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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
俺たちがリバースクラウンだ

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24/60

1-7-2READY制作



「夏にやるぞ」


その言葉は、最初、冗談みたいに出た。


言ったのはwataだった。


応援の形を話した配信の翌日。

三人は、いつもの配信部屋ではなく、小さな制作部屋に集まっていた。


机の上には、ノートパソコン。

スマホ。

歌詞メモ。

水。

シェイカー。

コンビニの袋。

ペン。

昨日の配信で増えたギフトログのメモ。

そして、端の方に置かれた新川の名刺。


その名刺があるだけで、部屋の空気が少し変わる。


ただの制作部屋なのに、どこか会議室みたいになる。

ただの曲作りなのに、どこか現実が混ざる。


白い紙。

黒い文字。

電話番号。

メールアドレス。


「準備ができたら、連絡してください」


新川の声が、まだ三人の耳に残っていた。


その重さを少しでも軽くするみたいに、wataが言った。


「夏にやるぞ」


mcRCは、ペンを持ったまま顔を上げた。


「何を?」


「単独ライブ」


部屋が少し止まった。


EGUIが水を飲む手を止める。


「急やな」


wataは椅子の背もたれに体を預けた。


「でも、時期決めんと永遠に準備中になるやん」


mcRCは、すぐには返さなかった。


その言葉は軽かった。


でも、間違ってはいなかった。


単独ライブを目指す。

そのために曲を作る。

応援の形を話す。

ギフトも受け取る。

準備する。


全部、大事なことだ。


でも、期限がなければ、準備は永遠に準備のままになる。


「いつか」は便利だ。


怖いものを遠くに置ける。

足りないものを見ないで済む。

今はまだ、と言える。


でも、いつかは近づいてこない。


夏なら、近づいてくる。


カレンダーの中にある。

暑くなる。

朝の空気が変わる。

服が軽くなる。

街に祭りのポスターが貼られる。

海やプールやBBQの話が増える。

人が、外へ出たくなる。


そして、その季節までに仕上げる。


mcRCは、ホワイトボードを見た。


そこには昨日の配信後に書いた文字が残っていた。


応援って何だろう

一緒に続けるための力


その横に、まだ消していない文字。


単独ライブ

俺たちの場所を作る

READY


mcRCは、ゆっくり言った。


「夏か」


wataが頷く。


「夏」


EGUIが短く言う。


「いいんじゃないか」


wataが少し驚く。


「お、乗った」


「季節が見える」


EGUIは淡々と言った。


「準備の期限にもなる」


wataは、にやりと笑った。


「EGUI先生、今日も現実的」


「先生ちゃう」


mcRCはペンを持って、ホワイトボードの一番上に書いた。


単独ライブは夏


書いた瞬間、部屋の空気が変わった。


まだ会場は決まっていない。

日付も決まっていない。

新川に連絡もしていない。

チケットもない。

セトリもない。

足りないものばかり。


それでも、夏という言葉が立つだけで、目標は急に現実になる。


wataが、少し黙ってその文字を見た。


「……書くと怖いな」


mcRCは頷いた。


「怖い」


EGUIも言う。


「怖い」


wataは、少し笑った。


「最近、みんな怖がるな」


mcRCも笑う。


「怖がらん方が危ないやろ」


EGUIが頷いた。


「怖いから準備する」


その一言で、READYの意味が決まった。


ただの決意曲ではない。

ただの気合い曲でもない。

「やってやるぜ」だけでは足りない。


怖いから準備する。

足りないから磨く。

見せる日が来るから整える。

夏が来る前に、自分を仕上げる。


mcRCは、ホワイトボードにもう一つ書いた。


夏になる前に Ready, Ready


wataが反応する。


「それ、フックやな」


mcRCは頷いた。


「うん」


EGUIが、少しだけ目を細める。


「夏になる前に、か」


「夏に向けての曲やから」


wataはペンを取って、机の紙にすぐ書き始めた。


「Ready, Ready……」


口に出しながら、リズムを取る。


「まだ肌寒い朝でも上げる景気」


