Secret 8 days.
その日はそのまま、特に問題もなく一日が終わりを告げた。拓哉は夕食後やはり自室に籠ったまま、みちるが自室へ戻るまで一切出てくる事はなかった。
まぁ、それは想定内であったので誰も気には留めなかったが。
朋宏も風呂も済まし今は自室でゆっくりとしていた。ただ新しい住人が増えただけだったのに、予想以上に濃い一日になったと溜息をついた。
みちるは、やはり一日過ごしただけで本当に良い人格なのだと思った。拓哉の素っ気ない態度に嫌な顔一つせず、食事も早速夕食から用意をしてくれ、"大学生"の勘違いがなくなった今では少し遠慮がちに話してた喋り方も、同学年と話しているような砕けた喋り方になっていた。そして、表情豊かでよく笑っていた。
それを朋宏は普通に可愛いと思ったし、実際憲斗や雄亮もそう感じていた所もあった。たった一日だけでみちるはすぐ皆に溶け込んだ。
だから、その反面、内側でどんな感情を抱えているのか想像も出来なかった。
「家出、なんてそんな単純なものなのだろうか……」
ベッドの上に寝転がり朋宏はそう呟いた。
本当は家出でなく別の理由があるのではないか。そう、自分達のように。
朋宏はふとそう思ったが、すぐに頭を振り考えるのを止めた。
「関わらないって決めたんだ。彼女を見て……余計にそう思ったんだから、本当の理由なんて知らなくていい」
一人呟くその言葉は誰にも届くわけもなく、微睡む中、朋宏は意識を夢の中へと繋いでいった。
同時刻、みちるは持ってきた荷物の中から、一枚の写真を出して見ていた。若い男女がカメラに笑顔を向けている写真だ。女性の方は両腕を大切そうに、その大きなお腹に添えていた。
「絶対、真実を見付けるまでは帰らない」
みちるの目には揺るがない強い意思を宿していた。持っていた写真を手帳に挟み、布団の中に潜り込み、今日一日を振り返っていた。
叔母からはそんな深く聞いていなかった先住人達。あまり歓迎はされていないだろうが、それでも仲良く出来たら、とそう思いながらみちるは重い瞼を閉じた。
ーそう言えば、何で皆あんなに私を見て驚いていたのかな……。
遠くなる意識の中で、会った瞬間の事を思い出しながら、そのままみちるは意識を手放した。