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妖刀を拾った中年探索者、女侍の亡霊に死ぬほど鍛えられる〜悪いヤツらを斬って美少女探索者パーティを助けた俺、配信でバズり始める。  作者: 甲賀流


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一試合目、始まる


 ピーーーッ!!


 鋭いブザーが鳴り響いた瞬間、張り詰めていた空気が一気に緩み、観覧席からどっとざわめきが広がった。


 ……終わった。


 アリーナへ戻ってきた俺は、その場で小さく息を吐く。


 正直、余裕はなかった。


 残り時間もほとんどなく、最後の一体グレートオーガが近くにいたのも運が良かっただけだ。


 それでも合格ラインには、届いた。


「……よかった」


 自然と、そんな言葉が漏れる。


 胸の奥にあった緊張が、ゆっくりとほどけていった。


 そしてアリーナ中央のモニターに結果が表示される。


 第二試験 合格者:9名


 ざわめきが一段と強くなる。


「少なっ!」

「29人中9人か」

「今回の試験、キツすぎだろ」


 周囲の声が耳に入る。


 確かにそう思う。

 それで全員が合格なら通例どおりだと思うが、今から第三試験も行われる。


 つまり、まだまだ絞られるというわけだ。


 次に合格者の名が、モニターに刻まれる。


 その中に、見知った名がいくつかあった。


 霧島セナ。


 十河湊。


 結城カズマ。


 やはり、あの三人は残っている。


 納得しかない顔ぶれだ。


 次の試験はたしか対人戦。

 さらにキツくなりそうだな。


「おじさーん!」


 すぐ傍で声が飛んできた。


 振り向くと、セナがこちらに手を振っている。


 相変わらず、気の抜けた笑顔だ。


「さすがだねぇ」


「そっちもな」


 素直にそう返す。

 と同時に、俺はある疑問を聞くことにした。


「……そういえば、あの状況からどうやって五十ポイント集めたんだ?」


 彼女はモンスターの位置を教えてくれるだけで、討伐はすべて俺がやっていた。


 つまりポイントは、ほぼゼロに近かったはず。


 そこからどうやって間に合わせたのか。


 正直、見当がつかない。


「んー」


 セナは少しだけ視線を逸らす。


 言うかどうか迷っているようだったが、


「……試験終わったし、まぁいっかぁ」


 あっさりとそう言った。


「実はさぁ、おじさんがモンスター倒す直前に私もそのモンスターに攻撃を当ててたんだよねぇ」


「……攻撃?」


「うん。実は一発でも攻撃を当ててれば、討伐ポイントって入るの」


 得意げに笑う。

 

「だから、一緒に行動した方が効率いいなーと思って」


 なるほど。

 彼女は事前にその事を知っていた。

 だからこそ、誰かと行動することを選んだ。


「……そんなルール、知らなかったな」


 思わず呟く。


 どうやって知ったのかまでは知らないが、そういうルールの穴に気づいたセナの作戦勝ちってところか。


「これより合格者九名、第三試験会場へと移動してもらう」


 試験官の声。

 ざわめきが収まる。


「第三試験は、一対一による対人戦」


 そして少し間を空けて一言。

 

「なお、休憩は設けない」


 さらに会場のざわめきが強くなる。


”休憩なしとかエグすぎ”

”連戦とか頭おかしいだろ”

”今回の試験ガチすぎる”

”今年の受験者、普通にかわいそう”


 観客席の声に混じって、配信コメントもモニターに流れていた。


「なぜなら本物のダンジョンに、決められた休憩など存在しないからだ」


 試験官の声が会場に響く。


「探索者を襲う輩は、いつ現れるか分からない。それはモンスターとの戦闘中だったり、素材の採取中だったり。あるいは一頻り任務が落ち着き、ひと段落ついた時を狙ってくるかもしれない」


 会場の声は一瞬静寂に包まれ、コメントまでもがわずかに静止する。


「だからこそ、第三試験はこのまま続行する」


 今の話を聞いて反論する者はもちろんいなかった。

 

