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45 サプライズ・クリスマスパーティー

 学園祭の後は、レポートだ何だと、バタバタした日が多かった。

 遊びたい気持ちはあれど、そこそこに勉強もしなくちゃならない。


 そんな感じで物事に追われると、時間なんてあっという間に過ぎていく。

 気が付けば、街はクリスマスムード一色になっていた。

 それは、イベントが近づいているという証でもある。


 そんなワケで、今日は天皇誕生日、なんだけど。


「メリークリスマース!」

 誰かの元気のいい掛け声で、グラスを掲げる。

 毎年恒例のクリスマスパーティーだ。

 高校の同期の叔父が経営するカフェバーを借り切っての、どんちゃん騒ぎ。

 メンバーも高校時代の同期が中心であり、一部先輩後輩もいる。

 大学にもほど近いので、時々お世話になってる店だけど。

 いや、ほんとオーナーの叔父さんがノリのいい人で、ね。

 去年はプチ同窓会の様相を呈していたが、今年はそれぞれの大学関係の友人も多数参加している。

 基本、立食スタイルだ。ま、席も用意されているけど。

 司も姫と一緒に飲んでるし、柳は高校の同期と話してる。

 井上は……なんか、侍らせてますね……。

 見なかった事にしようか。うん。


「七海、一杯だけにしとけよ?」

「うん。分かってる」

 七海を連れてこういう集まりに出るのは、初めてだった。

 リアクションは想定内でしたけどね?

 ただ、過去を知る奴らが、先輩と比較しようとするのが……いただけない。

 まぁ、そこは軽くスルーさせて頂きますけども。

 ……多分、後で七海から詰問タイムを受ける事になるだろう。

 それくらいは覚悟してますよ。ええ。

「和くん、何か持ってくる?」

「ん? 適当によろしく」

「うん。行ってくるね」

 端の方の席に座り、食べ物を取りに行った七海の後姿を見送る。


 そういえば今回は特別ゲストが来るとか、言ってたな。

 これを企画してる同期とはあまり親しくしてないので、情報が回ってきていない。

 誰か、先生だったりして……。

 ま、それはそれでいいんだけど。


「おまたせー」

 お皿の上に、これでもか、と食べ物を載せた七海が戻ってくる。

 ちょっと、多くないですか?

 と、思っていたら、七海の後ろに恵美の姿も見える。

 ま、皆で食べれば無くなる、か。



「お待たせしました。さぁ、ここで本日のゲストの登場です!」

 最初の音頭を取ったのと同じ人物が、マイクを握っている。

 あれ、誰だっけ……? 名前が思い出せない。

「かの、○×年度文化祭! それを取り仕切った、執行部の面々が、いらっしゃって下さいました!」


 ……は?


 和人は、手にローストチキンを持ったまま硬直した。

 ええ、もう見事に。

 テーブルの反対側で、恵美も大きく目を見開いている。

 七海はきょとんとした顔で、二人を交互に見ている。

 いや、聞いてないし、マジで。


「当時の役職でお呼びいたします! 斉藤生徒会長、白石、名取両副会長、植草書記の四名です!」

 万雷の拍手で迎えられる、四名の先輩方。

「残念ながら、早川会計は、どうしても日程が合わず、お出でになることが出来ません。皆様に宜しくと、伝言を預かっております」

 いや、そんなことはどうでもいいんだけど。

 すいません、早川先輩……。


 まさか、ここで瑞穂に会う事になるとは……。

 何の覚悟も出来て無いというのに。

 瑞穂との事は、七海にはまだ詳しくは話していない。

 司や柳とやってきた事は話したけれど、文化祭云々とかの話は割愛していた。

 何となく、その話をするのを避けていた。

 あの時の感情を考えてしまうから……。


「では、懐かしい当時の思い出を振り返りながら、時間の許す限りご歓談下さい」


 今年の下半期、何かがおかしくないか……?



「どうするんだ?」

 アナウンスを聞いて戻ってきた司と愛。

「いや、どうするって言われても、ねぇ……」

 和人は思わず恵美の顔を見るが、恵美も処置無し、といった表情で首を横に振る。

 諸先輩方は、入り口近くの方で囲まれている。

 集まった面子の中に、実行委員で共に働いた人が何人もいる。

 そうでなくても、あの先輩方はあちこちに顔を出していたから知っている人は多いだろう。

 すぐにこっちに来るってことは無いと思うけど……。

「皆知ってるぜ? お前と柳が、あの時の中枢にいた事」

「分かってる。ここでじっとしてても、そのうちお呼びがかかるだろうよ」

 事実、さっきからちらちらと視線を感じるし。

「ねぇ、いっそ、先んじて出て行った方が良くない?」

「そうかもね。連れ出されて注目浴びるよりは、マシかも?」

 恵美の言葉に、愛も同意を示す。

「はぁ……仕方ない、か」

 和人は諦めて大きく一つため息を吐き、席を立つ。

 そっと司と愛に目配せをする。

 七海を頼む、と。

 それに愛が軽く肩を竦めて応える。

 期待は出来ない、かもな……。

「七海、行ってくるよ」

 いまひとつ状況を把握出来ていない七海に声をかけ、恵美と共に中央へと向かう。


 鬼が出るか、蛇が出るか……。

 予想外の瑞穂との接触に、和人は複雑な思いだ。

 でも、チャンスを貰ったのかもしれない。


 あの人に言わなければいけない言葉が、残っているのだから。

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