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妖刀を拾った中年探索者、女侍の亡霊に死ぬほど鍛えられる〜悪いヤツらを斬って美少女探索者パーティを助けた俺、配信でバズり始める。  作者: 甲賀流


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コラボ決定?


 コメント欄が、完全に燃え上がっていた。


“スリースターズじゃん!!”

“え、どうなってんの!?!?”

“恒一氏、もしかしてあの時から仲良くやっちゃってんのか?”

“おい裏切り者!!”

“いや、もうこうなったらコラボしてくれ”

“そうだ、コラボコラボ!”

 

 俺はスリースターズの事務所でソファに腰を下ろし、スマホ越しに自分のチャンネルのアーカイブを眺めていた。


 再生数は現在二万を超し、今も尚伸びている。

 コメントの勢いも、昨日の動画とは思えないほどだ。


「……いや、これはさすがに騒ぎすぎだろ」


 思わずそう呟く。


「あーあぁ、えらいことになっちゃってるねぇ」


 後ろから、呑気な声。


 振り向くまでもなく分かる。


 ルナだ。


 俺の肩越しにスマホ画面を覗き込み、完全に他人事のテンションでそう言った。


「え、ちょっと待って」


 すかさずヒカリが声を上げる。


「元はと言えば、ルナが勝手に入ってきたからじゃない!」


「だってさ〜」


 ルナは悪びれもせず、肩をすくめた。


「コッチーが強すぎるのが悪いんだって。黙って見てるの、無理でしょあれ」


「無理じゃない! 撮影中だったよ!」


 二人のやり取りをよそに、もう一人静かに俺の背後へ。


 カナデだ。


 無言でスマホ画面を覗き込み、流れるコメントを目で追っている。


「……すごい量」


 ぽつり。


 俺はスマホを持ったまま、深く息を吐く。


「正直……ここまでとは思ってなかった」


 それは本音だ。


 一階層でほとんど人が来ない配信しかしてこなかった俺からすれば、今の状況は少し現実味がなさすぎる。


 確かにきっかけはあった。


 スリースターズを助けたあの配信。

 切り抜き。

 SNSでの拡散。


 だが――


 それだけじゃない。


 十一階層での戦闘。

 逃げずに、誤魔化さずに、剣を振った。


 あれをちゃんと見てくれた人たちがいる。


 コメントをもう一度見る。


“一階層配信ばっかりだったから分からなかった”

“判断が異常に早い”

“元アケボノ前衛って、伊達じゃなかったんだな”

“普通に実力派だったわ”


 胸の奥が、少しだけ熱くなる。


 ――見てもらえた。


 スリースターズのおまけじゃない。

 謎の存在でもない。


 三枝恒一という一人の探索者を、ちゃんと評価しようとしている声だ。


 ルナが横からニヤッと笑う。


「ほら〜、ちゃんと人気あるじゃん、コッチー」


「……からかってるだろ」


「本気だよ、本気〜!」


 ヒカリは少し表情を和らげて、頷いた。


「でも……よかったです。恒一さんの剣、ちゃんとみんなに伝わって」


 カナデも短く。


「……数字も、反応も、自然」


 俺は、スマホを伏せた。


「あぁ。みんな、ありがとう」


 俺は十一階層で前に出た。

 斬るべき敵を斬った。

 今できる全力を出した。


 その結果が、今ここにある。


 自信を持ってそう思えた。


 そんな時、

 

