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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
sound session編

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166/186

5-4-4 渡した光で



PRESSUREの余韻は、すぐには消えなかった。


二万五千人の会場に、重い拍手が広がっている。


RIVALの後の歓声は、火だった。


熱く、跳ねて、前へ飛ぶ声。


でも、PRESSUREの後の拍手は違った。


少し遅れてくる。

一度、胸の中に落ちてから手に変わる。

誰かが自分の仕事や、役割や、言葉の重さを思い出したような拍手だった。


「肩書きじゃない……」


「trust that we make、残るな」


「二曲目であれやるの、強い」


「RIVALで上げて、PRESSUREで重くして、次どうすんの?」


「もう一曲あるんだよな」


「ここで何来る?」


「重いまま終わるのか?」


「いや、リバクラなら最後に開くんじゃない?」


客席がざわつく。


三曲構成。


もう、観客はそれを意識していた。


一曲目で終わらない。

二曲目で終わらない。

三曲で、何を渡すか。


それを見ていた。


ステージの上で、mcRCは深く息を吸った。


wataは、片手で汗を拭っている。


EGUIは、まだ客席を見ていた。


BEEFは、DJブースで片耳のヘッドホンを少し押さえたまま、フェーダーに指を置いている。


PRESSUREの最後の低音が、まだ床に残っていた。


その低音を、BEEFはすぐには切らなかった。


少しだけ残す。


会場に、圧の名残を残す。


そして、その上に、薄い音を置いた。


コーヒーカップを置くような、小さな音。


硬かったビートの角が、少し丸くなる。


「え」


「変わった」


「急に温度出た」


「明るくなる?」


「いや、軽くはない」


「これ、三曲目で空気変える気だ」


BEEFが、PRESSUREの欠片を短く刻む。


「trust」


「trust」


「build」


「build」


それが少しずつ、別の言葉へ変わっていく。


「give」


「give」


「glow」


「glow」


大型スクリーンに、曲名が出た。


GIVE & GLOW


客席の反応が、一瞬遅れた。


RIVALほど、タイトルだけで爆発する曲ではない。


PRESSUREほど、重い言葉でもない。


でも、その少し遅れた間のあと、あちこちから声が上がった。


「GIVE & GLOW!」


「三曲目それか!」


「与えるやつ?」


「PRESSUREの後にGIVEは、流れあるな」


「肩書きじゃない、信頼を作る。そのあと与える?」


「奪い合いじゃないってことか」


「これ、リバクラっぽい」


BEEFが、音を押した。


今度は、重さではなく、弾み。


でも、明るすぎない。


温かい低音。

少し跳ねるクラップ。

夕方の街みたいなシンセ。


三人は中央に寄る。


ここで初めて、三人の顔が少しだけ柔らかくなった。


RIVALの時の「やるしかねえ」という強さ。


PRESSUREの時の「背負うしかない」という重さ。


その二つを通ったあとで、三曲目は少し違う顔だった。


奪うためじゃない。


勝ち取るためだけじゃない。


渡すために、ステージに立つ。


三人の声が重なる。


≫ Give and give and give, yeah

≫ 欲しがるより light it up

≫ Give and give and give, yeah

≫ 渡した分だけ glow it up


客席の一部が、少し肩を揺らした。


「いい入り」


