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妖刀を拾った中年探索者、女侍の亡霊に死ぬほど鍛えられる〜悪いヤツらを斬って美少女探索者パーティを助けた俺、配信でバズり始める。  作者: 甲賀流


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久しぶりの配信


 ツバキとの修行から一日が明けた。


 俺はスリースターズの事務所に足を踏み入れる。


 玄関を開けた瞬間、聞き慣れた声が飛んできた。


「おっ、コッチーじゃん。ひさしぶりー!」


 ソファに寝転がっていたルナが、勢いよく起き上がる。


「……あれ、なんか顔死んでない?」


「まぁ……色々あったからな」


 いや、本当に色々ありすぎた。

 探索者協会の会長からB級探索者昇格試験の推薦を頂いたり、同じ刀使いのツバキと出会ったり。


 もっとも、ルナの言う俺の顔が死んでいるというのは、昨日の死ぬほどキツイ刀気修行のせいだと思うが。


「本当に大丈夫ですか? なんだか、やつれてるような……」


 すると今度は、テーブルの向こうからヒカリが心配そうに覗き込んできた。


「……なんか、痩せこけた?」


 カナデまで、淡々とした声でそう言う。


 俺は一度深く息を吐いてから、ソファに腰を下ろした。


「大丈夫。ちょっと修行してただけだから」


「ちょっと?」


 ルナが眉をひそめる。


「そのちょっとで、人はそんな顔になる?」


「……なる人もいる。というかここにいる」


「絶対おかしいでしょ」


 ツッコミは鋭いが、それ以上俺が返答しなかったため、少し不自然な形で会話が途切れた。

 

「あ、そういえばさ」


 しかしルナがすかさず話題を放り込む。


「結局、探索者協会はなんの用だったの?」


 その一言で、全員の視線が集まった。


「コッチー、昨日呼ばれてたでしょ?」


「……実は私も気になってました」


「……カナデも、気になる」


 そりゃそうか。

 仲間の一人が探索者協会に呼ばれ、自分たちが呼ばれなかった理由なわけだし。


 彼女たちは同じ事務所で働く仲間。

 このまま黙っておくのも変な話だな。


 俺は背もたれに体を預け、小さく息を吐く。


「ああ。結論から言うと――」


 一拍置いてから、言った。


「B級昇格試験の推薦を受けた」


 一瞬、間が空く。


「……え?」


「えっ?」


 ルナとヒカリが同時に声を上げる。


「ちょ、待って」


 ルナが思わず立ち上がる。


「B級の昇格試験……?」


 ヒカリも続いて声を張り上げる。


「しかも会長直々の推薦……」


 そして少し間が空いて、

 

