出世門
~出世門~
ある日曜日、一年二組の友達
僕と近藤くんと小山くんのいつもの三人で
学校の裏山で探検をして遊んでいた時の事です
夢中で遊んでいた僕らは
木々を掻き分けて、どんどん山奥に進んでいきました
少し怖かったけど、それがまた楽しかったのです
すると、あるところで
僕らは古びたほこらのような場所を見つけました
ほこらの脇には僕らと同じくらいの高さの鳥居のような物がありました
側に木の看板が立ててあり
古くなって殆ど読み取れませんでしたが
「この鳥居を正面からくぐった者は出世してどうのこうの…
反対側からくぐった者はどうのこうの…」
と書いてありました
僕らは、出世って何だろうと言いながら
良く分からないけど、面白そうだからくぐってみよう。という事になりました
まず始めに小山くんがくぐる事になりました
小山くんが鳥居をくぐり、半ニヤケでこちらを振り返りました
すると少し間が空いて、近藤くんが小山くんを指差し
大きな声で叫びました
「あ、小山くんが大山くんになっとる!!」
確かに小山くんは見た目は何も変わりありません
しかし、小山くんは明らかに大山くんになっていたのです
興奮した僕達は続けて試したくなり
次は近藤くんがくぐりました
そして振り返った近藤くんは、もはや遠藤くんでした…
そして二人は明らかに期待をした目で僕の方を見つめました
何故なら僕の名前は、「大神」だったからです
僕自信ドキドキしながら鳥居をくぐりました
しかし僕がくぐり終わった後、鳥居が少し考えているような間がありました
少し不安になりましたが、すぐに僕の名前も変わりました
「大宇宙神」です
あまりにカッコイイ名前に僕らは興奮しました、その後みんなで羨ましがったり、からかったりしあいながら凄く楽しみました
しばらくして5時に近づいてきたので帰ることにしました
しかし、山を降りながらふと元小山くんの大山くんが
「でも大神くんの大宇宙神って名前、本当は無いやつだけど良いのかなぁ?」
と呟きました
すると元近藤くんの遠藤くんも
「確かに僕も気になってたんだ…」
と言いました
僕は不安になり
「イケないのかな…、もしダメだったらどうなるんだろ」
と聞きました
そこで遠藤くんが
「逮捕されるかもしれないよ…」
と言いました
学校では成績一番で、博士とも呼ばれてる遠藤くんが言うので
僕の不安は急激に膨らみ、頭の中がその言葉で一杯になってしまいました
その後僕はうちに帰って、夜ご飯を食べてるときも
お風呂に入っているときも、うつ向いてばかりで
お父さんやお母さんに理由を聞かれても、素直に本当の事を話せませんでした
寝る時間になっても
「逮捕されるかもしれないよ…」
という遠藤くんの言葉が頭の中で繰り返し響き
布団に入っていつもは9時半には眠るのに、10時になっても、10時半になっても僕は眠れませんでした
その時です、玄関のチャイムが鳴るのが聞こえました
ドキッとした僕は部屋の外に耳をすまし、じっと様子をうかがいました
お母さんが玄関に向かいドアを開ける音がしました
そして、男の人の声でこう言うのが聞こえました
「警察です。あなたの息子さんを逮捕しに来ました」
「キャー、あなたー警察の人が、警察の人が…!!」
お母さんのパニックになった声を聞くやいなや
僕は部屋の窓から飛び出しました
何も考えずに、ただ逮捕される恐怖から
裸足のまま一目散に走り出しました
しかし警察の人たちが追ってきているのは直ぐにわかりました
遠くの方で警察が空に向かって放つ銃声が追いかけてきます
僕は泣きながらとにかく一心不乱に走り続け
気づくと昼間にみんなと遊んだ裏山をかき分け進んでいました
そして先ほどの鳥居の所にたどり着き、僕はほこらの裏に身を潜めました
何分も全速力で走り抜けてきたため、息を切らし
顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃでした
しかし警察の銃声はどんどんと近づいてきます
その時、あの鳥居とその看板が目には入りました
「正面からくぐった者は出世し、反対側からくぐった者はどうのこうの…」
そうか!僕は閃きました
上手く行くかはわかりませんが、そうこうしてる間にも警察の銃声はすぐそこまで近づいています
僕は祈る気持ちで鳥居を反対側からくぐりました…
銃声は止みました
しかし、鳥居の前に立ってるのは
大宇宙神くんでも、大神くんでもありませんでした
そう、大神くんは涙と鼻水にまみれた、あまりに惨めな状態で
出世門を逆からくぐったために
一気に、この世で最も程度の低い生き物
「大しゃくれ毒ヒトモドキ」になってしまったのです
どれくらい最低かと言うと、唯一の自慢が「ケツの穴が腐ってる」という事くらい最低です
見てくれは概ねヒトのがわたをしてますが
手足が長く、腰が曲がっていて
色は一番病気な緑色をしています
常に様子がおかしいです
もちろんアゴは尋常じゃないくらいしゃくれています
大しゃくれ毒ヒトモドキは、「アカン、寸法が合わん…
左官屋さんもう来てまうのに
もう、これまた若いやつの仕事やな…」
と、焦点の合わない目でアタフタしながら呟いています
そして大しゃくれ毒ヒトモドキは
全速力で走ったので疲れて眠たくなっていたのですが
自分が眠たいことに急に気づいてビックリして
後ろに倒れて鳥居に頭を打ちかけました
何とか頭は打たずに済みました
でも血は出ました
あまりにたくさん血が出たのでビックリして頭を打って死にました
その後、「あぁ、芝が痒い芝が痒い」
と言いながら地面をひとしきり掻きむしった後
雑草をスパゲッティと勘違いして食べて回り
大しゃくれ毒ヒトモドキは夜の闇に消えたとさ
おしまい