mcRCが笑う。


「景気?」


wataが顔を上げる。


「景気」


「天気じゃなくて?」


「天気は普通やろ。景気を上げる」


EGUIが短く言う。


「いい」


wataが得意げな顔をする。


「ほら」


mcRCは少し笑った。


たしかに、いい。


肌寒い朝。


まだ夏ではない。

でも、そこで気持ちを上げる。


身体も、心も、場も、単独ライブへ向けて仕上げていく。


「Ready, Ready, body and mind」


wataが続ける。


mcRCがすぐ頷いた。


「心と身体」


「そう」


wataはペンを回した。


「今回、筋トレだけでもだめやし、メンタルだけでもだめやん」


「身体も心も整える」


「で、夏」


EGUIが言う。


「遊ぶ準備」


wataがそっちを見る。


「お前がそれ言う?」


EGUIは平然としている。


「遊ぶにも体力いるやろ」


mcRCが少し笑う。


「それはそう」


wataが急に手を叩く。


「じゃあ一番、ジムや」


mcRCが反応する。


「ジム?」


「朝イチのジム」


「まだ街は静か」


「白い息」


「夏を待つ合図」


wataが、言葉をぽんぽん置いていく。


mcRCは、ペンを持ったまま黙った。


その景色が見えた。


まだ肌寒い朝。


街は静か。

コンビニの搬入トラックの音。

信号の青。

ジムの自動ドア。

少し眠い顔。

鏡の前の自分。

夏にはまだ遠いのに、もう準備している身体。


「それ、俺が書く」


mcRCが言うと、wataは笑った。


「Scene Maker、朝ジムへ」


EGUIが言う。


「現場監督、ジム監督」


mcRCが眉を寄せる。


「それは嫌やな」


wataはもう止まらない。


「今日の現場、ベンチプレスです」


「安全確認、ラックよし」


「重量よし」


「フォームよし」


EGUIが低く言う。


「腰、反りすぎるな」


wataが爆笑する。


「急にリアル」


mcRCも笑ってしまった。


でも、笑いながらも、内側ではすでにVerseの景色が組み上がり始めていた。


朝イチのジム。

まだ街は静か。

吐く息が白い。

夏を待つ合図。

鏡の前。

遊ぶために鍛える。


遊ぶために鍛える。


この言葉が、少し意外だった。


努力のために努力するのではない。

モテるためだけでもない。

見栄だけでもない。


遊びたいから準備する。

夏をちゃんと楽しみたいから鍛える。

その瞬間にバテないように、だらしなく終わらないように、今やる。


mcRCはメモに書いた。


遊ぶため鍛える、これ当然


wataが覗き込む。


「いい」


EGUIも頷く。


「いい」


mcRCは続けて書く。


タンクトップ。

肩。

シャツ。

鶏むね。

プロテイン。

discipline。

身体が名刺。


wataが「身体が名刺」で吹き出した。


「名刺好きやな、最近」


mcRCは新川の名刺をちらっと見る。


「影響受けてるかもしれん」


EGUIが言う。


「身体も名刺」


wataが自分の腕を見る。


「俺の名刺、まだ薄いな」


EGUIが即答する。


「鍛えろ」


「今日のEGUI、厳しめ」


「夏にやるんやろ」


wataは少し黙った。


それはそうだった。


夏にやる。


そう決めた瞬間、冗談みたいなことまで少し現実になる。


身体も。

声も。

表情も。

ステージでの立ち方も。


見られる準備が必要になる。


mcRCはVerseを書きながら言った。


「この曲、単独ライブの準備でもあるけど、リバクルー側の準備でもあるよな」


wataが顔を上げる。


「客席も?」


「うん」


「夏に来るってことは、来る側も準備するやん」


「予定空ける」


「体調整える」


「服選ぶ」


「誰か誘う」


「遠征する人もいるかもしれん」


「自分の生活を少し合わせてくれる」


EGUIが静かに頷いた。


「来る側にも準備がある」


mcRCは続けた。


「だから、俺らだけが“準備してます”じゃない」


「みんなで夏に向かっていく曲にしたい」


wataは少しだけ真面目な顔になった。


「それなら、二番は内側やな」


「身体だけじゃなくて」


「前に出る準備」


EGUIが言う。


「引っ込み思案」


wataは、少し驚いてEGUIを見た。


「今、俺のパートの核を取った?」


「取ってない」


「取ったやろ」


