25 大宴会
二十畳ほどの和室に、料理が並べられていた。
さすがは老舗、と唸りたくなるラインナップ。
イチオシは山菜の天ぷらと、しゃぶしゃぶだ。
「さって、音頭は誰が?」
太一の言葉。
ん、視線の集中、俺が多くないか?
ならば先手をば。
「企画の発起人、井上さん、お願いします」
「え? 私? ……もう、仕方ないなぁ」
本人、満更でもないじゃん。
「グラス持った? じゃ……まずは、こんな素晴らしい宿を取ってくれた愛に、感謝の言葉を!」
「ありがとうございます!」
全員の唱和。
タイミングは完璧ですよ?
「それじゃ、今日も盛り上がっていこう! 乾杯!」
「乾杯!」
何度でも言おう。この一杯がカクベツなんだぜ。
「ほんと、美味しいね」
口々に味の評価が出るが、コメントがほぼ一色だ。
当分、こんな老舗旅館の味を知る機会なんて無いと思うし。
用意されてる飲み物は、ビールと焼酎に、ウーロン茶などソフトドリンク、さらにはノンアルコールカクテルまでと、至れり尽くせりですよ。
さらにとどめは銘酒・柊。
口当たり、軽くて飲みやすいけれど、芳醇な香りが漂う。
いや、マジで旨いわ。これ。
「ウッチー! 味見だけでもー!」
「あーあー。分かったから、ほら?」
グラスに注いで渡す。
結局、回し飲み状態ですけどね。
あ、ちなみに司は日本酒ダメなのよ。
本当に残念……。
満腹になるころには、座も乱れてくる。
普段あまり飲まない人まで飲むから、収拾つくかがちょっと不安なんだけどな。
「はーい。ここでウッチーの暴露ターイム!」
井上の声だ。
「今日こそ、先輩との話、聞かせてもらおうじゃない?」
ちょ、待て!
「意味ワカンナイんですけどー」
「まぁまぁ。減るもんじゃないしー」
いや、減りますよ?
主に、体力と精神力が。
だって、二箇所から微妙な視線、感じるんだもん。
「沙紀。あなただって、探られたくない腹、あるんでしょ?」
「う……。愛、言わないでぇ」
愛に泣きつく沙紀。
うーん……テンションおかしいですね。
ピッチが早すぎるんじゃないでしょうか。
「はいはい。もう言わないから、泣かないの」
もう愛さんの掌の上、だな。
その横で、恵美がグラスを入れ替えてる。
やっぱ、飲みすぎてんな? 井上の奴。
もう人に何か仕掛ける余裕なんて、無いだろ。あれじゃ。
「内田先輩、どうぞ?」
隣に移動してきた寺岡詩織が、和人のグラスを満たす。
「ありがと。この前もこんな感じだったなぁ」
「そういえば、そうでしたねー」
「もしかして、飲んでる?」
「あは。ちょっとだけ、ですけど」
目くじら立てるほどの事でもないんだけどね。
「ほどほどにしときなよ?」
「分かってますよ。井上先輩みたくならないようにします」
詩織はそう言うと舌を出した。
「でも内田先輩が、七海の幼馴染みだとは思いませんでしたー」
「うん? そうだね。俺もびっくりしたし」
忘れられないよ? あの瞬間は。
「ちょっと思い出話してましたよ。こんなだったーって」
え?
「へ、へぇ? どんな言われようされてたんだか?」
動揺を誤魔化すように、グラスを口に運ぶ。
「優しいお兄ちゃん、て感じだったかな」
「あはは。そうかな?」
出来れば、具体的な中身が聞きたかったけれども。
「先輩が気遣う人ってことは、分かりますけどね?」
ありがたいお言葉です。はい。
でも、それより話の中身が……。
「ウッチー、もう一杯だけ! お願い!」
そんなタイミングで、太一が土下座せんとばかりに頼み込んでくる。
まったく……仕方ないな。
「いいよ。瓶ごともってけ」
個人的には、十分堪能したしな。
残して置いても仕方ないし、ね。




