Secret 10 days.
朝食を済ませみちるが後片付けをしている時、インターホンが室内に鳴り響いた。それをリビングで聞いていた拓哉は、少しだけ間を空けてからモニターを確認し、玄関へと向かった。どうやら出るのが嫌だったようだが、生憎みちるも朋宏も手が空いていなかったので、仕方無く拓哉が出ることとなった。玄関のドアを開けると、爽やかな笑顔で元気な声が広い玄関に鳴り響いた。
「おはようございます。にこにこお引越しセンターです。お荷物届けに参りました」
この職何十年だ、というガタイの良い男性が会社名に負けず劣らずの満面の笑顔で挨拶をした。どうやらみちるの荷物が届いたようだが、何故引越しセンターで来たのか、拓哉は既にしかめていたその顔を更に歪ませた。
後片付けの手を一旦止めて玄関へやって来たみちるは、来訪者を見るなり自室へと案内し、そしてお願いします、と一言言い残し再びキッチンへと姿を消した。その行動に疑問を持った拓哉はみちるの後を追いキッチンへと向かった。
「何で引越しセンターなんだ?」
「え……?」
拓哉は後片付けを再開していたみちるに問い掛けた。
みちるは一瞬手を止めたものの、再び手を動かし拓哉の問いに答えた。
「叔母様に全部任せたんだけど、家具とかも部屋まで運んでくれるから引越しセンターでお願いしたって言ってたよ」
「だったら家具の配置とかでお前部屋に居た方がいいんじゃねぇのか」
「家具の配置も全部伝えてあるらしいよ」
「お前はそれでいいのかよ」
全て人任せで進んでいるみちるの部屋作りに突っ込まずにいられなかった拓哉は声を少し荒らげたが、みちるは自分の勝手で世話になる以上我儘は言わない、と言い放った。
流石にそうこられると拓哉も何も言えず、再びリビングへ足を運びソファーへ腰掛けた。
暫くすると用事を済ませたのか、朋宏がリビングへやって来た。ソファーに大胆に腰掛けている拓哉を見て小さく溜息をつき、払うような手付きで拓哉の身体を横へずらさせ、空いた所へ腰掛けた。
「今小早川さんの部屋でバタバタしてるのって……理事長が言っていた家具が届いたの?」
横でスマートフォンを弄っている拓哉へ問い掛けた。拓哉はスマートフォンの画面に目を向けたまま答えた。
「そうらしい」
「で、肝心の部屋の主は何でキッチンで洗い物してるわけ?」
「知らねーよ。なんか全部任せてあるんだってよ」
「ふぅん……」
素っ気ない返事を返し朋宏はキッチンの方へ目を向けた。
丁度みちるが後片付けを済ましたようで、お茶の用意をし始めていた。