「思いついただけ」


wataはペンを持ったまま、少し黙った。


引っ込み思案。


自分で言うと、少し照れる言葉だ。


wataは普段、よく喋る。

茶化す。

韻を踏む。

軽くする。

場を動かす。


でも、それは最初からそうだったわけではない。


黙っていた時間もある。

前に出られなかった時もある。

「俺は大丈夫」と言って、実は誰かの後ろに隠れていた時もある。

目立ちたいのに、目立つのが怖い。

選ばれたいのに、選ばれる場所に出るのが怖い。


そういう矛盾を、wataは知っている。


「部屋の隅、閉めたカーテン、淡いブルー」


wataが呟く。


mcRCが黙ってメモする。


「引っ込み思案、いつも“I’m cool”ってふる」


EGUIが言う。


「ふる?」


wataが頷く。


「ふり、より音がいい」


「意味は?」


「かっこつけて平気なふり」


EGUIは少し考えて頷いた。


「分かる」


wataは、そのまま書き続ける。


毎年言っている「今年こそ変わる」。

でも変わらない。

磨く。

もがく。

誤魔化す。

黙るだけでは景色は変わらない。


mcRCは、その言葉の流れを聞きながら、少し胸が熱くなった。


wataのVerseは、音が気持ちいい。


でも、今回はそれだけじゃない。


内側の弱さを、音で前に出す。


「クローゼット開けて並べる白と黒」


wataが言う。


「無難の奥で燻ってた炎を灯そう」


EGUIが短く言った。


「いい」


wataは、少しだけ嬉しそうに笑った。


「今回のwata、かっこいいやろ」


EGUI。


「まだ」


「褒めろ」


「完成したら」


mcRCは笑いながら言った。


「でも、今のいい」


wataは少しだけ表情を緩めた。


「ありがと」


それから、また書く。


発声。

滑舌。

深呼吸。

walk。

スキンケア。

ヘアセット。

選ぶsneaker。

“どうせ無理”のノイズを切るフェーダー。


「フェーダーいいな」


mcRCが言った。


wataは頷く。


「音楽っぽいし、自分の中の雑音下げる感じ」


EGUIが言う。


「自分を消すんじゃなくて、ノイズを切る」


wataは少し笑った。


「お、解釈助かる」


そして、最後に書いた。


派手じゃなくていい。

でも消えたくもない。

夏の雑踏で、自分を失いたくない。


mcRCは、そのラインで少し黙った。


「それ、かなりいいな」


wataは肩をすくめる。


「自分で言うのもあれやけど、俺、けっこう分かるんよ」


「派手なやつになりたいわけじゃない」


「でも、消えたくもない」


EGUIが静かに言う。


「それが前に出る準備やな」


wataは頷いた。


「そう」


「今年こそ更新、自分の限界値を越えよう」


wataが書き終えて、ペンを置いた。


部屋に少しだけ静けさが落ちる。


一番が身体。

二番が内側。


じゃあ三番は。


三人の視線が、自然にEGUIへ向いた。


EGUIは、少し嫌そうな顔をした。


「なんや」


wataが言う。


「三番、君です」


「分かってる」


mcRCは確認するように言った。


「EGUIは、どうする?」


EGUIは水を飲んだ。


長くは考えなかった。


「下心」


wataが吹いた。


「急に!」


mcRCも目を開く。


「下心?」


EGUIは真顔で頷く。


「あるやろ」


wataは笑いながら机を叩いた。


「あるけど! READYの三番でいきなり下心?」


EGUIは揺れない。


「夏やろ」


「夏やけど」


「誰かと笑いたいやろ」


「それはそう」


「近づきたくもなるやろ」


「まあ、なる」


「なら下心も連れていけ」


wataは、しばらく固まってから、ゆっくり言った。


「お前、たまに天才みたいなこと言うな」


EGUIは返さない。


mcRCは、少しだけ考えた。


下心。


この言葉を、隠さずに出す。


それは少し危うい。


でも、リバクラらしいとも思った。


欲望を綺麗に消さない。

でも、雑に扱わない。

人を見下す形にしない。


モテたい。

近づきたい。

誰かと笑いたい。

既読がつかない夜もある。

空振りする。

滑る。

言いすぎて引かれる。

でも、何もせず終わるよりはずっといい。


これは、次のCALL ME OUTにもつながる。


でも今は、もっと広い。


夏に向かって、人に向かう準備だ。


