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神様は明確に頭がおかしい―お前の頭はハッピーハッピーセットかよ!?―  作者: マグロアッパー
■モブキャラが行く―鈴木さんのマガンコウサッポウな一日―
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5.鈴木さんの体育とお昼


 二時間目の放課は揃って写真を撮った後、今後のことについて話しました。


「なぁ花祭さん、それって男子が中心にいてもいいの?」

「えぇ、特に規定はなかった筈よ。あと、ポーズも自由ね」


「ってことは――」



 結果、構図を変えず、それぞれがやりたいポーズを取った写真を撮影し、面白そうな何枚かをコンテストにエントリーしたらどうか、という話になりました。


「その写真を決める方法はどうする?」

「あ~~それは……なぁ樋口、何かいいアイディアある?」


「ん? 普通に多数決でいいんじゃないか? 何なら二回に分けておけば――」


 それから更に話し合い、エントリーする面白そうな写真を決めるのは、参加者による、二回制の多数決で決定することに話がまとまりました。


 百均で写真を何十枚か収められるファイルを購入し、それぞれの写真をプリントアウトして収納。各写真が収められたビニールの上にポストイットを貼り、そこに正の文字を記入していって、数を計算する仕組みです。


 休み時間などにそのファイルを参加者に回して、一回目で上位六枚を。二回目で上位三枚を選出。その三枚でコンテストに参加します。数が同じものが何枚かあった場合は、選出枚数を変更したりするなどして柔軟に対応するということで。


「お~~! 何か面白そうだけど、結構やること多そうだよな」

「……まぁ、確かにね……でも、こういうのは……」


 その際に必要となる、百均で写真を入れるファイルを買ってきたり、写真をプリントアウトして収納したり、多数決を管理するなどの雑多な作業に関しては――


「あぁ、それは私と樋口がやるから。ねっ、樋口?」

「は? まぁ別にそれ位ならいいけどよ」


 前期の学級委員と副委員長の二人が務めることになりました。


「ちなみに優勝者には、変なトロフィーと謎の名誉。希望を出せば所属を公表出来て、無駄に知名度が上がるわ。変で謎で無駄が満載ね!」


「香奈、何でそんなのにエントリーしようと……ごめん、やっぱ聞きたくないわ」

「あはは~香奈ちゃんはいつも楽しいことを探して来るよね」


 聞いている分には何一つ得をしなさそうな感じですが、花祭さんはとっても楽しそうに皆に言います。


「何か、話がまとまって来たな」

「おう。結構面白い感じるになるんじゃね?」


 そんな具合で、ただ参加するだけでよく、簡単に面白い写真も撮れることも分かり、皆にやる気が満ちている様子が傍目にも分かりました。


 また、大会の開催元が「バンザイ」という、男の子なら誰でも知っているゲーム会社であることが判明すると、何故かヒートアップ。見学していたクラスメイトも集まり、どうせなら大人数の方が面白いと、参加者を増やす方針に決まり……。


「いよ~~し! どうせなら入賞して所属をドドンと公表しましょう! “ あの進学校が暇すぎる ”と言われるよう、張り切っていくわよ!?」


 最終的にはお昼休みまでに残りのクラスメイトを誘い、お昼にクラス皆で撮影することになりました。マガンコウサッポウが生んだ、謎の団結です。


「それじゃ、昼休みが始って二十分位経ったら、グラウンドに集合ってことでいいか? 場所は走り幅跳びとかやってる場所があるだろ? あの近くってことで」


 元学級委員長の樋口君がその場を纏めるような口調で言うと、皆がそれぞれに了解の言葉を述べました。現学級委員長である、吉浦君の声もそこにあります。


 そうこうしている間に、少し長めの放課はあっという間に過ぎ、三時間目の授業開始を知らせるチャイムが鳴り響きました。


「げっ!? もうそんな時間?」


 と、黒板上の掛け時計を見ながら、焦った声を出す横川さん。


「ヤバ! 京香! 早く教室に戻るわよ」

「うん。じゃ~ね~香奈ちゃん、樋口君。またお昼に」


「あぁ、二人ともお疲れさん。それじゃお昼に」

「清水ちゃん、ありがとうね。デコ助もついでに感謝してあげるわ。喜びなさい」


「誰がデコ助だコラァ!?」


 他のクラスの二人が急いで自分の教室に戻り、私達も解散して席に着きます。その際、皆が楽しそうにお昼のことについて話しているのが印象的でした。


 さて、三時間目は数学ⅠBの時間です。


 昨夜、昨日の授業の復習の後にしっかりと予習しておいたので、何とか大丈夫でした。でも授業速度が速いので、今後も着いて行けるか少し心配です。


 そして四時間目。お昼前は体育の時間です。お隣のクラスと合同で、女子は体育館でバレーボールの授業となります。男子は外でサッカーをしているみたいです。


 この時間になると、正直とってもお腹がすきました。でも昼食時に飲めるトマトジュースを思い、気合いを入れて臨みます。よし! 頑張るぞ!


