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「よせよ」
ゼダは、泣き崩れることも許されない親友を抱きしめた。
「お前は、あの戦争でたった一人になってしまった俺を引き取って、居場所をくれ、仕事をくれ、生きる望みを与えてくれた。今やっと、その恩返しができるんだ。こんな嬉しいことはないし、俺は俺の人生に満足してるよ」
ジーンは、何も言えない。その肩を、ぽんぽんとあやすように、ゼダは叩いた。
「お前が泣くの、初めて見た。それだけでも俺は……」
その時だった。
強烈な光が、オペレーションルームを包んだ。
「なんだ?!」
すべてのパネルが赤く点滅し、耳に突き刺さるけたたましいビープ音がオペレーションルーム内に響く。
「落ち着け。何が起こった?」
タレードの叱責に、ザールが戸惑いながら叫ぶ。
「あ、あの……ダークマターが…………ダークマターが、消滅しました!」
「なぜ……」
顔をあげたジーンは、モニターを見て、気づいた。
まさか。
映し出されたモニターには、おだやかな星空が広がっていた。どのモニターにも、今まで中央を占めていた黒い闇は映っていない。
だが、みんな気づいてしまった。
モニターに映っているのが星だけだということを。表示座標を固定したままのパネルには、ダークマターはおろか、なんの光点もしめされていないことを。
「なんてことを……」
顔色をなくしたゼダが、呻いた。
なぜ最後の闇が消滅したのか、誰もが口に出さなくてもわかってしまったのだ。
あのダークマターを発見してから、すべての研究員が、このモニターからその姿のなくなる日を心待ちにしていた。なのに、今、それを心から喜べるものは、この場にはただの一人もいなかった。
「……ポーラムへの影響は」
沈黙を破ったのは、感情のないジーンの声だった。その声を聞いて、茫然としていた研究員たちが我に返る。各々やかましくビープ音を鳴らすパネルを乱暴に叩きながら、星の状態を確認し始めた。
「エリア内、問題ありません」
「シールド、かなり損傷が激しいようです。カラにも、多少の影響があった模様……」
「よし。確認を急げ。総員、至急、各エリアに配置した装置の撤収と……」
「ちょ……待てよ!」
ディルがチェアを降ろしてジーンの近くへ走る。
「あいつらのこと……」
「私たちの目的はなんだ」
振り向きもせずに、感情のこもらない声でジーンは言った。
「けど……」
「まずは、ポーラムの確認だ。この星を守ることが、私たちの目的だったはずだぞ」
「じゃあティナたちはどうでもいいって……」
「ディル」
ゼダが、その肩をひいた。振り向いたディルに、ゼダはジーンと同じように感情のこもらない静かな声で言った。
「お前は、オペレーションマスターだろう? この場を収める、義務がある」
それはディルにもわかっている。この爆発は、さすがに国民の中にも気づいたものがあるだろう。それをどう収めるかも、すべてオペレーションマスターとしてのディルがやらなければならないことだ。だが、頭でそれをわかっていても、体がついていかない。茫然としたまま、ディルは動けない。
「でも……それじゃ……」
「ジーン様!」