23 お約束?
ちょこちょこと土産物屋を覗きつつ、周辺散策に耽る。
温泉神社、なんてのもあるんだな。
周辺に宿泊施設はいくつもあるらしく、観光客の姿もちらほらと窺える。
うちらの様な、学生の団体さんはさすがに居ないか。
角を曲がると、ちょいとレトロな雰囲気漂うボウリング場を発見した。
「皆でやろうぜ!」
太一の言葉に、賛同の言葉が続く。
確かに、大学の近くには、ボウリング場が無いからな。
「和くん、得意?」
「いや、全然? 一年ぶりくらいだよ? やるの。七海は?」
「私もそれくらい、かな」
にこっと微笑む。
上機嫌だね。
いや、正直照れるんですけどね?
かくて始まったボウリング。
だいたい百前後のスコアが大半の中、ただ一人、二百の大台を叩き出した猛者がいた。
その名は、寺岡詩織。
「いえぃ!」
本人、笑顔でハイタッチしてます。
恐るべし……。
「詩織ちゃんに負けてられないでしょ? いつものやるよ?」
沙紀が声を上げる。
「井上杯争奪、ボウリング大会ー!」
ま、こういう場所くるといつもこうです。
この前は、ダーツだったかな?
「優勝者には、アタシとのアツイ一夜を……」
「いらん。いらん」
お約束です。はい。
「イランイランていうアロマ、あったよね?」
それ、気分を盛り上げるアロマだよね?
なんか、ツッコミいれるのも、めんどくさくなってきた。
いつも賞品はジュースなのだが、今日は違った。
地元銘酒・柊。
値段は知らない。女将さんが用意してくれているそうです。
「今日は、タッグマッチにしよう」
発起人の鶴の一声です。
組み合わせは、和人・司ペア、対、太一・宏ペア。
さっきまでのスコアを見れば、ほぼ互角だ。
「じゃ、始めますか!」
結果は、合計スコア、二百四十八、対、二百六。
和人・司ペアの勝利だ。
奇跡のターキーが勝因だな。
「うぅ……リア充組に負けたぁ」
なんか、恨み節が聞こえるんだけど。
ふと見渡すと、恵美と愛が離れた自販機の前で話をしている。
何故、あんな所で?
和人がそんな事を考えていると、再び背後から恨み節が聞こえてくる。
「ウッチー! せめて味見だけでも……。それくらいの幸せは分けてくれても……」
太一が背後からすがり付いてくる。
「あーあー、分かったから。てか、何故俺もリア充組?」
「ん? そりゃあ、あんな可愛らしい幼馴染みが居て、そうじゃないって言うのかよ」
あー、やっぱりバレてる?
「それ、誰から聞いた?」
「宏から。正確には、妹さん発、宏経由」
うん。想定内です。
「幼馴染みってだけで、何もないぞ? てか、暑いから離せ!」
肩を組む太一を引っぺがす。
「相変わらずねぇ。さ、そろそろ戻ろう?」
いつの間にか戻ってきた愛の言葉に、皆片付け始めた。