 バレーボールは最初の授業の時に、六人のチームを組みました。私のチームには花祭さんも入っています。勿論、牧ちゃんと秋ちゃんも一緒です。


 全体で準備運動をした後はチームに分かれ、チーム内で二人一組になってトスとレシーブ練習をします。入学当初からの名残で、私は花祭さんと組んでいます。


「鈴木ちゃん! 良さそうなボール選んできたから。これを使いましょ」

「あ、はい。宜しくお願いします」


「しかし……ぐぇっへっへぇ! 鈴木ちゃんの体操着姿は、また一段と可愛らしいわね」

「え? あっ? えぇ!?」


「はいはい、花祭さん。涎垂らしてないでちゃんと練習しなさい」


 先生に呆れ顔で注意されると、花祭さんは「は~い」と素直に応じ、練習を開始しました。


 体操着姿……変な趣味はないですが、私なんかよりも花祭さんの体操着姿の方が、遥かに可愛らしいと思います。それこそ体育祭が終わった後、写真が高い値段で男子の間で遣り取りされていたという、嘘か本当か分からない噂が流れる程に。


 私がそんなことを考えて練習していると、花祭さんがアドバイスをくれました。


「鈴木ちゃん、レシーブの時にもうちょっと膝を上手く使うと、柔らかく球が上がると思うわよ。カチコチにしないで、ふんわりって感じで」


「えっ、ふ、ふんわりですか?」


 慌てて応じます。膝を上手く使う……。体育の先生にも前に同じことを言われた気がしますが、なかなか難しいです。


 それから花祭さんが見本を見せてくれたり、何とか動きだけでも” ふんわり ”となるようその場で何度か練習すると、花祭さんが顔全体で微笑んでくれました。


「うん。そうそう、そんな感じ。ちょっと球を投げるわね」

「は、はい! お願いします」


 そうしてトスなどの練習が終わると、チーム対抗でお遊びの試合を行うことに。


「秋ぃ! 気合い入れて行けよ!?」

「……私が気合い入れなくても……花祭香奈がいれば楽勝よ」


 秋ちゃんが言うように、花祭さんは私と違い、とっても運動神経が良いです。


「行くわよ~~~~、っと!」


 サーブもアンダーハンドじゃなくて、左手で上げたボールを右手で打ち出す、スピードのあるフローターサーブをバシバシ決めます。格好いいです。


「うわっ、凄っ!?」

「ナイサー花祭さんっ!!」


 その姿に感嘆の声を上げる人も少なくありません。


 チームメンバーもそれは同じです。中学校の頃にバレーをやっていたセッターの娘が上げる球を、飛び上がり、奇麗なフォームでアタックする花祭さん。


 鋭角的な軌道を描いて見事ポイントが決まると、セッターの娘が駆け寄ります。


「バレー部じゃないのに、やっぱスゴイね花祭さん!」

「え? あ、あははは! ま、ま~~ね」


 誉められた当人は、照れた表情を見せています。実は花祭さんは、樋口君がいない所だとあまり自由奔放には振る舞いません。ちょっと大人しいです。


 一学期の頃から、体育の時間はずっと花祭さんとペアを組んでいた私は、そのことを少し意外に思ったものです。教室に戻ると――


『オラァ! 樋口ぃ!』


 といつもの調子に戻るのですが……。


 また授業中、他のチームの試合の得点係を花祭さんと行っていると、クラスメイトが何人か集まって来ました。顔を上気させ、


「花祭さん! マガンコウサッポウなんだけど、こういうポーズっとかって――」

「あっ、それいいかもしれないわね。ちなみに、腕をピーンと伸ばすと……」


 お昼休みに撮る予定の写真について、相談することがあったみたいです。花祭さんを含め、皆で楽しそうに顔を輝かせて話し、聞いている私も楽しくなります。


 そんなこんなで午前中の授業が終わり、着替えて昼食の時間です。よっ! 待ってました! 待ちに待っていたので、ついついテンションがアップです。


「あ~~ヤバイ。お腹がペコちゃんで仕方ないよ。早く食べよ」

「……牧……そのペコちゃんって言い方、いい加減止めた方がいいわよ……」


 牧ちゃんと秋ちゃんの二人が、お弁当と一緒に椅子を持って移動してきます。たまたま私の席が列の一番前ということもり、色々と重宝されています。


「おっ、相変わらず彩り奇麗で美味しそう! それって何? ハンバーグ?」

「うん。昨日、お母さんが作ってくれた豆腐ハンバーグの残り。えへへ」


 お弁当箱を開けると、牧ちゃんが感嘆の声を上げます。調理師のお母さんが作ってくれたお弁当は、いつもカラフルです。お肉と野菜がバランスよく入っていて、よく一緒に食べる二人に褒められ、摘まれてしまいます。