EGUIは、ぽつりと書き始めた。


「正直言うとさ、下心はある」


wataがまた笑う。


「一行目から強い」


EGUIは続ける。


「誰かと笑いたい、近づきたくもなる」


mcRCは頷いた。


「いい。正直や」


「でも毎回うまくいくほど甘くない」


EGUIの声が少し低くなる。


「既読つかない夜もまあ、なくはない」


wataが胸を押さえる。


「やめろ、急に被弾した」


mcRCが笑う。


「あるんか」


「なくはない」


EGUIが横目で見る。


「歌詞と同じやな」


wataが苦笑する。


「やかましい」


そこから、EGUIのVerseは不思議なくらい素直に進んだ。


待ち合わせ前のコンビニのガラス。

映る自分に「今日は行け」と話す。

祭りの灯り。

海風。

汗ばんだTシャツ。

空振りも夏の一部。


カッコつけすぎて滑る。

言いすぎて引かれる。

でも、それも自分らしい。


完璧じゃなくていい。

失敗ごと笑えればいい。

夏は一瞬。

期待と下心ごと、全部連れて行く。


mcRCは、EGUIが書いていく文字を見ながら思った。


EGUIは、まっすぐだ。


でも、まっすぐというのは、綺麗なことだけを言うという意味ではない。


見栄も。

欲望も。

失敗も。

カッコ悪さも。


それを誤魔化さずに持ってくる。


だから刺さる。


wataが、Verseの最後を見て言った。


「期待と下心ごと、全部連れて行く」


「それ、めちゃくちゃEGUIやな」


EGUIは言う。


「下心だけ置いていったら嘘やろ」


mcRCは頷いた。


「うん」


「でも下心だけで行ったら雑になる」


EGUIも頷く。


「だから期待も連れていく」


wataは両手を上げた。


「正直すぎるStraight Type」


mcRCは笑った。


「でも、今回の曲に必要やな」


身体の準備。

心の準備。

人に向かう準備。


これで三人の景色が揃った。


あとは、Bridge。


mcRCは、ホワイトボードの真ん中に書いた。


誰かになるんじゃない


wataが続ける。


「今の自分を上げるだけ」


EGUIが言う。


「短いseason逃さない」


mcRCが書く。


「準備した分だけ飛べるぜ」


wataは少しだけ笑った。


「TAKE OFFともつながるな」


「うん」


mcRCは頷いた。


「READYは、TAKE OFFの前段階でもある」


「飛ぶために、準備する」


EGUIが言う。


「単独ライブも同じ」


その言葉で、また少し部屋が静かになる。


単独ライブは夏。


それは、まだリバクルーには言っていない。

新川にも連絡していない。

会場も決まっていない。


でも、曲の中ではもう始まっている。


夏になる前に、Ready, Ready。


この曲は、リバクラだけに向けた曲ではない。


自分たちにも。

リバクルーにも。

まだ来るか迷っている人にも。

夏が来る前に変わりたいと思っている人にも。


mcRCは、フックをもう一度読み上げた。


「夏になる前に Ready, Ready」


wataが小さくリズムを取る。


「まだ肌寒い朝でも上げる景気」


EGUIが低く合わせる。


「Ready, Ready, body and mind」


三人の声が、まだ音源のない部屋に重なる。


それだけで、少し曲になった。


wataが笑う。


「これ、明るいな」


mcRCも頷く。


「明るい」


EGUIが言う。


「でも軽くない」


「そこ大事」


wataは椅子を少し後ろに引いて、天井を見た。


「単独ライブの曲って言うと、もっと決意表明っぽくなりそうやけど」


「これは、生活っぽい」


「ジム行って、服選んで、声出して、恋して滑って、夏に向かう」


mcRCは頷いた。


「それがいい」


「俺らの単独ライブは、いきなり巨大な夢を叫ぶだけじゃなくて」


「生活から向かう場所にしたい」


EGUIが短く言う。


「来る人にも生活がある」


mcRCは頷いた。


「そう」


「だから、夏までに一緒に整える」


「俺らも準備する」


「来る人も、来られるように準備する」


「その合言葉がREADY」


wataがスマホを見ながら言った。


「これ配信で出したら、ジム行くリバクルー増えるぞ」


EGUIが言う。


「いいやろ」


wata。


「プロテインバー売る?」


mcRC。


「また物販おかしくなる」


