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妖刀を拾った中年探索者、女侍の亡霊に死ぬほど鍛えられる〜悪いヤツらを斬って美少女探索者パーティを助けた俺、配信でバズり始める。  作者: 甲賀流


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第二試験、直前


 測定装置の光が消え、ホールのざわめきがゆっくり戻ってくる。


 しばらくして、試験官の声が響いた。


「第一試験は以上とする」


 受験者たちの緊張が、そこで一気にほどけた。


「第二試験は一時間後。各自、アリーナに集合するように」


 淡々とした告知。


 ホールのあちこちで息を吐く音が聞こえる。


 ――どうやら、生き残ったらしい。


 周囲を見回す。


 思っていたより人数が残っていた。


 受験者総数48人に対して、一次通過した者はそのうちの29人。


 例年なら半数近くが一次で脱落する中、


 今年はかなり合格者が多い。


 もちろん、それには理由がある。


 ダントツで数値が高かった三人。


 結城カズマ。

 霧島セナ。


 そして、十河湊。

 

 全員、A級にかなり近い数値だった。


 特にカズマとセナは配信者としても有名だ。


 探索配信の世界では、すでに名前を知られている。


 そんな連中が同じ試験にいるんだから、今年のレベルが高くなるのも当然だろう。


 ……で。


 俺はというと。


 スマホを取り出す。


 探索者協会のアプリ。


 そこに表示されていたのは、さっきの測定結果。



 ――基礎ステータス測定結果



筋力:49(−2)

耐久:50(-1)

敏捷:51(-1)

器用:58(+7)

感知:62(+1)

魔力:13(−2)



 B級合格ライン。


 ギリギリ。


 順位も出ていたが――


 下から数えた方が早いくらい。


 危なかった。


 平均中のド平均。

 受かったのが奇跡みたいな数値だ。


 だが。


 それでも嬉しかった。


 この数ヶ月でここまで数値が上がった。


 今まで何年頑張っても、ほとんど変わらなかったんだからな。


 あの野蛮な女性たちに死ぬほど鍛えられて、今更ながらよかったと思った。


(その野蛮というのは、わっちのことか?)


 彩芽の声が脳に響く。


 びっくりした。


 いや、彩芽だけじゃない。

 最近はツバキさんが主だよ。


(その言い草、わっちも入っとるではないか!)


 すまんすまん。


 ここ最近、彩芽に『離魂術りこんじゅつ』――つまり俺と彼女の魂を切り離す方法を教えてもらって以降、あまり一緒にいる機会がなかった。


 そのため、ふいに声が降ってきて驚くことが増えた。


 以前からずっと、俺たちの魂を切り離す方法を教えると言われていたが、ようやく教えてもらったのがつい先月の話だ。


「後で、後でだ」


 そう言われ続けて、どんどん引き伸ばされた結果がこれ。


 本当に長かった。


 やっぱり常に女性が俺の中に棲んでいるというのは、少し慣れてきたとはいえソワソワはするというもの。


 まぁ一定の時間が経てば戻ってくる。


 ほんのちょっとの間だけどな。


(これでようやく、ふしだらなことができるようになったのぉ)


 彩芽はイタズラに小さく笑ってみせる。


「だ、だからしないってそんなこと!」

 

 そんな時。


「三枝さん」


 声をかけられる。


 振り向くとそこには十河湊。


 いつもの穏やかな笑み。


「お疲れ様です」


 そして、さらっと言った。


「今回のゲーム、引き分けですね」


「……引き分け?」


 思わず聞き返す。


 ゲームといえばさっきの第一試験。

 湊が数値で競おうと言ってきたやつだ。


 だがどう見ても。


 湊の圧勝だ。


 俺の数値なんて、B級の下の方。

 しかし湊はあのカズマ、セナを抜いての一位通過。

 正直勝負にすらなっていない。


 湊はスマホを見せてきた。


「これ、見てください」


 画面には――


 俺の測定結果。


「受験者同士、互いの結果を見れるんですよ」


 なるほど。


 知らなかった。


 だが。


 それでも引き分けにはならない。


「三枝さん」


 湊が言う。


「そこじゃないです」


 画面を下へスクロールする。


 すると。


 

 ――その他ステータス(自動算出)