「欲しがるよりlight it up」


「渡した分だけglow it up、分かりやすい」


「温度変わったな」


「でもちゃんとヒップホップ」


声は続く。


≫ No take, no fake, no price tag

≫ 心で返す love feedback

≫ Give and give and give, yeah

≫ 俺らから届ける love


「No take, no fake!」


「price tagないのいいな」


「love feedbackって言葉かわいい」


「かわいいけど、意味はちゃんとしてる」


「奪うとか欲しいとかじゃなく、返ってくるものの話か」


「三曲目で客席に渡しに来てる」


フックが入る。


BEEFのビートが、少しだけ明るく跳ねた。


三人の声が、押しつけではなく、手を差し出すように広がる。


≫ Give and glow, give and grow

≫ 欲しいだけじゃ満たせない soul

≫ Give and glow, give and grow

≫ 渡した光でまた上がろう


客席の反応が、前へ出る。


「Give and glow!」


「give and grow!」


「欲しいだけじゃ満たせない soul!」


「これ、フック強い」


「RIVAL、PRESSUREの後にこれ、かなり効く」


「欲しいだけじゃ満たせないって、今の会場にも言ってる感じする」


さらに続く。


≫ Give and give and give, no payback

≫ 見返り狙いならもう fake that

≫ Give and glow, give and grow

≫ 笑った顔で強くなろう


「no payback!」


「見返り狙いならfake!」


「笑った顔で強くなろう、いい」


「さっきまで怖かったのに、急に笑える場所に戻してきた」


「リバクラ、三曲目で温度出してきたな」


もう一段。


≫ Takeじゃなく give and live

≫ 奪うよりも満たす意味

≫ Give and glow, give and grow

≫ 俺らから君へ love we show


「Takeじゃなくgive and live!」


「奪うより満たす意味」


「これ、ただの恋愛じゃないな」


「人間関係全部に広い」


「客席まで巻き込んでる」


「ミラーライン相手に、奪うんじゃなく渡すって言うのか」


「それ強いな」


mcRCが前へ出る。


照明は、夕方のカフェのような色へ変わった。


オレンジと白。


ガラス越しの街。


疲れた顔。


誰かが誰かを欲しがる言葉。


その甘さの中にある、少しの重さ。


mcRCは、笑いすぎない。


甘くしすぎない。


ただ、景色を置く。


≫ 駅前のカフェ 夕方の light

≫ ガラス越しに揺れてる city side

≫ 隣の席で聞こえた「君が欲しい」

≫ 甘い言葉に見えて少し heavy


客席の空気が、すっと変わった。


「カフェだ」


「今度は夕方」


「“君が欲しい”を重いって見るのか」


「甘いけどheavy」


「これ、ラブソングに見えて違うやつだ」


mcRCは続ける。


≫ 「私、物じゃない」って笑う girl

≫ でも求められて嬉しい日もある

≫ 誰かの中で特別になる

≫ それだけで胸が少し温まる


前の方の女性客が、小さく頷いた。


「分かる」


隣の友人が聞く。


「分かる?」


「物じゃない。でも特別に思われるのは嬉しい時ある」


「難しいな」


「難しいんだよ」


別の席で、男性客が呟く。


「ここ、ちゃんと両方言うのいいな」


「求めること全部悪いって言ってない」


「でも、物扱いは違うってことか」


「そう」


mcRCの声は、少しだけ深くなる。


≫ でもさ、それって何を払う?

≫ 寂しさ埋めるために誰を使う?

