表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖刀を拾った中年探索者、女侍の亡霊に死ぬほど鍛えられる〜悪いヤツらを斬って美少女探索者パーティを助けた俺、配信でバズり始める。  作者: 甲賀流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/44

受験者たちの実力


 測定装置の低い駆動音が、ホールの空気を震わせていた。


 中央に設置された巨大な装置。

 その周囲を半円状に囲む受験者たち。


 観覧席の上段には協会関係者。

 さらにその上、壁面モニターには配信画面とコメント欄。


 昇格試験が、いよいよ始まる。


「受験番号一番。前へ」


 試験官の声がホール全体に響く。


 一人目の受験者が前に出た。


 少し緊張した顔だ。

 だが足取りはしっかりしている。


 中央に立つ。


 装置が反応した。


 低い機械音。


 白い光が受験者に放射される。


 数秒。


 そしてモニターに数値が表示された。

 


 ――基礎ステータス測定結果


 筋力:51(B級平均±0)

 耐久:50(−1)

 敏捷:53(+1)

 器用:49(−2)

 感知:61(±0)

 魔力:14(−1)



 会場のあちこちから小さなざわめきが起きる。


 そして試験官が言う。


「基準クリア」


 その一言で、会場の空気が少しだけ緩む。


 観覧席のコメント欄が流れる。


”お、いきなりB級ライン”

”平均くらいか”

”今年の受験者レベル高そう”

”基準ちゃんと見せてくれるの助かる”

”B級平均ってこんなもんなのか”

”耐久50ラインか”


 最初の受験者は小さく息を吐き、装置から降りた。


 そう、これは接触型ではない。

 中央に立つだけで装置から光が当てられ、肉体値と魔力波形を読み取るという仕組みだ。


 測定はそのまま続く。


「受験番号二番」


 光。


 表示。


 合格。


 コメントが流れる。


”悪くないな”

”平均ちょい上か”

”今年は粒揃いだな”


「受験番号三番」


 光。


 表示。


 合格。


”安定してるな”

”このペースだと今年合格多そう”

”いつもこの一次は、合格率五割くらいだったよな”


 そして。


「受験番号四番」


 表示された数値を見た瞬間、会場の空気が変わった。

 


 ――基礎ステータス測定結果


 筋力:47(−4)

 耐久:46(−5)

 敏捷:49(−3)

 器用:51(±0)

 感知:60(−1)

 魔力:13(−2)



 試験官の声は変わらない。


「基準未達。不合格」


 その一言で、受験者の肩が落ちた。


 周囲の探索者の顔が少し強ばる。


 コメント欄も同じ反応だ。


”うわ落ちた”

”全体的にちょい低いか”

”やっぱB級きついな〜”

”耐久46はさすがに無理だろ”

”中層潜るなら耐久50は欲しい”

”こういうの見るとB級って別世界だな”


 測定は止まらない。


 受験番号五番。


 合格。


”この人バランスいいな”


 六番。


 合格。


”敏捷高めいいね”


 七番。


 不合格。


”また落ちた”

”三人に一人ペースか”


 八番。


 合格。


 ざっと見て。


 三人に一人くらいが脱落している。


 やはりB級は甘くない。


 そして。


「受験番号十五番。結城カズマ」


 その名前が呼ばれた瞬間。


 ホールの空気が、はっきりと変わった。


 ざわめきが一段階大きくなる。


”きた”

”本命”

”A級候補”


 ――結城カズマ。


 名前は知っている。


 少し前、ネットニュースでも見かけた。


 若手探索者の特集記事。


 そこに載っていた見出しは、確か――


 A級に最も近い男。


 二十代前半。


 若手探索者の中では頭一つ抜けた存在らしい。


 その本人が、今ゆっくりと歩き出した。


 整った顔立ちに、少し長めの黒髪。


 爽やかな印象の青年だ。


 探索者装備も軽装で、どこかラフに見える。


 だが。


 歩き方に無駄がない。


 一歩一歩が静かで、力みもない。


 この空気の中でも、呼吸が乱れていない。


 コメント欄も一気に加速する。


”カズマきた!”

