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妖刀を拾った中年探索者、女侍の亡霊に死ぬほど鍛えられる〜悪いヤツらを斬って美少女探索者パーティを助けた俺、配信でバズり始める。  作者: 甲賀流


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B級昇格試験、開始


 ――三ヶ月後

 

 

 B級昇格試験当日。


 会場前の広場は、朝から人で溢れていた。


 受験者、関係者、見学者。

 配信用ドローンが上空を旋回し、巨大モニターには試験概要が映し出されている。


 空気が硬い。


 この三ヶ月。


 俺は、この日のために積み上げてきた。


 踏み込みの修正。

 体幹の再構築。

 刀気の圧縮制御。


 刀からエネルギーを借りるではなく、自ら刀気を練り込むことまで。


 派手な成長じゃない。


 だが確実に、前よりは上にいる。


 後悔はない。


「三枝さん」


 穏やかな声。


 振り向くと、神崎社長が立っていた。


 その隣に、ヒカリ、ルナ、カナデ。


 ヒカリが申し訳なさそうに言う。


「本当は、最後まで見たかったんですけど……」


 ルナが続ける。


「今日、指名任務が入っちゃって」


 カナデが補足する。


「スリースターズ、単独指定……」


 実に珍しい。

 探索者パーティ名指しの指名任務。


 彼女たちも初めてのことらしい。


 まさかその初めてと、俺の昇格試験の日がちょうど同じ日になるとは。


「すみません」


 ヒカリが頭を下げる。


「気にしなくていいよ」


 俺は軽く笑う。


「任務、しっかりこなしてきてくれ!」


「三枝さん。この子たちが任務を行う以上、私も事務所にいなくてはいけません」


 社長が静かに言う。


「なので私は事務所から応援してますね」


「ありがとうございます」


 俺は頭を下げた。


「絶対受かってきてね!」


 ルナが微笑む。


 カナデも小さく頷く。


 ヒカリは一歩近づき、小さく言った。


「……終わったら、すぐ連絡ください」


「わかった。じゃあ、行ってきます」


 背を向け、会場へ向かう。


 受験者専用ゲートをくぐると、外の喧騒が遠ざかった。


 内部は別世界だ。


 広いロビー。


 受験者たちがそれぞれ装備を確認している。


 大剣を背負った筋骨隆々の男。


 双剣を弄ぶ若い女。


 魔導書を抱えた細身の探索者。


 年齢層もばらばらだ。


 二十代前半もいれば、俺より若干上に見える男もいる。


 皆、C級上位。


 この場にいる時点で、全員が選抜組だ。


 視線が交錯する。


 緊張、闘志、焦り。


 その中に、聞き覚えのある声。


「おはようございます、三枝さん」


 振り向く。


 十河湊。


 軽装の試験用戦闘服。


 穏やかな笑み。


 ヒカリの幼馴染であり、彼女を執拗に求めた男。


 だが、あれから湊がヒカリに接触することは一度もなかった。


 体験期間も終わり、正式にスリースターズへ入る話も消えた。


 後日聞いたが、ヒカリがちゃんと話をしたらしい。


 それで終わった、と。


 ……諦めたのか?


 いや。


 あれだけヒカリに執着してた男だ。

 簡単に引くタイプじゃないと思ってたが……。


 だがもう日にちもずいぶん経った。


 ヒカリの幸せを願い、彼なりに何かしらの踏ん切りをつけたということか?

 

 実際、あの頃に感じた狂気は、影すらない。


 とりあえず今は、同じ試験を受ける一人のC級探索者と思ってよさそうだ。


「久しぶり」


「調子はどうですか?」


「いつも通りだよ」


 湊は小さく笑う。


「ヒカリは、元気にしてますか?」


 自然な問いかけ。


「あぁ。元気にしてるよ」


「それは良かった」


 本当に安心したように目を細める。


 やはり執着も焦りも感じない。


「お互い、いい結果を出せるといいですね」


「あぁ」


 短い会話が終わると、俺たちは自然と人の流れに乗った。


 ロビーの奥、受付カウンターの前に列ができている。

 受験者の胸元にぶら下がる受験票。

 武器のサイズ制限を確認する係員。

 荷物タグを渡すスタッフ。


 このB級昇格試験は、多くの人の支えがあって成り立っている。


 そして天井には複数の撮影用ドローン。

 壁面には巨大モニター。


 既に試験会場の内部映像がリアルタイムで映し出されている。


 ――B級昇格試験、ライブ配信中。


 画面の隅には視聴者数。


 数万。


 コメント欄が流れている。


“いよいよ始まるな”

“楽しみ待ってました”

“毎試験、合格者一割切るらしいな”

“マジ? それ激ムズすぎだろw”

“注目探索者はやっぱ、わっち侍か?”