≫ 欲しい欲しいで手を伸ばすより

≫ 「休んでいいよ」って席を空けたい


「うわ」


「席を空けたい」


「欲しいより休んでいいよ、か」


「これ、優しい」


「でも優しさの押しつけじゃない」


「席を空けるって、距離もあるんだな」


「入り口ある」


その言葉に、別の客が反応した。


「入り口?」


「うん。自分に来いじゃなくて、ここ空いてるよって感じ」


「それ、リバクラっぽい」


mcRCは、英語を柔らかく混ぜる。


≫ I don’t need to own you

≫ I just wanna hold your blue

≫ 疲れた顔に warm coffee

≫ その一口で戻る story


「own youじゃない!」


「hold your blue、いいな」


「疲れた顔にwarm coffee」


「これ、映像出る」


「カフェの景色で、関係性の話してる」


「欲しがるより、支える方」


mcRCは、最後を少し明るくした。


≫ 君をくれじゃなく 君にあげたい

≫ 笑える夜を一緒に増やしたい

≫ 求め合うより 支え合うほうが

≫ 街の灯りみたいにずっと綺麗だ


客席に、温かい拍手が起きた。


大爆発ではない。


でも、明らかに広がる拍手。


「君をくれじゃなく、君にあげたい」


「いい」


「それ、めっちゃいい」


「求め合うより支え合う」


「街の灯りみたいに、がmcRCだな」


「景色で締めるのうまい」


mcRCは、少しだけ身体を引いて、Pre-Hookへ入る。


≫ 欲しいって叫ぶより

≫ 癒すって言えるほうがいい

≫ 君の今日が少し軽くなるなら

≫ それが俺の give, my way


「癒すって言えるほうがいい」


「君の今日が少し軽くなるなら」


「これ、押しつけない愛だ」


「三曲目でこれ、めっちゃリバクラの温度出てる」


BEEFがフックへ戻す。


今度は、クラップが少し強くなる。


客席が、自然に手を叩き始めた。


まだ完全な一体感ではない。


でも、散らばった拍手が少しずつ揃っていく。


≫ Give and glow, give and grow

≫ 欲しいだけじゃ満たせない soul

≫ Give and glow, give and grow

≫ 渡した光でまた上がろう


「Give and glow!」


「give and grow!」


「渡した光で!」


客席が、少し返す。


初見でも言いやすい。


Give and glow。


短く、丸く、残る。


≫ Give and give and give, no payback

≫ 見返り狙いならもう fake that

≫ Give and glow, give and grow

≫ 笑った顔で強くなろう


「笑った顔で強くなろう!」


「これ、会場が明るくなる」


「でも軽くない」


「RIVALとPRESSURE通った後だから、余計に効く」


wataが前へ出る。


ここで、音が少し忙しくなる。


mcRCのカフェの温度から、wataは一気に線引きへ行く。


与える。


でも、尽くすことと奴隷になることは違う。


優しさには、線がいる。


wataの目が、少しだけ鋭くなった。


≫ Give it up でも give upじゃない

≫ 尽くすってことは奴隷じゃない

≫ 愛と依存の line を見ろ

≫ 優しさにもあるぞ control


客席から、すぐ反応が来た。


「Give it upでもgive upじゃない!」


「尽くすってことは奴隷じゃない!」


「急に境界線来た」


「wata、そこ行くのか」


「愛と依存のline!」


「優しさにもcontrolある、めっちゃ大事」


RIVALのwataは、理不尽を切った。


PRESSUREのwataは、信頼の構造を切った。


GIVE & GLOWのwataは、優しさの裏側を切る。


優しいだけでは危ない。


与えるだけでは壊れる。


そこを、音で軽くしながら、意味は軽くしない。


≫ レジ前 pay, tray 置く table

≫ 「奢るよ」だけじゃ浅い label

≫ 疲れた君に hot meal

≫ その笑顔だけで俺は full deal


「奢るよだけじゃ浅いlabel!」


「hot meal!」


「笑顔だけでfull deal」


「ここかわいいのに、ちゃんと意味ある」


「金出せばいいって話じゃないんだな」


「相手の疲れを見てるかどうか」


wataは、ここで急に甘さを切る。


≫ でもご馳走ばっかじゃ過剰摂取

≫ 甘やかしすぎりゃ心も肥える

≫ 「ありがとう」すら出ないなら danger

≫ 優しさ食い荒らす stranger


客席が笑いと納得で揺れた。


「心も肥える!」


「言い方!」


「でも分かる!」


「ありがとうすら出ないならdanger」


「優しさ食い荒らすstranger、強っ」


「wata、優しさにも容赦ない」


「これ大事だろ」


「与える側も守らないと壊れる」


BEEFが、ここで軽くスクラッチを入れる。


「danger」


「stranger」


短く刻む。


wataの畳み方に合わせて、音が跳ねる。


≫ 感謝、反射、連鎖、転写

≫ もらった気持ちは次へ変換

≫ 当たり前にしたら終わり

≫ 優しさは無限じゃない story


「感謝、反射、連鎖、転写!」


「気持ちよ!」


「もらった気持ちは次へ変換」


「優しさは無限じゃないstory」


「これ、めちゃくちゃリバクラっぽい」


「与え合うけど、雑に消費するなってことか」


wataは、さらに核心へ行く。


≫ Give and give でも自分も keep

≫ 無理して削れば love goes cheap

≫ できることを渡すだけでいい

≫ 背伸びじゃなくて your own key


「自分もkeep!」


「無理して削ればlove goes cheap」


「それだよ!」


「自分捨てて尽くすの、愛じゃないってことか」


「できることを渡すだけでいい、優しい」


「wataなのに優しい」


「wataなのに言うな」


wataは少し笑っているように見えた。


たぶん、客席の反応が見えていた。


調子に乗っている。


でも、浮いていない。


音で遊びながら、ちゃんと線を引く。


それがwataの仕事だった。


≫ 言葉で返せ、態度で返せ

≫ 次は君から一歩を出せ

≫ お互い様って雑じゃない

≫ ちゃんと見てるってことじゃない?


