33 想定外?
当初の目的の、ホームセンターへと向かう。
「どのくらいのを買うんだ?」
七海の話を聞きながら、合いそうな棚を探す。
あまり大きいのでも、後々大変になりそうだし。
結局、メタルラックを上手く組み立てる、という結論に達し、必要なものを会計をして車に積み込む。
「一人で組み立てられる?」
「え? 手伝ってくれないの?」
ですよねー。
「でも、上がっていいの?」
「うん? 別に大丈夫だよ?」
いちおう確認を取るが、七海はさらりと笑顔で言ってくれる。
いや、全面的に信頼されてる、ってことなんだろうけど。
一度アパートの前で荷物を降ろし、部屋へと運び入れた後、車をいつもの駐車場に入れ徒歩でアパートへ戻る
「お邪魔します」
七海の部屋へと、足を踏み入れる。
1K八畳といったところの部屋は、水色のカーテンが印象的なものの、取り立てて変わった所は無い。
いや、女の子の部屋なんて入ったこと無いんですけどね?
机の上の片隅に、以前取ったクマのぬいぐるみが置いてある。
その隣に透明な袋に入れられた、別の小さなクマのぬいぐるみが置かれていた。
あれ? どっかで……。
「それで、この辺に置こうと思うんだけど」
七海の言葉で我に返り、返事を返す。
ま、いいか。
「んじゃ、組み立てるから、その辺り整理しといてね?」
「うん。分かった」
手分けして作業に入る。
七海とこうやって作業をしているなんて、なんか不思議だ。
「終わったー!」
部屋の整理が終わったのは、時計の針が六時を指そうとする少し前だった。
「ありがとー。一人じゃとても終わらなかったよ」
「いや、俺、片付けじゃ役になってないし」
実際、組み立てた後の片付けは、使う本人じゃないと分からなくなる、ということで、和人は単に言われた物を差し出してるだけだった。
「でも、色々アドバイスしてくれたじゃん。それのおかげだよ」
いやいや、そんな事ないと思うけど。
「ま、片付いて良かった。夕飯、どっか食べに行こうか?」
どこかで食べて、ゆっくりと話をしよう。
和人はそう思っていた。
だが、その予定は脆くも崩れ去る。
「うーん。今日は、私が作るよ!」
はい?
「作るって、夕飯?」
「うん! 何がいい?」
いや、何がいいって聞かれても。
それは全くの想定外ですよ?
「何が……て、なぁ。んじゃ、お任せで」
「ええー?」
「だって、ある物で出来る物、限られてるでしょ?」
「確かにそうだけど……じゃ、買い物行こ?」
え? そうなるの?
「スーパー、すぐ近くだから、行こ?」
七海の勢いに押され、買い物に行く事になる。
なんか、七海のペースに乗せられてる気がする……。
スーパーから帰ってくると、七海はすぐに料理に取り掛かった。
こうなると、やること無いですね、はい。
出来合いのポテトサラダを、器に移しただけです。
キッチンからは、小気味いいリズムが聞こえてくるけれど。
料理の邪魔は出来ませんね。
和人は手持ち無沙汰のまま、テレビを眺めてるしかなかった。
「さ、出来たよー」
思ったよりも早く出来たようで。
メインは、スーパーで安かった鶏もも肉のソテー。トマトジュースを使って煮込むというテクニックを使ったそうですよ?
「そんなに手間はかかってないんだよ?」
いや、料理スキルが全くない自分にしてみれば、どの辺が手間かかってないのかも、分かりませんわ。
「いただきます」
七海の視線が気になるなか、口に運ぶ。
「うん。美味しい」
「よかったぁ」
文字通り、ほっと胸を撫で下ろす七海。
いや、本当に美味しいんだけどね。
やばい。本題を忘れかけている自分がいる。
でも、嬉しそうに食べてるし、今は切り出すタイミングじゃないよなぁ。
予想もしない展開に、タイミングが全く掴めないという事実。
和人の胸中は、複雑だった。
「ごちそうさまでした」
うん。満足満足。
「片付け、しちゃうね?」
「あぁ、洗い物、俺やるよ?」
「え? いいのに」
「それくらいは、やらせてくれ」
「ふふ。分かったよ。んじゃ私は紅茶、淹れとくね?」
何ですと?
この上に、ティータイムまで付ける気ですか?
いや、チャンスかもしれない。
誰に聞かれることもなく、話が出来るのだから。
洗い物をしながら、ふぅっと大きく息をつく。
さ、仕切り直していこう。
俺にとっては、ここからが今日の本番なのだから。
最後のお皿を洗い終わり、手を拭くと、もう一度深呼吸をする。
よし、行こう。
いざ、決戦の時へ。