「なぁなぁ、ちょっと貰ってもいい? 私のも上げるから~」

「ふふふ、どうぞどうぞ」


「あ……私も交換希望……」


 でも全く構いません。私の楽しみは、何と言っても昼食時のトマトジュースにあるからです! 一日三回のトマトジュースタイム。お昼の部です。


 小型パックのものを毎日買っていると、費用がかさみます。なので、家で飲んでる1L入りの紙パックの中身を、小さなペットボトルに予め移し替えておきます。


 学校には、それを専用の保冷袋に保冷剤と一緒に入れて持って来ています。袋はトマトジュースメーカーのオリジナルの品で、トマト柄です。完璧です。これは実は、二人からのプレゼントだったりします。非売品です。嬉しいです。


 賑やかにお喋りをしながらの昼食。漫画などで見かける学食は私達の高校にはないので、クラスメイトの半数が教室に集まっている状態です。


「そういえば……花祭香奈の集まりは、お昼が始まってから二十分後だったわね」

「うん、ふぉーふぉー」


「……牧……口にもの入れて喋らない方がいいわよ」


 そこで私は写真撮影のことを思い出しました。


 花祭さんの席に目を向けると、いつもの通りいません。樋口君もです。花祭さんと樋口君は、昼食時には清水さん達のクラスに赴き、四人でお弁当を囲んでいるようです。学校での自由時間、二人は大体一緒です。


 私が視線を目の前に戻した時、牧ちゃんが食べ物を飲み下しながら誰にともなく尋ねました。何でもないことのように。



「そういえば、あの二人って付き合ってるのかな?」



 明日の天気を尋ねるかのような、気軽な調子で。私は瞬間、体を硬直させます。あたかも存在そのものを、凍り付かされたかのように。


「……あの二人って……どの二人のことを言ってるの?」


 牧ちゃんの言葉に、瞼が重く、眠たそうな目で応じる秋ちゃん。


「え? 花祭と樋口に決まってんじゃん!」

「あぁ……気になって尋ねた人がいるらしいけど……花祭香奈は否定したそうよ」


「いや、花祭って実は照れ屋だからそこは否定するでしょ」


 その会話に私は参加せず、無言を保っていました。花祭さんと樋口君は、お付き合いしているのかと勘ぐりを持ちたくなるくらい、本当に仲良しさんです。


 ――仲良しさん……本当に、それだけ?


 もぐもぐ。気付くと私は、食事を再開していました。もぐもぐ。知らず知らず、箸の動くスピードがアップです。もぐもぐ。


「ってか、あんだけ毎日一緒で、流石に付き合ってないなんてことはなくない?」

「さぁ……どうかしらね……」


 ただ一心不乱にもぐもぐしていると、二人の会話が遠くなります。不意に囁きかけてきた、誰かの声も。もぐもぐ。もぐもぐ。もぐもぐ。


 そうやって二人と言葉を交わさずに箸と口を動かしていると、何かの異変に気付いたみたいな調子で、牧ちゃんが声を掛けてきました。


「あれ? って、今日は食べるの早くない?」

「え? あっ……」


 指摘されて注意を向けると、お弁当箱の中身が殆ど消えていました。


 空になりつつあるお弁当が、もっとゆっくり味わって食べてくれよ! そう言っているように聞こえました。自分自身、訳が分からなくて目をパチクリさせてしまいます。


「あっ、さてはアレだな~~」

「え? な、なに?」


 牧ちゃんが何かに思い至った、悪戯な笑みを形作ります。何故でしょう、別に秘密なんて無いはずなのに、私の心臓はドキドキと脈打ちます。



「トマトジュース、待ちきれなかったんでしょ?」



 しかしその言葉に、拍子抜けしてしまいました。


「え? トマトジュース?」


 私の様子には気づかず、牧ちゃんが朗らかに笑い、言葉を重ねます。


「いや~、本当にトマトジュース好きだよね」

「え? あ、あははは、う、うん」


 私は出来るだけ愛想笑いと気づかれないよう、懸命に笑いました。続いてヒンヤリとした冷気の感触を覚えながら、鞄から保冷袋を取り出します。


「あっ、出た出た。お昼のトマトジュース」

「え、えへへ」


 お弁当の残りを味わって食べた後、いそいそとトマトジュースを保冷袋から取り出し、ペットボトルのキャップを空けて口を着けます。そこからゆっくりゆっくりと、咀嚼するように味わいます。


 その様子を見ていた牧ちゃんが、「あっ、やっべ! 私も早く食べちゃわないと! 秋も早くしろよ」と言って、食べる速度を速めました。


 すると秋ちゃんが「ふっ」と笑い、お弁当箱を差し出します。


「なっ!? 空だと!? 秋……いつの間に?」

「……いえ~い」


 私はそんな光景を、トマトジュースを飲みながら楽しく眺めています。これが私たちのお昼休みの光景。トマトジュースも相変わらず美味しいです。


 でもちょっとだけ、今日のお昼のトマトジュースは、いつもと違う味がしたような気がします。どこがどう違うのかと問われても、上手く答えられませんが。



 そして……そんな感想を抱いている私を、秋ちゃんが物問いたげな目で、じ~~っと見つめていた気がするのも、やっぱり、気のせいなんだと思います。



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