”A級候補”

”探索者界のカリスマ王子”

”女性人気やばい人だ”


 カズマは堂々と装置の中央に立つ。


 視線もぶれない。


 機械音が少し強くなる。


 そして。


 モニターに数値が表示された。


 

 ――基礎ステータス測定結果


 筋力:61(+10)

 耐久:65(+14)

 敏捷:63(+11)

 器用:62(+11)

 感知:69(+8)

 魔力:22(+7)


 

 一瞬、ホールが静まり返る。


 次の瞬間。


 ざわっ――


「おいおい」


「マジか」


「これ……ほぼA級じゃないか?」


 コメント欄も一気に流れる。

 


”やば”

”バケモン”

”A級予備軍”

”敏捷63ってなんだよ”

”これ普通にA級試験でも通るだろ”

”今回の試験レベルどうなってる”

 

 

 カズマは装置から降りた。


「……まっ、こんなもんでしょ」


 余裕の表情だ。


 その時。


「三枝さん」


 横から声がした。


 振り向く。


 十河湊。


 いつもの穏やかな笑みだ。


「ゲームしませんか?」


「ゲーム?」


 思わず聞き返す。


「はい。久しぶりに」


 湊は肩をすくめる。


「十一階層では討伐数でしたが、今回はどっちの数値が高いか」


 軽い口調だ。


 だが、その目は笑っていない。


 俺は一瞬だけモニターから視線を外し、湊を見る。


「なんで急に?」


 こんな場面で勝負?


 しかもステータス測定。


 意味があるとは思えない。


 単なる余興か?


 それとも――


「ただの男の意地ですよ」


 湊が続けた。


 あっさりした声。


「三枝さんも、そういうの嫌いじゃないでしょう?」


 ……男の意地。


 まぁ、それだけなら断る理由もない。


 だが。


 一瞬だけ、胸の奥に引っかかる。


 ――あの目。


 ヒカリのことで食い下がってきた時の、あの執念じみた眼差し。


 あの時の湊は、間違いなく普通じゃなかった。


 だが今、目の前にいる男は――


 穏やかで。


 どこにでもいる探索者の顔をしている。


 ……いや、考えすぎか。

 

 そんな時。


「受験番号二十一番。十河湊」


 試験官の声がホールに響いた。


 湊が小さく笑う。


「……おっと」


 そして軽く手を上げる。


「返事がないってことは、承諾してくれたってことにしておきますね」


 言い残して、前へ歩き出した。


 装置の中央へ。


 白い光が湊を差す。


 そして。


 モニターが更新された。

 


 ――基礎ステータス測定結果


 筋力:65(+14)

 耐久:66(+15)

 敏捷:70(+18)

 器用:62(+11)

 感知:74(+13)

 魔力:24(+9)


 

 数値が表示された瞬間。


 ホールが、凍った。


 一拍。


 そして。


 ざわあっ――


 今までとは明らかに違うどよめきが広がる。


「……おい」


「嘘だろ」


「カズマ超えてないか?」


 探索者たちが一斉にモニターを見上げている。


 画面上のコメント欄も一気に流れ出した。


”え?”

”ちょっと待て”

”今の何”

”今回の試験どうなってんだ”

”敏捷70???”

”バケモン二人目出てきた”

”カズマより上じゃん”


 

 装置の光が消える。


 湊は何事もなかったように、中央から降りた。


 周囲の視線をまったく気にしていない。


 そのまま、俺の横まで戻ってくる。


「どうでした?」


 穏やかな声。


 まるで世間話でもするような口調だ。


 俺はモニターから目を離さず答える。


「……想像以上で驚いた」


 正直な感想だ。


 あの数値。


 さっきの結城カズマを、確実に上回っている。


 湊は小さく笑った。


「いい勝負になるといいですね」


「……そうだな」


 まさかここまでとは。


 以前、十一階層に潜った時に感じた刀気の質は、確かに普通じゃなかった。


 それなりに強いとは思ってたが、


 あの数値は、正直想定していなかった。


 結城カズマもそうだが、明らかにB級昇格試験で見る数値じゃない。

 

 そしてしばらく、


「受験番号三十七番」


 試験官の声がホールに響く。


「三枝恒一」


 俺の番だ。


 受験者たちの視線が一斉に集まる。


 湊が軽く微笑む。


「頑張ってくださいね」


「……あぁ」


 俺はゆっくりと歩き出す。


 中央の装置。

 その前に立つ。


 足元の床がわずかに振動した。


 装置が反応している。


 白い光が、ゆっくりと放たれる。


 視界が淡く染まった。


 静かだ。


 ホールのざわめきが遠くなる。


 そして。


 モニターが更新された。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんにちは。 有名な天才くん以上の敏捷……まぁ人間をバイバイしたドーピング野郎だから当たり前か。 対してこちらは年齢による多少のハンデも有りますし、今までの訓練が果たしてどこまでステに反映されている…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