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妖刀を拾った中年探索者、女侍の亡霊に死ぬほど鍛えられる〜悪いヤツらを斬って美少女探索者パーティを助けた俺、配信でバズり始める。  作者: 甲賀流


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十九階層、コラボ開始



 彩芽と過ごした地獄の修行もとい、俺のわずかな休暇があっという間に終わった。


 現在地、十九階層。

 傍にはスリースターズの三人と、周りを旋回するドローン。


 今日は俺と彼女たちとの、初コラボの日。


 俺たちはカメラに向かって横並びになる。

 そしてお互い目配せをしたのちに配信が開始となった。


〈配信が開始されました〉


 イヤホン越しのアナウンスとほぼ同時に、コメント欄が弾けた。


“きたああああああ!!”

“公式コラボだぁぁ!!!!”

“待ってたぞ!”

“コッチー!!”

“スリースターズとコッチーが並んでる!!”

“なんか尊いなぁ”


 早い。


 普段なら考えられない勢いで、視聴者数が伸びていく。


 開始直後にしてすでに同接四千人。

 これが、スリースターズの影響力か。


「ど、どうも……」


 思わず声が少し硬くなる。

 これだけ多くの人に見られていると思うと、さすがに緊張する。


「三枝恒一です。今日は――」


「はーいはーい!」


 俺の言葉を遮るように、横から明るい声が割り込んできた。


「みなさーん! 本日はお待ちかね、コラボ配信ですよー!」


 ルナだ。


 カメラの前に、ずいっと顔を寄せる。


「えーとね、今日の主役はもちろん――」


 にやり、と意地の悪い笑み。


「この前十一階層を一人で無双した、コッチーでーす!」


“コッチーwwww”

“公式で言ったwww”

“あだ名定着してて草”

“本人ちょっと照れてる?”


「……それ、もう広まってるのか」


「当たり前じゃん」


 ルナは楽しそうに笑う。


「コメント欄もすごいね」


“頼むぞコッチー!”

“今日も無双見せてくれ”

“スリースターズを守ってくれよ!”


 いや、本当にすごい。

 何がすごいって、スリースターズファンが、すでに外物の俺を受け入れてくれているのだ。


「ほらね?」


 ルナは肩をすくめる。


「コッチー、もう立派な人気者だよ?」


 ヒカリが、少し困ったように苦笑しながら補足する。


「この前の配信、反響がすごかったですからね。恒一さんが前に出て戦う姿、好評でしたし」


“十一階層の戦闘、何回も見返してる”

“判断が神”

“あれ見てファンになった”


 コメントを追うたび、胸の奥がむず痒くなる。


 正直、慣れない。


 今まで俺は、

 前に出るより、後ろを守る役だった。


 だが――


「ま、そういうわけで」


 ルナが軽く手を叩く。


「そんなコッチーがいるんだから、今日も安心して探索できるってわけ!」


“それな”

“コッチーいれば勝ち確”

“スリースターズ+コッチーとか強すぎ”


 期待が、画面越しにひしひしと伝わってくる。


 俺は小さく息を吐き、改めてカメラを見る。


「……期待されてるみたいだな」


「はい。みんな期待してますよ」


 即答したのはヒカリ。

 無垢な笑顔でプレッシャーをかけてくる。

 きっと無意識だろうから、反論はしにくい。


「……よろしく、恒一」


 そしてカナデのまっすぐな瞳。


 少し三人からの信頼を重く感じつつも、


「あぁ。全力で行かせてもらうよ」


 同時に気合いも入った。


「それじゃあ」


 俺は、はっきりと告げる。


「十九階層、進みます」


 俺は一歩、ダンジョンへと踏み出した。


 

 十九階層。


 湿り気を帯びた重さ。

 皮膚にまとわりつくような圧迫感。

 十一階層とは、明確に質が違う。


 ここは一般的に、C級上位からB級探索者のパーティが主戦場とする階層だ。

 単体のモンスターなら対処は難しくない。

 だが一瞬の油断、判断の遅れ――それだけで命が消える。


 俺は歩きながら、今日の任務を頭の中で反芻する。


 十九階層におけるモンスター大量発生の掃討および原因調査。


 発生時期、条件、種別。

 どれも共通点が見つかっていない。


 ただ一つ――


 十一階層と、同じ兆候だということ。


 数が異常に多い。

 湧きの間隔が短い。

 そして、必ず群れで現れる。


 こんなこと、ここ十数年で一度もなかった。

 違和感まみれのこの現状。

 ダンジョンタワーの中で、一体何が起きているんだ?


