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12 回想 クラスメイトの姿

 あの年も、暑い年だったね。

 新しい高校生活も、うまくスタート出来た。

 仲のいい友達も出来たし。

 あの頃、司君はこんなイジられキャラじゃなかったけど。

 そんな中、迎えた二学期早々。


 職員室で押し問答をすることになった。


「すまんが、内田に柳、実行委員の件、頼む」

「先生、それは本来、ホームルームで決めるべきでしょう?」

「それはそうなんだが、急遽出張が入ってなぁ……」

 それは、文化祭実行委員を巡ってだった。

 一・二年生は各クラスから二人ずつ、委員を選出する。

 三年生は、生徒会以外は希望者のみの受付だけど。

 それを、生徒会執行部が中心となり、各役割に割り振るのだ。

 当分、時間的にかなり拘束されることになる。

 基本的には、希望者を募るんだけど……。

 先生の落ち度、だね。

 拝み倒さんばかりの担任の姿勢に、恵美は半ば諦めていた。

「それは先生の事情ですよね? それに、選ばれたのが俺と柳さんである理由は何です?」

 和人は切り込むように質問をする。

 私と組むの、嫌なのかな?

 恵美は、漠然とそんな事を思いながら、やり取りを聞いていた。

 ま、確かに当時は親しくなかったんだけど。

「それはだな……」

 歯切れの悪い担任の言葉に、和人は収まらないようだ。

 状況を見かねたのか、学年主任の先生が間に入る。

「内田、もういいだろう? 先生も非を認めてるんだし」

「ですけど……」

 担任の権威、失墜してるよね。

「……分かりました。数々の失礼な物言い、申し訳ありませんでした」

 和人は丁寧に頭を下げる。

 恵美もつられて頭を下げた。

「うん。こちらこそ申し訳ないが、よろしく頼む」

 一礼し、職員室を後にする。



 何だかなぁ。

 恵美は和人の後ろを歩いていく。

 内田君て、あんな人だっけ?

 話したこと、あまり無いからなぁ。

 ふと、和人が恵美の方を振り返った。

「柳さん、ごめん。迷惑かけたね」

 和人は柳に対して頭を下げた。

「ううん、大丈夫。それより、内田君があんな事言うなんて、思わなかった」

「そう? 理不尽な物言いに、ムカついたんだよ。上からじゃなくて、ちゃんと頼んでくれればいいのに」

 あれ?

「内田君、嫌じゃないの?」

「ん? めんどくさい、とは思うけど。使える、って認めてもらったのは、悪い気しないよ? ただ……」

「ただ?」

「表立って色々やるのは苦手なんだ。裏方をやらせてもらおうかな?」

「そう……。まぁ、何はともあれ、よろしく」

「ああ。よろしく」

 それがウッチーとの、初めての会話らしい会話だった。



「――以上で、割り振り終了です。各セクションで打ち合わせをお願いします」

 後日、委員を集めた第一回全体委員会が行われ、恵美と和人が割り振られたのは、管理部のセクションだった。

 資料をめくって見ると、学校備品の貸し出し・管理だという。

 割り振られたメンバーは、二年生が二人に、一年生が六人。

 そのまま、初回ミーティングとなったのだが……。

 二年生の二人は、ウマが合う方じゃないらしく、一向に話は進まなかった。

 他のセクションは、もう動き始めてるのに。

 歯車の一部が動かなければ、全体に影響を与える。

 出来る用意はしておきたい、性分なんだけどなぁ。

 だが、一年という立場上、先輩には口を挟みづらかった。


「んじゃ、多数決で決めようぜ?」

 男の先輩が言い始めた。

 たく、バカじゃないの?

