罪餐
大罪を犯して、呪いを掛けられた。蠟の溶けない、歪な蠟燭の様に、年も見た目も変わらない、呪いだ。何なら、火色も赤では無い、謎の蠟燭に等しい存在に成った。
季節は、笑みを浮かべず、長い長い冬の目覚めが眼に見えていた。地面も空も鉛と銀と白の退屈な風景で、何処も愉しくない。
しかし、人間の栄枯盛衰が眼に見えて、餓え枯れていた。枯と衰しか視れないがな。無邪気な子供、あッと言う間に色白の若男か美女に成る。今が収穫時期だろう。
融けた雪の水溜りに反射する私の顔は、表さえ見れば、美しいのだろう。しかし、裏を知って仕舞えば、其れは醜悪な女に成って仕舞う。星の輝きの様に偽る月光の様で、表の美等、等に無く成って居た。
話し相手が居ても、気が付けば、墓が建って居る。何なら、苔生した粗悪な墓も在るし、墓石に刻まれる名前一つ一つには、何処か哀しみの馨りが漂っている。
しかし、其れでも、私は変わらない。
代わるのは時代と外の見た目で、私は磐の様に変わらない。
しかし、何時しか、其の石化に近しい、呪いを解呪してみたいと感じる様に成った。
丁度、三百年の年月が過ぎた頃の話だ。
私が呪いを受け、死ぬが出来なくったのは、もう曖昧な記憶で、何一つの手掛りも無い。完全に不可能な事に陥っていた。火も蝋も食も消えも溶けも腐りもしない状況が蜿蜒と続いているのだ。
其の時から、私は何かに成った。友も居なく、毎日、陽の下で何もせずに、立ち竦むだけの生活。
此処からは孤独の時代で在った。風が樹々を揺らし、黄金の小麦が刈られ、命が消える日々。自らは何もせずに、自然に身を委ねるに等しい行為に相応しい。
しかし、そんな在る日に、子供に声を旅人に声を掛けられた。
旅人はどうして、何時も此処で立って居るんですか?と話しかけていた。
私は退屈だからと、答えた。
そうすると、旅人は、じゃあ私と話しせんか?と誘ってくれた。
季節に、此処からの眺め。時には旅人の体験談を語り合いながら、時には、早朝、満天の星夜の中、彗星が流れる中、私と旅人は話し合った。
私の孤独と退屈は消えたと思ってしまった。
其れが間違いであった。
雪が降る中、君は死んでしまったね。
君と遭って、愉快な話をしたのが、昨日の様に感じるよ。
墓前に、一輪の花を添えて、私は何時もの場所に着く。
此処は君が初めて会った場所で在り、私のお気に入りの場所に成った。
今日も風が吹き、落ち葉が山みたいに溜まって、大畠からは、黄金の作物が視える。また何時か、君の様な旅人を待つよ。
時流れても、呪いを受けた、此の罪を餐べながら、待つよ。
今日も満天の星夜が、綺麗で、私はまだまだ、蝋燭が溶けそうには無い様だ。