EGUI。


「飯を売れ」


wata。


「ライブハウスで飯物販は難易度高い」


EGUI。


「おにぎり」


mcRCが笑い崩れそうになる。


「リバクラおにぎり?」


wataが乗る。


「READYおにぎり」


EGUI。


「鶏むね入り」


wataが顔をしかめる。


「売れるか?」


EGUIは真顔で言う。


「俺は買う」


mcRCは笑いながら、ペンを置いた。


こういうくだらない話も、曲の一部になる。


筋トレ。

飯。

夏。

恋。

失敗。

準備。

単独ライブ。


全部が、リバクラの温度で混ざる。


wataが、ふと真面目な顔になった。


「なあ」


「ん?」


「夏ってさ、短いよな」


mcRCは頷いた。


「短い」


EGUIも言う。


「すぐ終わる」


wataはスマホを置いた。


「だから、曲の最後に“短い季節に合わせろ My pace”って入れたい」


「焦れって意味じゃなくて」


「自分のペースでいい」


「でも、季節は待ってくれない」


mcRCは、その言葉に少しだけ胸を打たれた。


自分のペースでいい。


でも、季節は待ってくれない。


それは、単独ライブにも似ている。


無理に焦る必要はない。

でも、いつまでも準備だけしているわけにはいかない。


夏は来る。


その日までに、どこまで磨けるか。


mcRCは、ホワイトボードを見た。


単独ライブは夏。

READY。

body and mind。

遊ぶ準備こそ本気。

派手じゃなくていい、でも消えたくもない。

期待と下心ごと、全部連れて行く。


かなり見えてきた。


「これで行こう」


mcRCが言った。


wataが頷く。


「行ける」


EGUIも言う。


「行こう」


その瞬間、曲の骨が立った。


まだビートは仮。

まだ録りも仮。

細かいリズムの調整もある。

Hookの重ね方も決めなければならない。

Suno用のプロンプトも、あとで作る必要がある。


でも、歌詞の芯は決まった。


夏になる前に、Ready, Ready。


単独ライブは夏にやる。


まだ発表はできない。


でも、三人の中では、もう決まっていた。


wataが立ち上がり、軽く伸びをした。


「よし。俺、明日からジム行くわ」


mcRCが見る。


「ほんまに?」


「たぶん」


EGUIが言う。


「行かんやつの返事」


wataが振り向く。


「行くって!」


「たぶんって言った」


「じゃあ、行く!」


「何時」


「……夜」


EGUIが頷く。


「行けたら行くやつ」


mcRCが笑う。


「完全に信用ない」


wataは少しむっとした顔をした。


「いや、今回のREADYは俺にも刺さってるから」


「今年こそ更新、自分の限界値を越えよう、やぞ」


EGUIが言う。


「なら越えろ」


wataは黙った。


そして、小さく言った。


「……越えます」


mcRCはそのやり取りを見ながら、少しだけ嬉しくなった。


曲は、誰かに向けて作る。


でも、最初に刺さるのは自分たちでいい。


自分たちが動かない曲で、人は動かない。


READYは、まず三人を動かした。


mcRCは、机の上の名刺を見た。


新川へは、まだ連絡しない。


まだ早い。


でも、連絡する日が来る。


その時、ただ「やりたいです」と言うのではなく、


「準備してきました」と言えるように。


そのための一曲ができた。


外は、まだ少し寒かった。


窓の向こうの夜には、夏の気配なんてほとんどない。


それでも、三人の中では、もう夏が始まっていた。


見せるその日まで磨いていく。


心も身体も、ノリまで整える。


短い季節に合わせる。


自分たちのペースで。


でも、止まらずに。


mcRCは、最後に歌詞メモの上に大きく書いた。


READY


その文字の下に、小さく追記する。


単独ライブは夏にやる。


wataがそれを見て、少しだけ笑った。


「書いたな」


mcRCは頷いた。


「書いた」


EGUIが言う。


「ならやる」


その一言で、制作回は締まった。


派手な拍手もない。

歓声もない。

照明もない。

コメント欄もない。


あるのは、三人の声と、少し冷めた水と、歌詞メモと、一枚の名刺。


それでも十分だった。


ここから、夏までの準備が始まる。

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