「お互い様って雑じゃない!」


「ちゃんと見てるってことじゃない?」


「これいい!」


「お互い様を雑に使うなってことか」


「言葉で返せ、態度で返せ、めっちゃ現実」


「ありがとうって大事」


続く英語で、会場がさらに跳ねる。


≫ Smile is feast, but don’t overfeed

≫ Love needs thanks, not endless greed

≫ 与えるほどに軽くなる

≫ でも線を引けるやつが強くなる


「Smile is feast!」


「don’t overfeed!」


「Love needs thanks, not endless greed!」


「線を引けるやつが強くなる!」


「wata、今日の三曲で一番気持ちいいかも」


「英語と日本語の混ぜ方うまい」


「意味もちゃんと通る」


wataは、Pre-Hookへ落とす。


≫ 感謝がなけりゃ gift は gift じゃない

≫ 優しさだけじゃ bridge は架からない

≫ 受け取るなら返す気持ち

≫ そこまで含めて give の道


客席の中で、誰かが小さく言った。


「これ、めっちゃ大事」


隣が頷く。


「もらう側も曲に入ってる」


「そう。与える側だけじゃない」


「GIVE & GLOWって、支え合いの曲なんだな」


BEEFがフックへ戻す。


今度は、さらに客席の拍手が増えた。


クラップが、少しずつ会場に広がる。


二万五千人全員ではない。


でも、確かに増えている。


≫ Give and glow, give and grow

≫ 欲しいだけじゃ満たせない soul

≫ Give and glow, give and grow

≫ 渡した光でまた上がろう


「Give and glow!」


「Give and grow!」


「渡した光で!」


≫ Give and give and give, no payback

≫ 見返り狙いならもう fake that

≫ Give and glow, give and grow

≫ 笑った顔で強くなろう


「笑った顔で強くなろう!」


「フック覚えてきた!」


「これ初見でもいける!」


「リバクラ、三曲目で客席を開いてきた!」


「ミラーライン戦なのに、相手を煽らずに客席に渡してる」


EGUIが前へ出る。


照明が、さらに柔らかくなる。


RIVALの赤。


PRESSUREの白。


GIVE & GLOWの温かいオレンジ。


その中で、EGUIは少しだけ口元を緩めた。


客席の誰かが言った。


「EGUI、ちょっと笑ってる?」


「三曲目だからか」


「ここで犬タイプ来るか?」


「犬タイプ?」


「歌詞にあるって噂」


「何それ」


「知らん、でも来たら笑う」


EGUIがマイクを握る。


そして、真っ直ぐ始めた。


≫ 難しいことは得意じゃない

≫ でも好きな人は放っておけない

≫ 犬タイプなら笑ってくれ

≫ 俺は後ろをワンワン行くぜ


客席が一瞬、固まった。


次の瞬間、笑いと歓声が起きた。


「犬タイプ!」


「ワンワン行くぜ!?」


「EGUIが言った!」


「ストレートタイプがワンワン!」


「いや、かわいいな!」


「でもEGUIが言うと、ちゃんと意味あるの怖い」


「犬タイプ、急に強い」


wataが後ろで少し笑っていた。


mcRCも笑いをこらえている。


BEEFは無表情のまま、ほんの少しだけスクラッチを入れた。


「ワン」


「ワン」


客席がさらに笑う。


「BEEFがワン拾った!」


「暴れ牛が犬を拾うな!」


「情報が多い!」


EGUIは、そこで崩れない。


笑わせたあとに、ちゃんと通す。


≫ 歩幅が違えば少し待つ

≫ 急ぎすぎたら袖を引っ張る

≫ はみ出したとこも悪くない

≫ 違うからこそ飽きないじゃない


笑っていた客席が、少しずつ頷きに変わる。


「歩幅」


「待つっていいな」


「袖を引っ張る、かわいい」


「はみ出したとこも悪くない」


「違うからこそ飽きない、いい」


「EGUI、やっぱ戻してくる」


EGUIの声は、さらに柔らかくなる。


≫ 君が泣くならそばにいる

