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「泣くな」
男は流れる涙を親指ですくってくれた。
「…これから話す事はお前を余計に泣かせるかもしれない。だが、何も知らないよりはいいだろう」
そう言うと、男は側にあったソファーに座り、私が落ちつくのを待って、話始めた。
「…お前は刈谷グループを知っているか?」
「えぇ。大手ホテルを始め世界中に色々な事業を展開してる有名なグループだわ」
私の働いている会社も、刈谷グループのひとつだ。
「そうだ。そのグループをまとめているのが俺だ」
「え・・・」
「お前の父親が経営する会社は、破綻寸前だったんだ。お前の兄貴とは大学時代に一緒だった縁で、お前の兄貴と父親から頼まれ、グループの傘下に入れ融資をする事になった。しかし、こちらもただで融資するわけにはいかない。会社を立て直し、現在開発している物を完成させ少しでも我がグループの利益になるまで、おまえは人質として、この家に預けられたんだ」
「そんな・・・・。パパの会社がつぶれかけてたなんて・・・・。知らなかった。」
「お前がここにいなければいけない理由がわかったか?」
「・・・えぇ。知らなかったとはいえ、迷惑をかけてごめんなさい。会社を助けて下さってありがとうございます」
「・・・いや、いい。お前は憎くないのか?代わりに差し出されたんだぞ?」
私の返答が予想外だったのだろう。眉間にしわを寄せていた。
「そうですね。悲しくないと言ったら嘘になりますが、憎むとか恨もうとは思いません。私一人で社員やその家族が救われるならそっちの方がいいでしょう?貴方は違うんですか?」
「・・・わからないでもないが、お前は完全にとばっちりを受けただけだろう…。まぁ、お前がそれでいいならかまわない。表向きは一応、婚約者と言う事になっている。融資の代わりが小娘という訳にはいかないからな。しっかりと婚約者のフリをしてもらう」
初めて会ったのに、婚約者のフリなんて出来るのだろうか。
「…わかりました」
「それから、婚約者じゃないと他の奴にばれると色々まずい事になる。いくら此処が家とはいえ、会社の重要人物は自由に出入りをする。だから、寝室はもちろん、寝るときも一緒に寝てもらう」
「えぇ!寝るときもですか?つまり、同じベットという事…?」
「そうだ。安心しろ。わざわざお前に手を出すほど女に困ってはない」
それはそうだろうが、そういう問題でもない。
「…別々じゃ駄目なんですか?」
「駄目だ。夜は夜で俺に取り入ろうとする奴や情報を少しでも聞き出そうと女を送り込んでくる奴もいる。そういうのを追い払う為にも表向きは婚約者にしたんだ。・・・・出来ないなら融資は打ち切ろう」
「わ、わかりました!一緒のベットで構いません」
それを持ち出されたら逆らうことなど出来るはずがない。
「それから、俺のことは響也と呼べ」
「・・・響也・・さん・・・」
「そうだ。これから何かあるときには俺の秘書の野中に言え。あいつにはすべて伝えてある。後でここに来させよう。あと、お前の荷物が明日此処に届く。この部屋はお前の部屋だから好きにするといい。じゃぁ、俺はこれからまだ仕事が残ってるから社に戻る。今日はゆっくり休め」
響也はそういうと部屋を出て行った。
「・・・・はぁ・・・・・これからどうすればいいんだろう・・・・・」
こんにちは。
作者の睦月です(。・ω・)ノ゛
全くと言っていいほど素人の為、読みにくい部分の方が多いと思いますが、温かい目で見守ってくださいr(≧ω≦*)