 事務所のドアが静かに開いた。


「皆さん、今日もしっかり揃ってますね」


 落ち着いた声。


「これは、なかなかの反響じゃないですか」


 その声を聞いた瞬間、場の空気がすっと切り替わる。


 神崎社長だ。


 俺は、自然と背筋を正した。


「見ましたよ、三枝さん」


 神崎社長は、俺の正面に腰を下ろしながらそう言った。


「配信、大成功ですね」


「……ありがとうございます」


 正直、どう返せばいいか迷ったが、素直にそう答えた。


「視聴者の増え方も自然ですし、反応もいい。一過性のバズじゃないと思われます」


 淡々とした口調。

 だがその目、その言葉はしっかりと俺を評価していた。


「ただ――」


 そこで、ちらりと視線が横のルナへ。


「……はい」


 ルナは、なぜか胸を張った。


「勝手に映り込むのは、如何なものかと」


 静かで穏やかな口調のまま、社長はルナにそう告げる。


「ほら、やっぱり社長も怒ってる!」


「えー? でも結果オーライじゃん」


「結果オーライじゃない! 恒一さんにも迷惑かけたんだから」


「いや、俺は……別に気にしてないけど」


 まぁ実際、そのおかげでこれだけ動画が回っていると言ってもいいわけだし。


 そんなやり取りに、社長は苦笑する。


「まあ……確かに少し騒ぎにはなりましたが」


 俺を見る。


「悪い方向ではありません」


 それを聞いて、少しだけ肩の力が抜けた。


「むしろ――」


 社長は続ける。


「今の反応を見る限り、次に繋げるには絶好のタイミングです」


「次、ですか?」


「ええ」


 社長は、手元のタブレットを操作する。


「ちょうど、大きめの任務が入ったところなんです」


 画面がこちらへ向けられた。


「昨日の任務、十一階層で確認されたモンスターの大量発生。それと同じ兆候が――」


 一拍。


「十九階層でも、観測されました」


 空気が少しだけ張り詰める。


 十九階層。


 それはC級では歯が立たず、B級でも慎重な対応が求められる深度。


「今回は、その掃討と原因調査が任務内容です」


 社長は淡々と説明する。


「危険度は高め。ですが、その分注目度も高い」


 そこで、にっこりと微笑んだ。


「……ここで、コラボといきましょうか」


 一瞬、沈黙。


 次の瞬間。


「来たぁ!!」


 ルナが、嬉しそうに声を上げた。


「やっぱそうなるよね!」


「ルナ、静かに!」


 ヒカリは注意しつつも、どこか覚悟が決まった顔だ。


「でも……確かに。今の私たちと恒一さんの実力を合わせれば、十九階層も問題なくいけそう」


 カナデも短く頷く。


「……合理的」


 全員の視線が、俺に向く。


 俺は、少しだけ考えた。


 配信。

 コラボ。

 十九階層。


 この前まで、ただの中年C級探索者だった俺が、ついにここまできた。

 こうやって少しずつ最前線に近づくことで、俺の本当になりたい強さや頂きが見えてくるかもしれないな。


「分かりました」


 そう言うと、ルナが両手を上げる。


「よっしゃ!」


 ヒカリも、ほっとしたように微笑んだ。


「頑張りましょう、恒一さん!」


 社長は満足そうに頷く。


「では、正式な任務開始は――」


 一拍。


「少し休暇を挟んでからにしましょう」


「休暇、ですか?」


「ええ」


 社長はきっぱりと言った。


「現在、探索者協会が十九階層の正確な危険度を測っているところです。それが済み次第になるので、最低二日ほどはあるかと」


 その言葉に、全員が真剣な表情になる。


「その間、しっかり休むこと。配信の告知と調整はこちらで進めます」


 社長は立ち上がり、最後に俺を見た。


「三枝さん」


「はい」


「今日の配信で、あなたは謎の強い人を卒業しました」


 一瞬、言葉に詰まる。


「次は――」


 微笑み。


「スリースターズと並び立つ探索者として、見られることになりますよ」


 胸の奥で、何かが静かに動いた。


『恒一』


 時折、俺の中でボソリと呟く彩芽。


『二日……あるらしいな』


(え、だから何だよ?)


 嫌な予感がする。 


『少し、しごいてやる』


(……まじですか)


 自分の修行にヒカリの修行、十一階層のソロ探索に次は十九階層でのコラボだ。


 疲弊しきった中年の俺にはもう、断る元気など一欠片もなかった。



 * * *



 十九階層へ向かう当日。

 堺城ダンジョンタワー。


 スリースターズが到着する少し前、あるパーティが転移門前で佇んでいた。


 高くそびえる塔を見上げながら、探索者パーティ〈アケボノ〉の吉祥寺は面倒くさそうに首を回す。


「……ようやく二十階層も後半に差し掛かってきたってのによ」


 吐き捨てるように言う。


「ここにきて逆戻りとか、マジでないわぁ」


 それに、すぐさま同意の声が被さった。


「ほんとそれ」


 腕を組んだ柊が、鼻で笑う。


「三枝とかいう足手まといがいなくなって、楽になったところだったのに」


 軽い口調。

 だが、その言葉には遠慮も配慮もなかった。


「せっかくペース上がってたのになぁ。また下の階層の掃討とか、時間の無駄でしょ」


 二人の愚痴を聞きながら、市村は少し困ったように視線を逸らす。


「……まぁ、そう言わずに」


 なだめるような声色。


「今回は複数のパーティが任務を受けてるみたいですし。十九階層で異変ってことは、多分それなりの難易度なんじゃないですかね」


「それなり、ねぇ」


 吉祥寺は肩をすくめた。


「どうせ、雑魚が増えただけだろ。上の連中がビビりすぎなんだっての」


「僕らが行けば、すぐ片付きますよ」


 市村はそれ以上言わなかった。


「……まぁ、仕方ねぇか」


 吉祥寺が前を向く。


「とりあえず行くぞ」


 視線の先には、淡く光る転移門。


「十九階層へ」


 その一言を合図に。


 アケボノの三人は、何の疑いもなく足を踏み出した。


 そこに待っている異変の正体を、まだ誰も知らないまま。

 

 

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