聖鎧登場
「あな…た…は……?」
『通りすがりの全身甲冑だ。おい、こっちの質問に答えずに質問を返すか。同じ事を二度聞くのも面倒なんだが?』
「わ、私は……」
『ふむ。興味本位で踏み込んで殺されかけたと、そういう事でいいのか?』
「…はい」
『まぁ、俺はどちらが正しいのかは分からんが、あっちの方が強そうだしあっちと戦ってみるか』
「え?」
『さて、どこまで飛んで行ったかなぁ』
「た、助けてくれるんですか…?」
『ん?別にそういうわけじゃないんだが?…ああ、結果的にそうなるのか。それなら…』
そして、漆黒の鎧は女戦士が吹き飛んで行った方に歩を進めて行った。
カナデは咄嗟にその後ろ姿に【鑑定鏡】を使用した。
【名前】
【種族】聖戦の八芒星≪聖鎧≫
【ランク】測定不可
【称号】迷宮から出たがってる奴
【ステータス】測定シテハナラナイ
【解説】
勝手に見てんじゃねぇよ
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「……………………………………え?」
☆
『一体何者だ……ッ!』
女戦士は自らの歪に曲がった左腕を見て忌々しく呟いた。
先に攻撃したのは間違いなく自分だ。それなのにダメージを受けたのは自分。
それは今までに遭遇したことが無い経験だった。
少なくてもこの迷宮に自分を超えられる存在はいないはず。
つまり外部からの侵入者しかない。それならば、アレを装備した相手なら頷けるかもしれない。しかし、一瞬見えた相手は……
(武器ではなく、素手で私を吹き飛ばした……ッ!!)
そう、素手。そんなことはありえない。ありえるはずがない。
カツーン……カツーン……
(来たか…)
左腕は損傷。しかし、それ以外ノッブ異常は感じられない。
『オーイ!無事かー?戦えるかー?』
『貴様ッ!!一体何…も……の…』
『あっちゃー。左腕が壊れてるな。それじゃ満足に戦えないだろ、残念』
『ちょ…ちょっと、待ってください!!貴方、貴方様は――』
『じゃ、始めるか』
『人の話を――』
『問答無用』
攻撃は漆黒の鎧から。
放たれるは右の拳。咄嗟に受け止めるは女戦士の剣。
結果は先程と変わらず…
『くっ!』
『ありゃ? さっきより手加減したんだがな』
吹き飛ばされる女戦士。そして、漆黒の鎧はその後ろに回り込み、叩きこむは右脚。
『がっ!!』
『やべ、蹴り入れちまった。ん?』
女戦士は蹴れたと同時にその勢いを利用して体勢を整える。
『おー。スゲースゲー。体勢整えたよ。お見事』
『……こちらの話を聴いてもらえますか?』
『却下』
『何故です!?』
『数日前と同じような展開になりそうだから』
『数日前? まさか!』
『はい。御喋りはお終い。続き始めるか』
☆
『はい、こちらの怯えてる方がカナデさん。無謀にもSSSランクだっけ?――の此処に挑んだちょっと場違いな御嬢さん』
「こ…こんにちは」
『で、こちらのボロボロになっている女戦士風の鎧はえっと……あ、そうそう戦乙女之鎧さん。此処の守護者らしい』
『…………よろしく』
『さて、状況を整理しよう』
『「…………ハァ」』