クレヨン
死滅した世界に一枚の絵画。
白い砂ばかり舞い、絵画を避けて風が通る。
幼い頃、24色のクレヨンを何度も盗んで落書きした。すぐに虫や餓えた獣が寄りついて。
両親は咎めるよりも削ぎ落し、粉末を口に含んだ。
滅びた文明の最後の名残り。24色で、どれだけ生き延びるか。
人類や他の生物さえ殆んどない。
大人になった彼は頭の中で絵画を続けた。
両親は自殺した。
棒の残りでヒトリなら十年位は生き延びれる。
鮮やかな色彩から食べ尽くされた。長くない、彼は思い立ち描き始めた。
描きたかった、死ぬ間際どうしても。
完成と同時に息絶えた。
何物も群がる事はない。
若き天才の、いかにも名画。
死滅していく世界の生き写し、鏡のように描かれた絵画。