Secret 12 days.
未だにみちるが自分の腕の中に居た事に驚いた朋宏は、謝りながら慌ててみちるを離した。
ー気付かなかった、それはきっと無意識に近かった。
みちるを横目で見ながら朋宏は思った。
ーとられたくない、なんて思うほど想える子ではないのに……
少しの間静寂が訪れ、ふと思い出したように雄亮が沈黙を破った。
「そうそう、家の前に止まってる車って、みちるちゃんの荷物が届いたからなの?」
その問いにまだ頬に赤みを残したままみちるが答えた。
「うん、そうだよ」
「んー……じゃあさっきからそこで業者さんが立ち尽くしているのは作業が終わったから、なのかな?」
その言葉に雄亮以外の三人がドアの方へ振り向いた。そこには雄亮が言った通り、引越し業者の男性が苦笑いを浮かべながら立ち尽くしていた。
みちるは慌てて立ち上がり、男性の元へ駆け寄った。
「す、すみません、気付かず……」
「いえ、大丈夫です。お荷物の配置が済んだので確認してもらえますか?」
「はい、わかりました」
そんなやり取りを終えた頃に、雄亮がみちるの後ろから顔を出して言った。
「それさ、俺も部屋見ていいかな?」
「え……?」
「はぁ?!」
「おい、何言って……」
雄亮の言葉に驚いたのはみちるだけではなかった。朋宏、拓哉も同じように驚いていた。
そんな三人に構うこと無く、雄亮は言葉を続けた。
「いや、だってさ、あの理事長が全部仕切ったんでしょ? どんな部屋になるのか気にならない?」
そう言う雄亮の目は好奇心で輝いていた。
朋宏と拓哉はそれを聞いて少し考え込んだ。確かにいつも見る理事長は眉間に皺を寄せていて、少し近寄り難い。そんな彼女が自分の姪に宛てた家具などは一体どんなものなのか。
気にならない、と言ったら嘘になる。だが問題はその部屋がみちるの部屋、だということ。雄亮や憲斗なら迷うこと無く見たい! と言うのだろうが……。
朋宏と拓哉はお互い見合わせた。目は二人共好奇心に溢れていた。
「…………」
「…………」
どうする? と二人は目で会話をしている。
そんな二人を見て、雄亮は誘惑するかのような目を向けていた。
「あの……、そんなに気になるなら一緒に見に行く?」
「「え……?」」
願ってもない提案だった。
まさかみちる本人からそう言ってもらえるとは思いもしなかった。
「そりゃあ……多少気になってはいたけど……。でもいいの?」
「いいよ。新しくなったばかりの部屋だし、私は気にしないから」
「君がそう言うなら……、遠慮なく見ようかな」
みちる本人の了承も得て、四人は前を歩く業者の人を追うように着いて行った。