Secret 2 days.
「ふざけんなっ! 誰が女なんかと暮らすか!!」
「拓哉っ」
バンッと勢い良くドアを閉め、"拓哉"はリビングから出て行った。穂坂拓哉、彼は帰宅後に初めて朋宏達が理事長とした話を聞いたのだ。椅子に腰掛け溜息を吐く朋宏に雄亮はコーヒーを出した。
「ん、飲みなよ」
「ありがとう」
「それにしても拓哉もなー、女の子と暮らせるって俺達健全な男子高校生からしたら神様からのご褒美みたいなものじゃないのかなぁ」
「それ、本人の前で言ったら怒られるよ」
「だね。さて、あいつをどう説得しようかねぇ……」
朋宏はコーヒーを飲みながら雄亮のその言葉を聞いていた。明日から理事長の姪が来て、一緒に暮らす事になるのは変えられない事実、だが拓哉にとっては変えたい現実でもあった。
「大体さー、今どき女嫌いの男子高校生なんているのか、普通」
「いるじゃん、普通に」
「ねー? ……いや、本当に拓哉どうしようか……」
「ねぇ……」
二人の間に長い沈黙が出来た。拓哉は俗に言う女嫌いであった。その為、朋宏は理事長の話の後、拓哉にどう話を切り出そうが迷っていたので、帰宅後の今に至った訳だが、話が早かれ遅かれ拓哉の反対の意見は変わらなかった。朋宏自身も、姪の件は反対ではあるが拓哉ほどまでいかず、避けれるなら避けたい、という程度だった。しかし、場所が場所なため、朋宏も反対意見に強くは言えず、なんとかして拓哉を説得するしかなかった。
「さて、本当にどうしようかな」
「今日の晩ご飯抜きは?」
「何で拓哉が罰ゲーム受けるような事を?」
「え、姪っ子ちゃんと仲良く暮らさなきゃご飯ナシだよ、って朋宏が言ったら渋々納得しないかな、と思って」
「いや、だから何で拓哉が……って、同じ事二回言わすなよ。大体、"仲良く"は俺もするつもりないよ」
「えー?? 女の子だよ? 女の子。仲良くしたいでしょ」
「雄亮じゃあるまいし」
えー!! と声を張り上げる雄亮をよそに、朋宏は顎に指をあて考えた。なるべく拓哉の神経を逆なでせず、かつ拓哉がなるほどー、と納得したくなるような説得の仕方はないかと。
しかし、いくら考えても朋宏には良い案が浮かばず、最悪雄亮のご飯ナシ案でいくしかないのかと思っていたら、玄関が開く音がし、そして開けた人が騒がしくリビングへやって来た。
「拓哉の説得どーなったー??」
そう言った憲斗は慌てて帰ってきたのか息を切らしていた。