1.プロローグ 神様は明確に頭がおかしい ◆イラストあり
神様は、明確に頭がおかしいと思う。
小学生の頃、日本は自由で平等で、民主的な国だと教わった。でも中学生になれば、そんなのただのお題目で、嘘っぱちだと分かる。
百歩譲って、自由で民主的かもしれないが、決して平等なんかじゃない。
頭がいいヤツもいれば、容姿が整ってるヤツ、スポーツが出来るヤツ、家が裕福なヤツ、特別な才能を持ってるヤツ、様々だ、決して平等なんかじゃない。
そこで俺が感じたことは、多分、神様は平等なんか好んじゃいないってことだ。その考えは高校生になった時、彼女――花祭香奈を知って確信に変わった。
容姿端麗にして頭脳明晰。
運動神経は抜群で、ヴァイオリンの腕前も一流らしく、家は資産家。
明らかに富が偏在してる。平等分配の原則はどこに?
やっぱり神様は、明確に頭がおかしいとしか思えない。
そして……。
「あ~退屈で死にそうだわ。ねぇ樋口、ちょっと国会議事堂でも爆破してきてよ。は!? 出来ない? なんで? だ・か・ら! その艱難辛苦を乗り越えて、国会議事堂を爆破しろって言ってんのよ!? ったく直ぐに理解しろよ! お前の頭はハッピーハッピーセットかよ!?」
神様は花祭香奈の器や環境をそんな風に整えながら、精神にとんでもないものを容れた。
三度目になるけど、敢て言おう。
神様は、明確に頭がおかしい。
彼女の性格を、一言で述べるならジャ○アンだ。「ほしいものは、手に入れるのがおれのやりかたさ」と嘯くあの人。
しかも、映画版じゃない。
凶暴で凶悪な『心の友』を求めてこないアニメ版の方。
『樋口ぃ、お前のものは私のもの。私のものも当然、私だけのものよね?』
実際に言われたことはないが、この台詞が花祭以上に似合う女子はいない気がする。うん、マジで。
俺は今、そのジャイア○にこき使われる、舎弟の一人だ。残念ながら現実なので、「きみは、じつにばかだな」とか、漫画版だと結構毒舌を吐いてくる、愉快で万能な猫型のロボットはいない。
「はぁ……」
知らず溜息ばかりが漏れてくる。俺の健全な筈の高校生活は、彼女と出会ったことで崩壊した。
「樋口……アンタさっきから何ため息ばっかついてんのよ? え、私のせい? はぁ!? 何言ってんのよ!? お前が『君の言うことならなんでも聞きまふ~、協力させてくだはい~』って言ったんじゃない! え、そんなこと言ってない? テメコラ、嘘ついてんじゃねぇぞ!? お前の頭はハッピーハッピーセットかよ!? ったく……まぁいいわ。それよりも樋口、今日の放課後も手伝いなさいよ。今度こそ可愛い女の子をゲットじゃあ、げっへっへぇ」
彼女の性格について、若干訂正しておく。
オッサンだ、オッサンも入ってる。
剛○商店の息子のように荒ぶり、オッサンのように美女に舌舐めずりする。うん、これが正しい表現だ。
しかしと言うか、やはりと言うか、今日の放課後も花祭に付き合わされるのか。俺は放課後に付き合わされるであろう面倒事を思い、再度、溜息をつくと……。
あの日のこと。
花祭の舎弟にされた日のことを思い起こす。