≫ 何も言えなくても水を入れる

≫ 大きなことはできないけど

≫ 毎日の小さな手なら出せる


客席の反応が変わった。


さっきまで笑っていた人が、少し静かになる。


「水を入れる……」


「何も言えなくても、がいい」


「大きなことじゃなくて、小さな手」


「これ、めっちゃEGUI」


「真っ直ぐすぎるのに刺さる」


「犬タイプで笑わせてからこれ、ずるい」


EGUIは、止まらない。


≫ ついてきてくれてありがとう

≫ こんな俺でも隣にありがとう

≫ 俺が与えてるつもりでも

≫ ほんとは君にもらってるんだろう


会場のどこかで、拍手が起きた。


まだ曲の途中なのに。


それは、自然に出た拍手だった。


「ついてきてくれてありがとう」


「こんな俺でも隣にありがとう」


「これ、ファンにも言ってる?」


「恋人にも、仲間にも、客席にも言える」


「俺が与えてるつもりでも、ほんとは君にもらってる」


「これがgive and glowか」


EGUIは、最後へ向かう。


≫ だから一緒に歩こう

≫ 心の歩幅を合わせよう

≫ 完璧じゃなくていい

≫ 不器用なままで give を続けよう


客席が、少しずつ手を叩き始めた。


クラップが増える。


手拍子になりかける。


でも、無理に煽られたものではない。


曲の中から自然に出てきた音だった。


「心の歩幅」


「不器用なままでgiveを続けよう」


「EGUIの言葉、まっすぐすぎる」


「今日の三曲、リバクラかなり良くない?」


「良い。普通に良い」


「相手ミラーラインじゃなかったら勝てるんじゃない?」


「それ言うな」


「いや、まだミラーラインやってないから」


「そうだった」


EGUIは、Pre-Hookを置く。


≫ 尽くすって負けじゃない

≫ でも自分を捨てることでもない

≫ 君と俺で半分ずつ

≫ 持てる荷物を持っていく


「半分ずつ!」


「荷物を持っていく!」


「これ、温かい」


「尽くすって負けじゃない。でも自分を捨てることでもない」


「wataの線引きと繋がってる」


「三人のバース、ちゃんと役割違うのに同じ方向向いてる」


BEEFが、ここでビートを少しだけ広げた。


三曲目の最後へ向かう、橋。


ステージの照明が、三色に分かれる。


街の灯りのオレンジ。

レジ前の白。

歩道の柔らかい青。


三人が、順に声を置く。


≫ 街の灯りに coffee の湯気

≫ 欲しいじゃなくて癒しを give


mcRCの景色。


客席が「おお」と反応する。


「カフェ戻ってきた」


「湯気、いい」


続いてwata。


≫ レジの音、皿の上、笑顔の feast

≫ 感謝で回せば愛は increase


「感謝で回せば愛はincrease!」


「wata、最後まで音が気持ちいい」


そしてEGUI。


≫ 歩幅ずれても手は離さない

≫ ワンワン行くけど置いてかない


会場が笑った。


「ワンワン戻ってきた!」


「置いてかない!」


「笑えるのに泣ける」


「なんだこれ」


最後は三人。


≫ 別々の場所で同じ合言葉

≫ Give and give and give それが俺ら

≫ 奪うより渡す でも壊れない

≫ 与え合うから強くなれる life


「奪うより渡す、でも壊れない!」


「別々の場所で同じ合言葉!」


「これ、リバクラの三曲目として強い!」


「RIVAL、PRESSURE、GIVE & GLOWでちゃんと流れた!」


「敵を見る、重さを見る、最後に渡す!」


「客席まで渡してきた!」


BEEFが、ここで一瞬だけ音を薄くする。


二万五千人の手拍子が、少しだけ前に出る。


その手拍子を、BEEFは拾った。


クラップを足す。


会場の手拍子とビートが、少しずつ同じ場所に乗っていく。


「BEEF、客席拾った!」


「手拍子合わせてる!」


「DJしてる!」


「いやDJやろ」


「暴れ牛が、今日は支えてる!」


「それが強い!」


最終フック。


三人の声が、今日一番明るく前へ出る。


≫ Give and glow, give and grow

≫ 欲しいだけじゃ満たせない soul

≫ Give and glow, give and grow

