聖鎧契約
『それで【四精領】の中に交代で隠れていました』
『…彼等には後で罰が必要のようですね』
『異議アリ』
『我等ハ御身ノ望ミヲ叶エル事ヲ優先シタマデ』
『ソレヲ罰スルトハ主ノ意志二刃向ウトユウ事ト同義』
『リーダーハソノ辺ガ固インダヨナー。モット柔軟二生キタラ?』
気づいたら最初に出会った巨鎧達が側にいた。
「ひっ!?」
『オイオイ、怖がらせてるじゃん』
『ソノヨウデスネ』
『とりあえずしゃがんだら?』
『御意』
『それでもデケェな。まぁ、仕方ないか。これで我慢してくれ』
「ハ、ハイ」
『じゃあ【契約】始めるか』
『待ってください!!本気なのですか!?』
『いいじゃん。で、イグニス手順は?』
『ハイ、マズハ──』
『こちらの話を……イグニス?』
『私ノ名デス』
『何故名前があるのです!?』
『俺が付けたからさ!!』
『なっ…!?何て羨まし──ではなくて、それが何を意味するのか分かってるのですか!?』
『呼びやすくなった』
『それで済みますか!?貴方様は【四精領】と【契約】した事になってるのですよ!?』
『お前ら、俺について来い!!』
『『『『オォォォォ!!』』』』
「ひっ!!」
『何ビビらせてんだ!謝れ!!』
『『『『申シ訳アリマセン』』』』
「ハ、ハイ。こちらこそすみません」
『じゃあ【契約】始めるか。イグニス手順は?』
『ハイ、マズハ──』
『ああ!もう!!』
『で、何でお前は拒否したがるの?』
『貴方は御自分の力を理解しているのですか?半端な者ではただ力に溺れるだけです。そのような者に貴方との【契約】を認めさせるわけにはいきません』
『ベントゥスー、お母さんがうるさーい』
『仕方無インジャナイ?元カラ戦乙女ハソンナ感ジダヨ?』
『お前らも大変だったんだなぁ』
『話をちゃんと聞きなさい!!後、お母さんではありません!!』
『まぁ、その辺は大丈夫なんじゃない?彼女は』
『……その根拠は何ですか?』
『テラの中から見てたけど、一歩も引かずに格上のお前さん───ま、手加減してたけど───と戦闘?防御?をしてたじゃん?それで十分じゃない?』
『…それだけですか?』
『んー?後はそうだなー。彼女から強い意志を感じたし、何より瞳から輝きが消えてなかった、からかな?』
『───分かりました』
『あら、意外。認めてくれんの?』
『彼女からはまだ伸び代を感じましたし、確かに強い意志を感じますからね』
『戦乙女ガ折レター』
『黙りなさい。……その代わり条件があります』
『条件?』
『私も彼女と【契約】を結びます』
『「え?」』
『さてさて、お嬢ちゃん……いや、カナデ。こちらで話を進めてしまっているが【契約】をしても大丈夫かな?』
「え?あ、あの、わ、私、私は」
『深呼吸』
スー、ハ―
『落ち着いた?』
「ハ、ハイ。それで私何かとその…【契約】をしてしまっていいんですか?」
『元々俺の目的は迷宮から出ることが目的だった。だから【契約者】は誰でもよかったんだがな』
「ハ…ハイ…」
『しかし、アンタを見てもう一つ目的ができた』
「え?」
『アンタのその瞳が映しているのを見るのも一興かな……ってな』
「あぅ」
『じゃ、【契約】のために俺に≪銘≫くれ』
【契約】の詠唱は自然と頭に浮かんだ。
☆
新マグス暦1578年
人族、亜人族そして魔族。それらを巻き込んだ大戦乱『三大陸厄災』が終結し、平和条約が結ばれて約1600年。
『【我は≪聖戦の八芒星≫が一角、≪聖鎧≫。【契約者】に纏われる物なり】』
しかし、それでもなお戦の種火は水面下で世界中に散らばっていた。
『【今ここに新たな≪銘≫と≪契約≫をもって汝の道を共に歩もう】』
そんな世界で
『【故、我に≪銘≫を授けた汝の≪名≫と≪想い≫をここに問う】』
憧れを懐いて冒険者になった漆黒の長髪と瞳を持つ秘密を抱える少女と
「わ、私の名前はカナデ、ツクモ・カナデ。私が望むのは───、憧れた人が見ている光景と、世界の神秘を見てみたい」
迷宮から出るためと、その場の楽しみを求める漆黒の≪聖鎧≫は
『───いいねぇ。実に、実に面白そうだ。【汝の≪名≫と≪想い≫を今此処に我に刻む。我が≪銘≫は≪クロガネ≫】』
この日、この時、この刹那
『【汝との契りを結ぶモノなり】。─これからよろしくな、我が主』
【契約】が結ばれた。
『じゃあ、一度着てみるか?』
「え?」
『ものは試しにと─』
じゃらじゃら
『……』
「……」
『……』
『『『『……』』』』
「…何ですか…?このお宝……?」
『…てへッ☆』