしょうね」

「家に行けば、高いのはいくらでもあるけど、ここには市販の普通のしか用意してないわよ」

「さっきまで矩総君とうちの息子も来ていたのよ」

 と志保美。

「知っているわ。娘から聞いたから。こちらで夕飯をごちそうになったそうで」

「材料持ち込みだし、気にすることは無いわよ」

「それで今日の集まりの趣旨は?」

 と身構える矩華。

「子供たちに昔話をしていて、懐かしくなっただけよ」

 と希代乃。

「息子に変なこと吹き込んでないでしょうね?」

 と凄むが、

「この状況以上に変なことってないでしょ」

 と交わされる。

「うちの子が気にしていたのは、波流歌についてなんだけど」

「未来の義母だから?」

 と首を傾げ、

「気が早いわね」

 と苦笑する。

「生真面目すぎるのよ」

 と母の志保美。

「あなた方二人の子供とは思えないわねえ」

「総ちゃんはともかく、私まで?」

「しほりんはモテたもの。主に女の子に」

「りっかりんはいつからハーレム容認だったの?」

 と希代乃が本題に切り込んだ。

「最初から、そういう男だと分かっていて近づいたんだし」

 と言ってから、

「会う前から好きだったわけじゃなくて、初めは好奇心ね」

「そこが二人の違いかあ」


 隣の部屋では、子供たち三人が聞き耳を立てていた。

 希総の部屋のドアは防音がしっかりしていて、音は漏れない。音声は希代乃が仕掛けていたマイクで拾って送られている。

「映像がないのが残念だな」

 と総志。

「流石に隠しカメラがあるとバレちゃうからね」

 マイクなら矩華の死角に仕込むことができる。

「うちの母はこの手の細工が得意だからね」

 と自慢げな希総。

「それってどうなの?」

 と笑う兄たち。

「仕事柄、会話記録を残しておくのは必要なんだよ」

 とフォローする。

「それにしても、これで波流歌さんとうちの母の違いがはっきりしたね。さて沙弥加さんはどっちだろう?」

「さーや姉はどっちでもなくて。総志兄さんとさーや姉の関係は父さんと志保美さんのそれでしょ」

「だったらこの聞き取りは初めから意味が無かったんじゃあ」

 と笑いあう。

「良いじゃない。貴重な昔話が聞けて」

 この後、矩総と総志は矩華が席を外したすきを見て部屋を抜け出した。


成り行きで過去話に突入。

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