≫ 渡した光でまた上がろう


今度は、客席が返した。


「Give and glow!」


「Give and grow!」


完璧ではない。


でも、確かに返っている。


初見が多い中で、三曲目の最後に会場が少しずつ開いていく。


≫ Give and give and give, no payback

≫ 見返り狙いならもう fake that

≫ Give and glow, give and grow

≫ 笑った顔で強くなろう


「笑った顔で強くなろう!」


「強い!」


「これ、終わり方いい!」


「リバクラ、温度出せるの強みだわ」


さらに続く。


≫ Give and live, give and live

≫ 君のため 俺のため 同じ意味

≫ Give and glow, give and grow

≫ 俺らから君へ love we show


「君のため、俺のため、同じ意味!」


「俺らから君へ!」


「これ、客席に言ってる」


「ちゃんと渡してる」


最後のアウトロ。


音が少しずつ柔らかくなる。


三人の声が、もう一度重なる。


≫ Give and give and give, yeah

≫ 欲しがるより light it up

≫ Give and give and give, yeah

≫ 渡した分だけ glow it up


客席の手拍子が、最後まで残る。


≫ No take, no fake, no price tag

≫ 心で返す love feedback


BEEFが、その言葉を軽く刻む。


「love」


「feedback」


「glow」


「give」


最後に三人が、短く置いた。


≫ 俺らから届ける love


音が止まった。


今度の無音は、重くなかった。


温かかった。


一瞬のあと、会場が大きく鳴った。


歓声。


拍手。


笑い声。


誰かが「ワンワン!」と叫び、周りが笑う。


別の誰かが「Give and glow!」と返す。


「リバクラ!」


「GIVE & GLOW!」


「三曲目いい!」


「温度!」


「今日のリバクラ、めっちゃ良かった!」


「三曲ちゃんと繋がってた!」


「RIVALで火つけて、PRESSUREで重くして、GIVEで渡した!」


「それ!」


「敵を倒すだけじゃなく、客席に何か置いてった!」


「これ先攻として強いだろ!」


ステージの上で、mcRCは少しだけ笑った。


wataは、肩で息をしていた。


EGUIは、客席の手拍子がまだ少し残っているのを見ていた。


BEEFは、最後のフェーダーを下げ、音を完全に落とした。


三曲。


やり切った。


先攻として、出せるものは出した。


RIVALで、逃げずに向き合った。

PRESSUREで、言葉の重さを背負った。

GIVE & GLOWで、奪うのではなく渡した。


リバクラは、調子に乗っていた。


でも、その調子は薄くなかった。


ステージを降りる前に、mcRCが一度だけ客席を見た。


二万五千人の中に、まだ拍手している人がいた。


笑っている人がいた。


頷いている人がいた。


少し泣きそうな顔の人もいた。


それで十分だった。


少なくとも今、この三曲は届いた。


袖へ向かう途中、wataが小さく言った。


「やったな」


mcRCが答える。


「やった」


EGUIが短く言う。


「出した」


BEEFは、三人の後ろで無言だった。


けれど、帽子の逆さクラウンを少しだけ触った。


その動きに、wataが気づく。


「BEEF、今の何?」


BEEFは前を向いたまま言った。


「位置直しただけだ」


mcRCが笑った。


「ミラーラインの金髪かよ」


EGUIが言う。


「なんの位置や」


BEEFは答えなかった。


袖の中で、三人が少しだけ笑った。


会場では、まだ拍手が続いていた。


Reverse Crownは、三曲を終えた。


火と、重さと、温度を置いて。


鏡の前に、ただ立ったのではない。


自分たちの色を、きっちり投げた。

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