“いや、他にもいるぞ”

“結城カズマ、霧島セナ、今回はすでにB級以上の実力者がゴロゴロいるからな”

“めっちゃ楽しみ”


 そして別のモニターでは、大まかな試験内容が淡々と刻まれていた。


 B級昇格試験:進行手順

 第一試験:基礎能力測定

 第二試験:模擬ダンジョン戦

 最終試験:対人戦


 ざわめきが広がる。


「うわ、三段階?」


「去年は第二試験までだったよな?」


 受験者たちの声が重なる。


 モニターに補足説明が表示される。


 近年、探索者同士の襲撃事件が増加。通称〈仮面パーティ〉への対策として、対人適性を重視。本試験は倫理・制御能力・危険判断を総合評価することとなりました。


 空気が、わずかに変わった。


 仮面パーティ。


 それは俺が初めてスリースターズと出会った時、彼女たちを襲った仮面の集団。


 彼らは装備、素材、金品のためだけに、ダンジョンで探索者を襲う。


 あの時彩芽が俺に乗り移っていたから簡単に勝てたものの、今の俺の実力じゃどこまで太刀打ちできたか分からない。


 奴らは主に十五階層以上の中階層で目撃されている。


 つまり狙いは少なくともC級以上の探索者。


 協会が第三試験を設けたのも無理はない。


 力を持つ者が、どこに刃を向けるのか。


 それを見極めなければB級は任せられない。

 そういうことだろう。


 するとモニターの表示が切り替わる。


 ――受験者は第一試験会場へ移動してください。


 天井のスピーカーから、落ち着いた女性の音声が流れた。


 ざわめきが一段落し、人の流れが動き出す。


 俺もその波に乗る。


 長い通路。


 やがて、巨大な扉の前にたどり着く。


 厚い金属扉。


 扉が開いた。


 中は円形の大空間だった。


 中央には巨大な測定装置。


 天井からは白い光柱が降りている。


 観覧席には審査官と協会関係者。


 そして、複数の固定カメラ。


 配信はここからも続いている。


 受験者たちが半円状に並ばされる。


 ざわめきが、徐々に消えていく。


 壇上に、一人の男が立った。


 四十代半ば。


 短く刈り込まれた髪。


 背筋が異様に真っ直ぐだ。


 ただ立っているだけで、場が締まる。


「静粛に」


 一言。


 それだけで空気が凍る。


「B級昇格試験、第一試験を開始する」


 低く、よく通る声。


「第一試験は、基礎能力測定」


 中央の装置を指す。


「本試験では、総合基礎値、戦闘適性、危険耐性を協会AIおよび審査官が総合判定する」


 ホールに緊張が走る。


「B級基準に達していない者は、この時点で不合格」


 淡々とした宣告。


 ステータス測定。

 久しぶりだ。


 たしか、前に測定した時は俺がまだアケボノに所属していた頃だっけな。


 俺はその頃のステータスをスマホで確認する。

 


 ――――――――


 探索者情報


 名前:三枝 恒一さえぐさ・こういち

 年齢:34

 探索者ランク:C

 所属:スリースターズ事務所

 主武装:片手剣

 戦闘タイプ:近接・剣術型



 基礎ステータス


 ・筋力:41

 ・耐久:44

 ・敏捷:46

 ・器用:58

 ・感知:61

 ・魔力:12



 その他ステータス(自動算出)


 ・命中精度:A−

 ・反応速度:B+

 ・継戦能力:B

 ・瞬間判断:A

 ・対人戦適性:A−

 ・対魔物戦適性:B



 スキル/特性


 固有スキル


 〈剣技最適化〉

 無駄動作を自動的に減衰

 消費体力 −8%

 長時間戦闘時の精度低下を抑制


 習得スキル

 ・片手剣:中級

 ・体捌き

 ・危機察知

 ・迎撃姿勢



 評価コメント(協会AI)


 総評:

 技術・判断力は高水準。

 ただし肉体ステータスの成長余地が低く、

 高難度ダンジョンでの将来的な戦力としては頭打ち。


 推奨運用:

 後衛護衛/新人指導補助/安定攻略要員。


 注意:

 単独での高リスク行動は非推奨。



 ――――――――



 久しぶりに見たけど、俺の所属がスリースターズ事務所になっている。


 久しくステータス測定をしなかったけど、探索者情報は自動更新されるのか。


「順に測定を行う」


 装置が低く唸り始める。


 白い光が強まる。


「受験番号一番。前へ」


 最初の受験者が一歩踏み出す。


 俺は息を整えた。


 ここから先は、数値がすべて。


 積み上げてきた三ヶ月が、嘘か本当か。


 試される時だ。

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