 試験官の言葉は、何も間違っていない。


 俺やスリースターズが仮面パーティと出会った時のように、ダンジョンには安全な時間なんて存在しない。


 むしろ、その状況を体現した素晴らしい試験だ。


 少なくとも俺はそう思う。



 それから、俺たち合格者は第三試験会場へと移動した。


 とはいえ、移動といっても大した距離じゃない。


 アリーナに併設された演習場。


 普段、探索者の模擬戦や訓練に使われている場所だ。


 さっきまでいた会場とは違い、ここには観客席はない。

 代わりに、壁面に大型モニターが一台だけ設置されている。

 無機質で、簡素な空間。


 だが――


 上空を見上げると、数台の撮影ドローンが静かに旋回していた。


 観客は、さっきのアリーナに残ったまま。

 あっちのモニター越しに、この試験を見るということか。


 配信もそのまま継続されているんだろう。


「これより第三試験について説明する」


 試験官の声に、改めて場の空気が引き締まる。


「第三試験は、一対一による対人戦だ」


 短く、明確な説明。


「形式としてはトーナメント方式を採用するが、勝敗そのものが合否に直結するわけではない」


 少し意外な言葉だった。


「本試験の目的は、戦闘能力の評価。B級探索者として相応しい実力を有しているかを、総合的に判断する」


 つまり、勝てばいいわけじゃない。


 どう戦うか。

 どこまでやれるか。


 それを見られている。


「審査は、協会本部の人員が配信映像をもとに行う」


 視線が自然と上へ向く。


 ドローン。

 あれがそのまま審査の目ということか。


「対戦カードはランダムで決定する」


 直後。


 モニターが切り替わった。


 第一試合

 霧島セナ vs 朝倉玲二


 会場の空気がわずかに揺れる。


 俺は無意識にセナの方へ視線を向けた。

 

「じゃ、行ってくるねぇ」


 セナは軽い口調のまま中央へ歩いていった。


 対戦相手の朝倉という男も前へ出る。


 剣士で体格もいい。


 装備もしっかりしている。


 動きも悪くない。


 普通に強そうな探索者だ。

 まぁそりゃ第三試験に残ってる中に、実力が伴っていない人はいないだろうけど。


「一試合目、開始……!」


 試合開始合図の瞬間、空気が変わった。


 セナは構えていない。


 力も抜けている。


 だが隙があるようには見えなかった。


 朝倉が踏み込む。


 速い。


 判断もいい。


 だが。


「……っ?」


 次の瞬間、動きがわずかに鈍る。


 何が起きたのか分からない。


 いや、分からなかった。


 セナの杖が、ほんのわずかに動いたのを見て、ようやく理解する。


 ――見えない攻撃。


 セナはさっきそう言っていた。


 しかしそれで怯む朝倉じゃない。

 彼はすぐさま体勢を整え直し、次の攻撃へと転じている。


 だが次の瞬間、


「おぉ……っ!?」


 朝倉の足が、何もないはずの床で引っかかった。


「ふふ、見えなかったでしょ?」


 その一瞬を逃さず、セナが距離を詰める。


 まるで配信コメントに答えているかのような口調とタイミング。


”え、今なにした?”

”なんかに躓いたよな?”

”なにも見えんのだが”

”画面バグってる?”


 そして今度は視える攻撃。

 杖に込められた魔力の塊が、有り得ないほど高速で生成され速射された。


「……がぁっ!!」


 青い弾は、朝倉の脳天に直撃。

 彼はそのまま大の字で床に倒れ込む。


「威力は抑えたし、脳震盪ってとこかなぁ〜」

 

 セナはさらっとそう言った。


”…………は?”

”なんだあの魔法生成速度wwww”

”ほんとにB級か?”

”見えない魔法に見える魔法、使い分けがエグすぎ”

”対人戦を心得てるってか”


「……一試合目、終了。勝者、霧島セナ!」



 あっという間の試合運びだった。


 きっと朝倉という探索者も弱くはなかった。

 セナとの戦力差もそこまでなかっただろう。


 だが、対人とモンスターじゃ戦い方が異なる。


 その辺、セナの方が一枚うわ手だったんだ。


 今回勝ち負けが合否と関係ないというのは、モンスターと人に対する戦い方の差別化をどれだけできているか、そういうところを見るということ。


 それが今の試合でよくわかった。


 そう考えている間に、モニターが切り替わる。



 第二試合

 十河湊 vs 結城カズマ



 周囲がざわめく。


 ステータス測定一位だった湊と、誰もが知る実力派探索者の結城カズマ。


 周りにとっても、俺にとっても、


 これは注目の一戦だ。

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