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「それじゃ、今日も盛り上がっていこう! 乾杯!」

 GW恒例の春会だ。

 新入生も数人いて、また人数増えたな、これ。

 和人は今回も七海を連れての参戦だ。

 当然のように司も愛と共に、恵美も沙紀も参加している。

 寺岡兄妹は家の事情で不参加だそうだ。残念……。

 さすがに田上の姿は無いけれど、二次会には合流するらしい。


「楽しまなきゃ、ね♪」

 和人は七海の言葉に頷いて、グラスを干す。

「ほほう。んじゃ、お姉さんが惚気話を聞いてあげようじゃないの」

 隣に来た沙紀の声だ。

「井上……いちいち茶化しに来るんじゃない」

「ウッチー冷たーい。何でそんなにクールかなぁ?」

「照れ隠しですよ。先輩」

「あれ、そうなの?」

 横からの七海の口出しに、沙紀の目がキラリと輝く。

「余計なこと言うんじゃない。ったく……」

「あはは。そんなウッチー、貴重かも!」

 相変わらずテンションの高いヤツだなぁ。

 まぁ、これはこれでいつも通り、かな。



 いたっていつも通りのペースで、春会は進んだ。

 七海も何気に飲める口で、そこそこに杯を重ねていた。

 多分、二次会はカラオケだろう。

 ペース上げすぎると、後がキツクなる、か。

「七海」

「うん。大丈夫」

 自然と、お互いの言いたいことが分かる。

 空白の期間はあっても、そこに至るまでの時間は短かった。

「連れ添った夫婦みたいだな」なんて言われた事もあるけれど。

 最高の褒め言葉として、受け取らせて頂こう。

 個人的には、司と愛さんの方がお似合いの言葉、だと思うんだけどね。


 柳のところは、どうなっているのやら。

「一年前のキミ達みたいよ」と愛さんが言っていたが。

 まぁあの二人なら、変なことにはならないだろう。

 焦る必要も無いと、考えているのかもしれない。




「あー今日も楽しかったー!」

 カラオケを終え、満ち足りた声を上げたのは沙紀だ。

 井上の奴、歌声に磨きがかかった気がする。


「んじゃ、私達は先帰るねー!」

 そう言って沙紀は歩き出す。

 片手に、谷島太一の手首を引っ張りながら。

 その姿を皆、呆然と見送っていた。


「なぁ、愛さん」

 和人は思わず愛の顔を見る。

 愛は何も言わず、肩を竦めただけだった。

「ま、何かあれば連絡くるでしょ」

 柳の言うとおり、別にトラブルでは無いし、問題は無いだろうけど。


 見渡せば、残っているのは六人だけだった。

 司は愛さんの所に泊まるのだろう。

 柳は……と思い田上に目をやると、彼は指でキーを回していた。

「僕は車なんで、乗せていきますよ」

 田上はそう言って、すっと恵美の背中に手を回す。

 恵美はいつも通りの微笑みを浮かべたままだ。

 そういえば、田上はいつの間にか馴染んでるなぁ。


「んじゃ、俺らも帰るか?」

「そうね」

 司は愛の手を握ろうとしたのか、手を伸ばしたが、それを愛がピシャリと叩く。

 一回くらい、デレてるところを見たいものだが。

 代償に何を握られるか分からないので、そんなことは言えないけれど。


「帰ろ? 和くん」

「そうだな。んじゃ、またな」


 それぞれがそれぞれに手を振って、ひと時の別れを告げた。


 皆それぞれ、形は違う。

 それぞれに光り輝いている。

 でも今は、まだ小さな欠片。

 現実と戦う、少し前。

 それが短い時間だということは、それぞれに分かっている。

 だからこそ皆、傍に居る人と繋がっていたいんだ。



「明日、行くんでしょ?」

「ああ。早めに出ないとな」

 明日から、七海の実家に行く予定になっている。

「リアクションが楽しみのような、不安のような……」

「あはは。大丈夫だよ。心配いらないって」

 和人の微かな不安を、七海は笑顔で吹き飛ばす。

「もし文句言われたら、私が家を出るからさ」


 ……ん?


「……どこまで話を飛躍させるつもりだ?」

 和人の言葉に、七海は軽く肩を竦めた。

「気が早いな。そんな意味の挨拶をするつもりはないぞ?」

「分かってるよ。今はまだ、ね?」

 七海は言葉と同時に和人の腕にしがみつく。

 そして腕を組んだまま歩き出し、ゆっくりと和人の顔を見上げた。


「離すつもりないもん」


 そんな甘えの入った七海のセリフに、和人は微笑みで応える。

 俺だって、そんなつもりは無いさ。


 腕に感触を感じながら歩いていく。

 


 ほどなく、七海の住むアパートが見える。

 部屋に入るなり、和人は七海を抱き締めた。

 七海はちょっと驚いたようだったが、すぐに腕を回してきた。


「……ありがと」


 一言囁いて、軽く唇を重ねる。

 そんな様子を、机の上の二つの小さなクマのぬいぐるみが見守っていた。



          ~Fin~

本編完結です。

本編に入らなかった部分を番外編として掲載しています。


ここまで読んでくださった皆様に、厚く御礼申し上げます。

ありがとうございました。

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