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星空の船  作者: 和泉 利依
第六章
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- 9 -

 二人が乗っているのは、もともとは大型の貨物宇宙船だったが、今回の計画に使用するにあたってエネルギーを搭載するためにかなり改造されていた。そのため大型にしてはキャビンが狭くなってしまったのだ。体を固定するシートも、一つしか作られていない。押し問答の末、結局シートには莉奈が座ることになった。


 拓巳がシートの後ろから指をすべらせると、目には見えないシールドを抜けて銀色の細い棒が延びる。その先には、ほのかに青く光るカテラルムライトが見えた。

「スタンバイ。チャージ100パーセント、オールライト」

「目標確認。ロック、オン、と」

 二人の視線が真っ黒な影へと向かう。ランプが、イエローからグリーンへと変わった。

「オール、グリーン。準備完了」

 息を飲んで、一瞬。

「発射!!」

 まばゆい光が、細い棒の先端から一直線に暗闇の真ん中へと突き刺さった。

 その光が暗闇へと飲み込まれて、消える。

 静寂が訪れた。


「……どうなった?」

 拓巳が身を乗り出した瞬間、見えない風が二人の乗った船に向かって吹きつけ、星を飛び立つ時でさえ静かだった船が激しくゆれる。

「うわっ!」

「拓巳!」


 いくつかのランプが赤く点滅を始めた。シールドを張ってなかったら、とっくに宇宙のチリの仲間入りだったことだろう。油断していた拓巳は、背中をしたたかにキャビンの壁へとぶつけてしまった。

「あたた……。大丈夫だ。それより」

 拓巳は、いそいで起き上がってモニターに向かう。


 爆発のショックなのか、ぶわりと一度大きく広がった暗闇が、しぼむように勢いよく中心へと向かって縮小した。その端の方が、まるで蒸発するように拡散している。ほぼ半分くらいの大きさになって縮小をやめたそれは、先ほどより激しく収縮を繰り返していた。

 

 それを見て拓巳は、つめていた息を少しだけ吐き出した。

「いい感じじゃん。もう一度で、いけそうだな」

「今ので船が飛ばされたわ。スタンバイしなおしよ」

 うるさく明滅するパネルを操作して、莉奈はいそいで船を先ほどの位置まで戻す。目まぐるしく乱れている数値は、壊れかけている船がそれでも懸命に自動修復を始めていることを示していた。

「これで、戻ったかな?」

「ちょっと待てよ……」

 拓巳が腕を伸ばして、微調整をする。細い棒の先のカテラルムライトが、再びほんのりと光を帯びた。

「よし。いいぞ」


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