 命中精度:A−

 反応速度:A

 継戦能力:A

 瞬間判断:A+

 対人戦適性:S-

 対魔物戦適性:S-



 なるほど。

 試験の時は表示されてなかったが、測定自体は通常通り行われているのか。


「基礎ステータスだけなら、僕の勝ちです」


 湊が小さく笑う。


「でも、戦闘評価は三枝さんの方がかなり上でした」


 一瞬、視線をモニターへ向ける。


「だから引き分け」


 そして、もう一度こちらを見る。


「さすがですね、三枝さん」


 それから湊はスマホをポケットにしまう。


「第二試験、楽しみですね」


「……そうだな」


 ちょうどホールのあちこちで受験者たちが移動を始めていた。


 どうやら次の会場へ向かう流れらしい。


「アリーナでしたね」


 湊が言う。


「あぁ」


 アリーナ。


 探索者協会が管理する模擬戦闘施設。


 本部に併設された巨大なドーム型施設だ。


 主に探索者の訓練や昇格試験に使われる場所で、地下には人工的に作られた模擬ダンジョンが広がっている。


 俺たちも人の流れに乗ってホールを出る。


 すると目の前に巨大な建物が現れた。


 ドーム型の施設。


 高さは軽く十階建てはある。


 アリーナの入口をくぐる。


 内部は円形のスタジアムになっていた。


 中央には広い空間と、いくつかの転移門。


 その周囲を取り囲む観覧席。


 すでにかなりの観客が座っている。


 四方の壁には巨大モニター。


 映し出されているのは地下の模擬ダンジョンの映像だった。


 第二試験は配信に加え、観客としての観覧も可能となっているらしい。


 その時、スピーカーから音声が流れた。


「第二試験について説明する」


 受験者たちが足を止める。


「第二試験は模擬ダンジョン戦」


 中央モニターにマップが表示される。


 岩壁。


 通路。


 分岐。


 地下迷宮の構造図だ。


 かなり本格的な造りになっている。


「制限時間は三十分。地下へは転移装置にて移動してもらう。スタート地点は、ランダム制だ」


 モニターに数字が表示される。


 合格ライン、五十ポイント


「これは模擬モンスターの討伐ポイント。終了次第、今から配る転移結晶にて帰還して良いものとする」


 そして、


「なお受験者同士の干渉は禁止しない」


 会場がざわついた。


 つまり。


 同士討ちもあり得るということだ。


 試験官の声は淡々としている。


「その他、細かなルールや、模擬モンスターの配点に関しては、試験開始直後、メールにて伝達する」


 モニターの表示が消えた。


「試験開始まで残り十分。各自、準備を整えよ」


 受験者たちがそれぞれ動き始める。


 武器確認。


 装備確認。


 軽くストレッチしている者もいる。


 そして会場端に配備していたスタッフたちが、順に転移結晶を配布していく。


 俺はそれを受け取り、息を整える。


 第二試験。


 ここで使えるのは、愛用している片手剣と鍛え上げた刀気のみ。

 さて、どこまで通用するか。

 気を引き締めていこう。


「やぁ」


 背後から女性の声。

 試験直前にも関わらず、気の抜けた朗らかな声音。

 

 振り向くと、そこにいたのは小柄な女だった。


 黒髪のボブヘアー。

 その中に赤いメッシュが混じっている。


 細身の体。


 腰には短杖。


 どう見ても魔法使いだ。


 ひらひらと手を振る。


 彼女は俺を上から下まで眺める。


「見たよ。その他ステータス」


 口元が楽しそうに歪む。


「すごかったね、おじさん。A級にもあんなの、中々いないんじゃない? 化け物だよ、化け物」


 そして少し考える素振り。


「その他ステータス怪物おじさん」


 指を立てる。


「略して……そのステ怪おじ」


「え……っ?」


 なんだ?

 初対面にも関わらず、人を怪物呼ばわり。

 いやそれよりもいきなりおじさんって、あまりにひどい。

 

 数秒考えたのち、


「……いや長いな」


 首を振る。


「やっぱその他のおじさんで」


「なんだそりゃ。あとおじさんじゃない」


 思わず言うと、女はけらけら笑った。


「だって三十四でしょ? 探索者界じゃ立派なおじさんだよ」


 そして軽く手を上げる。


「あたし、霧島セナ。一応、今回の受験者」


 いや知ってる。

 カズマと並んで名前が出ていた有名探索者だ。


「おじさん、第二試験一緒に行動させてよ」


 さらっと言った。


「……は?」


「あたし、モンスターの探知得意だし、二人で回った方が効率いいかもよ?」


 いや、二人で回ったところで、討伐ポイントはあくまで個人制。

 倒す数が二倍になるだけだ。


 それに、


「スタート地点はランダムだぞ」


 そもそも合流できるかどうかも怪しい。


「まぁその辺は任せてよ。どうにかするからさ」


 セナはあっさり言った。


「いや、なんとかって……」


 明らかに単独の方が効率のいい試験に、二人で挑もうという意味が分からない。


 彼女の目的はなんなんだ?


 そんなことを考えていると――


 アリーナ中央のモニターが切り替わった。


 巨大なマップ。


 地下模擬ダンジョンの構造図だ。


 複雑に入り組んだ通路。

 いくつもの分岐。

 複数の広間。


 かなり本格的な造りだ。


 スピーカーから音声が流れる。


「第二試験開始まで残り一分」


 受験者たちの空気が変わり、一気に張り詰めた。


「こちらの転移門からお入りください」


 ダンジョンタワーとほぼ同じ仕様。

 ここから地下のスタート地点へ飛ばされる仕組みらしい。


 合格した29人は、受験番号順に指定された転移門への案内が始まる。


「じゃあおじさん。向こうで会えたらよろしくね」


 セナはそう言うと、軽く手を振り、自分の番号が表示された転移門へ歩いていった。


 向こうで会えたらか。


 そんなことが本当にあるのか?


 いや、今は気にしてられない。


 試験が始まるんだ。

 集中しろ。


 俺は指定された転移門の前に立つ。


 順に転移が始まった。


 そして手前の受験者が光の中へ消える。


 次。


 係員が短く告げた。


「三枝恒一さん。どうぞ」


 門の奥では、淡い光が揺れている。


 地下模擬ダンジョン。


 第二試験。


 俺は一度だけ深く息を吸い込み、


「お願いします……!」


 そう言って光の中へ足を踏み入れた。


 


 

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