「おめでとう、コッチー!」

「おめでとうございます!!」


「いや、まだ受かったわけじゃないから」


「それでもですよ、恒一さん!」


「そうそう、謙遜しないしない」


 二人が、さすが会長見る目あるわ、これでスリースターズみんながB級になりましたね、と盛り上がる中、


「……妥当」


 カナデだけが、いつも通りの調子で言った。


「十九階層、二十階層。結果、影響、注目度。条件は揃ってる」


 淡々とした分析だった。


「それで恒一さん……」


 ヒカリが真面目な表情で聞く。


「今年の昇格試験はいつなんですか?」


「たしか三ヶ月後だって言ってた」


 B級以上の昇格試験は基本開催時期が不定期。

 理由はA級探索者以上の推薦が必要だからだ。

 そしてある一定の人数が集まったタイミングで、試験時期が決まるという仕組み。


「たしかB級試験って、年によって内容が違うんじゃなかったっけ?」


 ルナが腕を組む。


「そうだよ。私たちの時は、受験者の中でパーティを組んでダンジョン二十二層最奥に着けば合格、だったよね」


 ヒカリが続ける。


「……カナデたち、ラッキーだった」


 カナデの一言にルナとヒカリも苦い表情で、たしかに、と頷く。


「俺も気合い入れないとだな」


 その言葉に、三人とも少し表情を引き締めた。


「がんばれ、コッチー!」


「恒一さんなら受かります!」


「……恒一、がんばれ」


 三人からの声援をもらったところで、話は今日事務所に集まった本題へと移り変わる。


「そろそろ、行きますか?」


 ヒカリのその一言で、空気が切り替わった。


「そうだね。行こ行こ〜!」


 ルナがにっと笑う。


 今日はスリースターズと俺のコラボ配信。

 基本何とイベントがない時は、できるだけ俺たちのコラボで視聴者を獲得したいというのが、神崎社長の経営方針だ。


 俺たちは準備をして、ダンジョンタワーへ向かった。



 * * *



 ダンジョンタワー。

 九階層。


 ここに来て、今までよりワンランク下の階層探索。


 任務内容はちょっとした素材集めだ。


 ちなみに現在十五階層より上は、協会が正式に立ち入りを禁止している。


 あんな事があった後だ。

 昔のフロアボスがこの時代に復活した理由が分からない以上、不要に探索させるわけにはいかないんだろう。


「よし」


 ルナが撮影ドローンを飛ばした。


「じゃ、行こっか」


 ルナがカメラに向かって手を振る。


「はーい! みなさんこんにちはー!」


 明るい声。


「スリースターズでーす!」


 ヒカリが続く。


「今日はもうお馴染みにもなってる、三枝恒一さんとのコラボ配信になります!」


「……よろしく」


 カナデが軽く会釈する。


 いつもの流れ。

 いつもの導入。


 コメント欄も、穏やかに流れ始めていた。


”おぉぉイツメンだ!”

”待ってた”

”今日は安定回かな”


 ――ここまでは。


「それじゃ、コッチーも一言どうぞー!」


 ルナがこちらを振り返る。


「ああ、どうも」


 俺は一歩前に出て、いつものように挨拶しようとしたその時だった。


「……え?」


 ルナの声が止まった。


 ヒカリも。

 カナデも。


 三人の視線が、揃って俺の手元に集まっている。


「……コッチー」


 ルナが、ゆっくりと言う。


「それ、なに?」


「……武器だけど」


 俺は自然に答えた。

 いや、今の俺にはそうするしかなかった。


 これも全て、彼女たちへ事前に説明することを忘れていた俺の落ち度。


「いや、そうじゃなくて」


 ルナが指をさす。


「なんで、木刀?」


 沈黙。


 ほんの一拍遅れて――


 コメント欄が、爆発した。


”うわ、マジで木刀だ”

”木刀??????”

”待ってコッチーwww”

”バグ?”

”いつもの刀はどこ行った??”

”一人縛りプレイ始めてて草”


 画面が、一気に文字で埋まる。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 ヒカリが慌ててカメラを見る。


「皆さん落ち着いて……」


”落ち着けるわけない”

”舐めプ??”

”木刀はさすがに草”

”てか木刀じゃ一階層のスライムも無理じゃ……”


「……説明、必要」


 カナデがぽつりと言った。


 俺は、軽く肩をすくめる。


「あー……」


 正直、どう説明したものか迷った。


 ツバキの顔が脳裏をよぎる。

 木刀以外使うなという、あの悪い笑み。


「修行中なんだよ」


 とりあえず正直にそう言った。


「修行?」


 ルナが目を細める。


「その修行で、木刀?」


「そう」


「……生きて帰れる?」


「多分」


 即答したら三人とも微妙な顔をした。


”多分て”

”不安しかない”

”今日の配信荒れそうだな”

”逆に楽しみ”


 逆にコメントは盛り上がってる。


「えーっと……まぁとにかく、進み、ますか」


 画面に一度ヒカリの苦笑いを映したのち、俺たちは九階層を進み始めたのだった。


 ……歳下の子に気を遣わせて、ホントごめん。

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