Secret 13 days.
みちるの部屋はドアが閉まっていた。そのドアノブに手を取り、みちるは開けるよ、という掛け声を三人に掛けた。三人はそれに無言で頷き答えた。顔は強ばっていて、今から未知の世界へ行くのでないか、というほど硬かった。
そんな三人を余所にみちるは平然と部屋のドアを開けた。
「こ、これは……」
「なっ……?!」
「あー…………思ってたのと少し……」
ドアが開き、中へ順番に入って行った朋宏、拓哉、雄亮は夫々驚きを隠せなかった。
「これ……理事長の趣味?」
「んー……、趣味、というよりも、女の子が産まれたらこういう事したかった、って言ってたから、願望かな?」
それを趣味と言うのでは? という目をみちるに向けた三人は、再び部屋を見回した。
理事長が選んだ家具にその配置、そこには本当に別世界へ迷い込んだような空間が広がっていた。
部屋全体はほぼピンクに統一され、ベッドは俗に言う姫ベッド。天蓋が付いていないだけまだまともに見えるようだが、姪に与えるには驚愕的な家具だ。
驚きを隠せない三人はふと理事長の顔を浮かべた。
一体どんな顔をしながらこんな部屋を作ったのか……。
家具や配置に問題もなく、みちるは業者の人に礼を言い見送った。
あまりに衝撃がきつかったため、三人はリビングのソファやリクライニングチェアに身体全体を凭れさせたまま身動き取らずにいた。ほんの少し前まではそこには殺伐とした気まずい空気が流れていたというのに、今は別の意味での気まずい雰囲気が漂っていた。
「たっだいまー!!」
そんな空気を壊すかのように憲斗の元気な声が響いた。
どうやら憲斗が帰宅したようで、みちるはそんな明るい雰囲気を持ち帰ってきてくれた憲斗に感謝の眼差しを向けた。
「あっれー?なんでみんなそんな今にもお迎えが来そうなくらーい顔してるの?」
「憲斗……おかえり……。今ならその明るさに救われるよ」
「いつも通り煩いに変わりはないけどな……」
首を傾げる憲斗にみちるが事の顛末を語った。
事情を知った憲斗は目を輝かせ、みちるの手を取り、
「僕にも見せて!!」
と大きな声で言った。みちるはそれに応え、憲斗と共に再び自室へと足を運んだ。
暫くすると憲斗はみちるとリビングへ戻ってきて、そして一言、
「Joli passe-temps!」