 そう思ったとき、隣の和人が口を挟んだ。

「先輩、失礼ですが、多数決には反対です。結果がどうあれ、少なからずしこりが残ります。そんな状態で、チームプレイは出来ませんよ」

 ごもっともだ。

 恵美は座ったまま、頷いた。

「んじゃ、どうするんだよ?」

「一年の俺たちに、決定権はありません。生徒会執行部に判断していただきましょう。お二人、どちらがいいのか」

 なるほど。その手があったか。

 それなら、一年の私たちに影響は出ない。

 内田君、やるなぁ。

「じゃ、それでいいな。生徒会室行くぞ」

 男性先輩を先頭に、生徒会室へ向かう。



 生徒会室に残っていたのは、会計の阿部先輩だけだった。

 和人が阿部先輩に事情を告げる。

「分かった。まずは双方の言い分を聞こうか?」

 阿部先輩は、メタルフレーム越しに、鋭い眼光をくれる。

 後から聞いたところ、阿部先輩はウッチーの中学の先輩だったそうで。

 どうりで、話が早いと思ったよ。


「それは、白石君の方が正しい。きちんと割り振らないと、持て余す事になるよ」

「しかし……」

 なおも食い下がる男性先輩を、阿部先輩が一喝した。

「生徒会執行部として、文化祭実行委員会管理部は、白石君を長とする。これは決定事項だ」

 わぁ、強権発動したよ。

「君は実行委員から離れていい。先生方には生徒会から言っておく。他、何かあるか?」

 男性先輩は、恵美達を一瞥すると、生徒会室から出て行った。

「阿部先輩。ありがとうございました」

 和人が頭を下げ、皆がそれに続く。

「何、間々あることだ。初日に出ただけマシかもしれないよ? 僕が委員の時は、一週間経ってから揉めたからね」

 えぇ? それはさすがに嫌だ。

「ま、委員には内申書的にプラス付くから、結構いるんだよ。それより……」

 阿部先輩がメンバーを見渡す。

「一人減っちゃったからね。誰か捕まえないと、苦しくなると思うよ?」

 確かに、仕事量が重くなるよね。

「さて、改めて白石君? 挨拶を」

 阿部先輩に促され、白石先輩が一歩前に出る。

「二―Aの白石瑞穂です。文化祭を成功させるため、皆で頑張りましょう!」

 これが白石瑞穂先輩との、後のウッチーの恋人との出会いだった。



「まずは、去年の資料と現在の備品の数をチェックしなくちゃならないね。阿部先輩が言うには、杜撰だった可能性がある、ということだけど」

「まずは、現状を把握しましょう。あまりにも誤差が多ければ、生徒会に相談して、補充するなり、訂正通知を出すなりしてもらいましょう」

 阿部先輩から、責任取れ、と言わんばかりにサポート役を言い付けられた和人が続ける。

「頻度の高そうな物から片付けましょう。とりあえず、今週中はこんな感じでお願いします。数がまとまったら、俺か白石先輩に上げてください」

 個別にチェックする備品や、予定を割り振っていく。

「こんなところね。今日はこれで解散にしましょ? 皆、お疲れ様でした」

 白石先輩の言葉に、皆が席を立つ。

 恵美はもう一度資料に目を通してから、と席で資料をめくっていた。

 本当に、多いなぁ。

 無事回るのか、不安が募る……。


 資料から目を上げると、和人と白石先輩が話しこんでいた。

「内田君?」

「柳さん、お疲れ」

 資料から目をあげ、そっと微笑んでる。

「これ、かなり量あるよね? 今週中に割り振ったの、あれだけで間に合う?」

「間に合わせる、しかないだろ。物によって数え易いのとか、差異が出てくるから……」

「その辺考えつつ、人数調整するしかないでしょうね? 私達は数字もまとめないとならないし」

 続けた白石先輩の言葉に、和人も頷いた。

 その目が力強かったことが、印象に残っている。

「私も集計、手伝います。内田君とはクラス一緒だし、サポート出来ますから」

「そう? じゃ、手伝ってもらおうかな? 私は生徒会とかとのやり取りもあるし。事務方サポート、お願いね?」

「はい!」

 白石先輩の笑顔に、恵美は元気に返事を返した。

 何かと便利だろう、とケータイの連絡先を交換し、初日のミーティングは終了となった。

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