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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 七瀬ミコト


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第6話 勝因は、戦わなかったこと

勝利の余韻は、思ったよりも早く消えた。


「いやぁ、助かった!」

「怪我人が出なくてよかったな!」


村人たちは口々に言い、興奮した様子でゴブリンの死体を処理している。

だが、俺は一歩引いた場所で、静かにその光景を見ていた。


――勝った。

だが、それで終わりじゃない。


「……正直、紙一重だったな」


小さく呟く。


古参の男が、それを聞き逃さなかった。


「何だ? 勝ったんだぞ」

「文句でもあるのか?」


「いえ。反省です」


男は怪訝そうな顔をした。


「反省?」


俺は地面にしゃがみ込み、枝を拾う。

それで、土の上に簡単な図を描いた。


三つの丸。

それがゴブリン。


一本の線。

林道。


「ここで、敵は突っ込んできた」


枝を動かす。


「そして、ここで視界を奪った」


煙の位置。


「結果、混乱した」


男は腕を組み、黙って見ている。


「でも、もし」


俺は枝を止めた。


「もし、ゴブリンがもっと賢かったら」

「もし、数が多かったら」

「もし、林に入らなかったら」


男の眉が、わずかに動いた。


「……どうなってた?」


「怪我人が出てました」

「最悪、死人も」


周囲にいた村人たちが、息を呑む。


「そんな……」


「勝ったから、見えなくなるだけです」


俺は枝を置き、立ち上がった。


「今回の勝因は、勇敢さじゃない」

「強さでもない」


少しだけ、間を置く。


「――戦わなかったことです」


「……は?」


誰かが、間の抜けた声を出した。


俺は、続ける。


「正面から斬り合わなかった」

「無理に倒そうとしなかった」

「相手の得意を潰した」


「それを、“戦わなかった”と言ってるだけです」


村人たちは、互いに顔を見合わせている。

理解しきれていない。


だが、古参の男だけは違った。


「……なるほどな」


彼は、低く唸るように言った。


「昔、若い頃にな」

「気合で突っ込んで、仲間を死なせたことがある」


場の空気が、静まる。


「勝った。確かに勝った」

「だが、今でも夢に見る」


男は、俺を真っ直ぐ見た。


「お前のやり方は……臆病かもしれん」

「だが、間違ってはいない」


俺は、深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


その日の午後。

俺は一人、再び林道に立っていた。


戦闘があった場所。

踏み荒らされた地面。


「……次は、もっと楽に勝てる」


そう確信できた。


今回、分かったことは多い。


・指示は短く

・合図は一つ

・欲張らせない


だが、同時に課題もある。


「俺がいなきゃ、回らない」


これは、危険だ。


もし俺が倒れたら?

もし指示が届かなかったら?


「再現性が、足りない」


だから、次は。


夕方、俺は村人を集めた。


「少し、時間をください」


視線が集まる。


「今日のことを、忘れないために」

「次も同じことができるように」


古参の男が、腕を組んだまま言う。


「訓練か?」


「はい」

「でも、剣を振る訓練じゃない」


ざわつく。


「何をする?」


俺は、はっきりと答えた。


「役割を決めます」

「誰が前に出るか」

「誰が合図を出すか」

「誰が下がるか」


村人たちは、戸惑いながらも頷いた。


「それだけで、結果は変わります」


夜。


納屋に戻り、横になりながら考える。


この世界では、

勝敗は「強いか弱いか」で決まると思われている。


だが、違う。


「勝てる状況を、作れるかどうかだ」


そして、それは才能じゃない。

知識と、経験と、整理。


俺は、天井を見つめながら静かに息を吐いた。


「……俺は、剣豪にはなれない」


筋肉も、魔力も、まだ足りない。


だが。


「負けない戦い方なら、作れる」


それでいい。

それがいい。


外では、夜虫の声が響いている。


小さな村。

小さな戦い。


だが、この考え方は――

きっと、もっと大きな場所で必要とされる。


そんな予感が、確かにあった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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