「……くる。九時の方向。みんな構えて」


 カナデの冷静な掛け声。

 さすが探知が得意な支援担当。

 誰よりも早く違和感を察知してみせた。


「おーけー、カナデ!」


「了解!」

 

 スリースターズの三人は、自然と戦闘配置に入る。


 ヒカリはやや前寄り。

 いつでも飛び出せる位置取り。


 ルナは中央やや後方。

 全体を見渡し、援護と判断に集中している。


 カナデはさらに後ろ。

 いつでも支援できる最適の位置。


 指示がなくても、動きが噛み合っている。

 

 そして――


 気づけば俺自身も、その陣形の一部になっていた。


 前に出すぎない。

 かといって、後ろにも下がらない。


 誰かが動けば、その一歩先を読む。

 必要なら、自分が穴を埋める。


 これは……格別に戦いやすいな。


「――来ます」


 カナデの短い声。


 次の瞬間だった。


 通路の奥、闇がうねる。

 黒い影が、溢れ出すように姿を現した。


 また、群れだ。


 十一階層で見たのと同種のモンスター。

 だが、数は十数体と明らかに多い。


「……やっぱり」


 ヒカリが息を呑む。


「この数は……異常です」


「考えるのは後!」


 ルナが一歩、前へ出る。


「コッチー、合わせて!」


「ああ!」


 返事と同時に、身体が動いた。


 ルナはすでに炎魔法の詠唱に入っていた。

 敵の注意が、彼女に向く。


 その一瞬。


 隙を見て、俺は数個体を撃破した。


 間髪入れず、次。


 ヒカリも同様。

 一撃でモンスターの首を落としていく。


 不思議といつもより力が漲ってくる。

 もしかして俺、少し強くなった?

 と思ったが、カナデのバフ効果だった。


 ――無駄がない。


“連携、エグくない?”

“初コラボってマジ?”

“コッチー完全に溶け込んでる”


 コメントが加速する。


 だが、戦闘中の俺の頭は静かだった。


 それから一体、また一体。


 数は多いが、押される気配はない。


 ――むしろ。


 落ち着いて処理できている。

 自分でもそう思えた。


 剣が振れる。

 視界が広い。

 判断が、迷わない。


 お互い信頼し合っているからこその連携だ。

 そこに俺も溶け込めているのだと思うと、妙に嬉しく思えた。


 そして――


 最後の一体が倒れた瞬間、通路に静寂が戻った。

 耳鳴りがするほど、急に音が消える。


 俺は一度、周囲を見渡した。


「ふぅ……」


 ルナが軽く肩を回す。


「思ったより楽だったね」


「ええ。ただ……」


 ヒカリは周囲を見回し、眉をひそめる。


「やっぱり数が多すぎます。十九階層で、この密度は……」


「……異常」


 カナデが短く言い切った。


 コメント欄も同じ感想らしい。


“この数、普通じゃない”

“湧きすぎだろ。キモいわw”

“十一階層と完全に同じ流れじゃん”

“これはさすがに調査案件”

“でもこれ、スリースターズだけじゃキツくない?”


 確かに。

 このペースで戦闘していたら、ルナやカナデの魔力切れもあり得る。

 早いとこ原因を突き詰めて、撤退したいところだが。

 

 そんな時。


 通路の奥から、足音。


 複数人分だ。


 俺は即座に一歩前へ出た。


 仮面パーティ。

 あの時の記憶が過ぎる。

 探索者同士でやり合ったあの時だ。

 こんな時に鉢合わせたら、最悪だぞ。


 ルナ、ヒカリ、カナデも即座に構える。


『恒一、大丈夫だ。悪意は感じない』


 彩芽からひと言。

 彼女は人の悪意を読み取れると言っていた。

 

 そしてその助言は見事的中。

 現れたのは普通の探索者パーティだった。


「……おっ!」


 先頭の男が、ほっとしたように声を上げる。


「スリースターズさんですよね?」


 俺たちは互いに目を合わせ、全員武器を下ろした。


「はい、そうです」


 ヒカリが応じる。


 相手は男の三人パーティ。

 やはりこの階層にくるメンツだけあって、俺も見たことある人たちだった。


〈ブルーアーチ〉


 水魔法、青雷魔法、蒼炎魔法の使い手が集まった、魔法特化のパーティだ。


 たしか全員B級の探索者で、


 水魔法のうおた。

 青雷魔法のでんき。

 蒼炎魔法のほのー。


 分かりやすい名前だったはず。


「いやぁ助かりました……」


 リーダーのうおたは苦笑しながら続けた。


「僕たちも任務で入ってたんですが、想定より数が多くて」


「やっぱり?」


 ルナが即座に食いつく。


「そっちも、群れだった?」


「ええ。しかも、時間差で何度も」


 その言葉に、全員の表情が引き締まった。


 どうやら今回の任務は、スリースターズだけに依頼があったものじゃないらしい。

 彼らいわく、少なくとももう二パーティくらいは来てるんじゃないかとのことだった。


 普通は一つの任務につき、一つのパーティ。

 コラボの場合は例外だが。

 

 まぁそれだけ今回の任務がやばいってことか。



 そしてさらに別の足音が響いた。

 落ち着いた足取りがゆっくりとこちらへ向かってくる。


「……また?」


 ルナが振り向く。


 通路の影から、別のパーティが現れた。


 次も三人。

 男二人に女一人のパーティだった。


 その姿を見た瞬間、胸の奥が僅かに軋む。


 大きな剣を背負い、気だるげ首を鳴らす仕草の男を中心に並び立つ若い女性と好青年の計三人。


 俺にとって、もはや見間違えようがない。


 探索者パーティ〈アケボノ〉。

 つい先日まで俺が所属していたパーティだ。


 中央に立つ男と目が合う。


「チッ、なんでお前がここに……」


 リーダーの吉祥寺。

 彼は気だるげに息を吐いた。

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