青鎧之魚
「──、ゴバッ、ゴホッ、──」
『フム、久方ブリ故ニ加減ガ難シイナ。二層追加、『多重水層』』
しかし、赤鎧…今はイグニスか。
アイツは相変わらず詰めが甘い。
敵は、獲物は全て駆逐するべきだ。逃がすなどあってはならない。
我等は≪四精領≫。
≪八つの武具≫、≪聖鎧≫たるクロガネ様に仕え、守護する存在。
その糧になるもの、害意あるものに容赦などいらない。
そもそもテラ以外は『伽藍遺跡』に居た時からぬるい。
イグニスは逃げる相手には追撃を行わなかった。
ベントゥスは論外。
侵入者に加減などいらない。それはひいては挑戦者への侮辱に繋がる。
『……フム。今、考エル事デハナイカ。ヤルベキ事ハクロガネ様トカナデ様ノ糧ヲ探ス事カ』
そうなるとこの魔物はおそらくイグニスが献上する事になるだろう。
差し出すものが被るのは好ましくない。別の魔物を探すのが得策か。
『ン?』
頭上に影、鳥か?
鳥…そういえばクロガネ様は焼いた鳥を食されていたな。
『『水槍鰐部』照準、固……』
『アァァァァァァァァァ………』
『…定……』
見覚えがある茶色の兜、テラの頭部が彼方へと飛んでいく。むしろ落下していく。
ベントゥスの頭部を投擲された方向と別方向に落下していくのを見るとおそらくはクロガネ様がまた投擲されたのだろう。
『…ソウナルト残ル方角ハ東カ。フム、僅カニ水ノ気配ヲ感ジルナ』
そう遠くない場所に湖でもあるのだろう。それならばそちらの方を探すのがこちらの相性的に効率よく狩れるだろう。
「………」
『アア、忘レテイタ。サテ、ドウスルカ』
気がつくと捕まえておいた獲物は一切身動きしない。既に生き絶えているようだ。
新鮮さを保つために殺さずに気を失う程度を考えていたのだが、やはり加減が難しい。
『『開放』』
さて、改めて別の獲物を探しに行くとするか。
☆
俺はここで死ぬのか?
同胞の窮地から逃げ出し、仲間に危機が迫っていることを伝えることができずに?
弱肉強食。狩人から獲物になったモノの末路。
ただ静かに命の蝋燭が消えるのを待つだけ。
………………………………嫌だ!
嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!
認められない!
せめて、せめて目前の敵に―同胞殺し尽くした『猫』に似た雰囲気をした―対して一矢報いたい!
消えかけた命。それを怒りで再燃させる。
もしかすると先の『猫』とは無関係なのかもしれない。
ただ!それでも!この理不尽な運命に対して怒りをぶつけたい!
【対象の≪憤怒≫を検知。≪罪化≫を促します。………成功しました】
その時何かが聞こえた。
☆
『…何?』
既に息絶えたと思い魔法を解除し、その場を去ろうと瞬間に急激な魔力の高まりを背後から感じ振り向くと死んだと思った魔物がこちらを睨んでいた。
いや、それだけではない。
黄土色の毛皮は深紅に染め上げられ、爪と牙は漆黒になっている。体躯は二回り大きくなり、鋭くなった眼光の上には一対の角が生えている。
『進化シタダト?』
☆
アクア
【種族】神が創りしモノ 神造・青鎧之魚
【ランク】S
【ステータス】
神が創りし動く鎧〈四精領〉の一領、青鎧の分体であり写し身。
???、???、磯撫を核としている。




