Secret 6 days.
昼食も済んだところで、理事長は呼び出しがあり急遽仕事場へと向かった。後片付けも済んだ朋宏がみちるに家の中を案内する、と言って席を立った。理事長の家は元は下宿屋として建てられたものだったため、一般的な家よりは広い。三階建てで一階はガレージなどでほぼ使う事はなく、朋宏達は主に二階、三階で暮らしている。二階はリビング、キッチン、風呂、トイレとあり、そして和室洋室の部屋が併せて三つ、三階は風呂、トイレに加えて洋室が五つ。朋宏達は三階の洋室四つの部屋を使っているので、残りの一室を今回みちるが使う事になった。
「で、ここが小早川さんの部屋なんだけど、すぐそこに風呂場があるから、君は三階のこの風呂を使って。俺達は下の風呂を使うから鉢合わせになる事もないし、トラブルも防げるから」
「はい」
「まぁ、あとは部屋に鍵があるから室内にいる時は必ず掛ける事、あと小早川さんの横は拓哉の部屋なんだけど、あまり煩くしないようにね。お察しの通り、拓哉は女性が駄目だから」
「はい、気を付けます」
三階の案内を済まし、二階へ降りながら朋宏は必要事項を伝えていた。そしてみちるに一枚の紙を渡した。
「? これは……?」
「俺達の携帯番号とアドレス。一応何かあった時に連絡取れるように登録だけはしておいて」
「わかりました」
「あとは……あぁ、そういえば、小早川さんって料理出来るのかな?」
「料理ですか? はい、一応……」
「そう、だったら悪いけど、俺と二人で分担して食事を作ってもらいたいんだ。今までは俺一人でしてたけど、さすがにバイトのある日や帰りが遅くなる日まで作るのはしんどくてさ、他の奴らは作らないし、分担してもらえると助かるんだけど」
「あ、でしたら分担ではなく、食事の用意はこれからは私が全部やりますね」
「いや、そこまでしなくていいよ。ただでさえ男四人分なんて普通より多いんだから、全部任せると小早川さんに負担がかかるし、当番制にしてもらえば」
「いえ、料理するの大好きですし、それに大学部は高等部より忙しいの知ってますから、ご厄介になる以上はそれなりに出来る事しますので」
「…………はい?」
みちるの申し出は今まで食事の事で苦労してきた朋宏にとっては有難い話だったが、おかしな点に気付かない朋宏ではなかった。一瞬、自分の耳を疑ったが、恐らく言い間違えたのではなく、そう捉えているのであろう。
「えー、と……ごめん、ちょっと聞きたいんだけど、理事長から俺達の事はどう聞いてるのかな?」
「叔母からですか? 男四人が既に下宿している、と聞いてます」
「そう……、それだけ?」
「はい」
一点の曇りなく答えるみちるを見て朋宏は溜息を吐いた。
(理事長、説明不足!!!)