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神造之鎧

そして、カナデは怪物の口の中へと歩を進めてしまった。

「ここが、八大秘境の1つ……」

入った瞬間に空気が変わったのを実感できる。

見渡す限り綺麗な装飾が施された天井が見えない程の高い柱と壁。よく見ると床にまで彫刻が刻まれている。

「ここがあの人が見ている景色…」

そう思うとテンションが上がってきた。カナデは深く考えることもせずに歩を進めていく。





「……あれ?」

どれくらい進んだだろう?

興奮が落ち着いたことで初めてカナデは異変に気付いた。

「魔物が出てこない?」

高ランクの迷宮と言っても入口付近の魔物は低ランクの魔物しかでない。流石に奥に行くと高レベルの魔物が出るらしいが、そこまで深入りするつもりがなかった。だから、自分がギリギリ倒せるぐらいの魔物が出てきたら撤退するつもりでいた。

実際、駆け出しの冒険者は高ランクの迷宮の入り口付近で低レベルの魔物を倒し、少しずつ奥に進んで経験を積む者たちもいるのが常識だった。





しかし、ここはSSSランクの八大秘境。

伝説の迷宮が一つ。

常識を食い破る怪物の住む場所。





出合いは唐突だった。

「…え?」

角を曲がった先、その「存在」を見た瞬間にカナデは一気に来た道を駆けだした。

あれは相手にしてはいけない。絶対に勝てないと本能が訴えてくる。

しかし、無情にも後からは足音が近づいてくる。カナデは一際大きい柱を見つけるとその物陰に隠れることにした。


しばらくするとその足音の主がやって来た。

それは途轍もなく大きな巨人だった。大きさは目測で10mを超えているかもしれない。


全身を無骨でありながら綺麗な装飾が施された赤の鎧に覆われたその怪物が紅蓮の瞳を称えながらカナデの隠れる柱の横を通り過ぎていく。

カナデは自分が持つ魔導器の中でも特に貴重な一品、『鑑定鏡』を使いその後ろ姿を捉えた。

その結果は、



【名前】イグニス

【種族】神が創りしモノ 神造・巨人之鎧〈火〉

【ランク】S

【ステータス】

攻S 防S 知B 速E 運B

【解説】

神が創りし動く鎧〈四精領〉の一領。

???



「何で最初に出会うのがSランク超えてるのよ…」

隣から地響きが聞こえる中、涙目のカナデであった。





「行った…?」

予期せぬ存在との会合を終えると、嫌な汗が一気に噴き出したのが分かる。

やはり、此処は自分には早かったのだ。見つかる前に引き返すべきだ。


そして、一息つこうとした瞬間、氷柱を背中に刺された様な悪寒が走り抜けた。

「……ッ!!」

顔を上げた先にいたの自分の身長と同程度の全身鎧だった。

しかし、さっきの巨鎧とは比べものにもならない装飾が施された戦士風の鎧。それぞれの手に剣と盾を構えている。


その形状から女性の様な感じがする。それがこちらを見据えていた。しかし、その場を動こうとしない。疑問に思いつつも、咄嗟に『鑑定鏡』を起動させる。

結果、頭に流れ込んできた情報は認めたくない現実だった。



【名前】神造・戦乙女之鎧

【種族】神が創りしモノ

【ランク】SS

【称号】聖鎧守リシモノ

【ステータス】鑑定不可

【解説】

神が創りし動く鎧の一領。

『聖鎧纏う伽藍遺跡』の守護者。

???




越えられない壁がそこにいた。



『その剣は飾りですか?構えないのですか?』

「え?」


声が聞こえたと思った瞬間、目の前の魔物が消えた。


「……ッ!」


右側から気配を感じた瞬間、愛用の剣を一気に引き抜き対応する。


(重いっ!)

『ほう、対応はできますか』


お互いの剣がぶつかることで甲高い音が周りに響く。


『しかし、まだまだ力が足りません』

「くっ!」


相手は片手で自分は両手で剣を持っている。

しかし、力負けして吹き飛ばされる。


「キャァ!」

『この程度で吹き飛びますか…。手加減したつもりでしたが』





気が付くと後には壁。

とうとう追い詰められてしまった。


『ふむ、よくその程度の実力で此処に挑もうと考えましたね?』

「ハァ……ハァ……」

『もう喋る気力もありませんか。久しぶりの秘境外の方との会話でしたが、仕方ありませんね』

『いやいや、お前が一方的に喋って追い詰めてただけじゃん。鬼か、お前は』

『当たり前です。『聖鎧()纏う伽藍遺跡』に挑むという事はそれなりの覚悟と実力が求められています。それが無いという事は死んでも仕方がないという事です』

『へー、此処そう言う名前なんだ。成程、何かさっきから見かけるのが鎧ばっかだったからなぁ。後は無機物の生物?』


…………。

…………?

一人増えてる?


『何者だッ!!』


言い切ると同時に女戦士の鎧が横薙ぎに剣を一閃させる。


ドゴン!!


そして、響くのは鈍い激突音。吹き飛んだのは女戦士。何処まで飛んで行ったのかは分からない程で、既に姿が見えなくなっている。


『おいおい。いきなり剣で攻撃とか怖いな。悪魔か、お前は。…で、そこの女』

「……私?」


そこで、改めて女戦士を吹き飛ばした相手を見た。そこにいたのは……


『Yes! 何でお前さんは襲われてるの?何したの?』


軽い言葉を吐く全身を漆黒に染めた鎧だった。

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