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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 七瀬ミコト


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第2話 走れない少年

翌朝、目を覚ました瞬間に理解した。


――体が、痛い。


全身が重く、特に脚が鉛のようだった。

昨日は大した距離も動いていないはずなのに、筋肉が悲鳴を上げている。


「……これは、想定内か」


納屋の天井を見上げながら、ゆっくりと呼吸を整える。

無理をすれば、今日は何もできなくなる。

だから、焦らない。


体を起こし、昨日と同じように深く息を吸い、吐いた。


立ち上がる。

……ふらつくが、転ばない。


「よし」


村の外れへ向かう途中、すでに何人かの子どもたちが走り回っていた。

笑い声。

軽やかな足音。


その中の一人が、俺に気づいて声をかけてくる。


「おじさん、今日も歩くの?」


悪意はない。

純粋な疑問だ。


「ああ。今日は走らない」


「えー? 走らないと強くなれないよ?」


そう言って、子どもは笑いながら走り去った。


……なるほど。


この世界では、

走る=努力

苦しい=正しい

そういう価値観なのだろう。


「だから、壊れる」


誰にも聞こえないよう、小さく呟く。


俺は歩く。

昨日より少しだけ速く。

姿勢を意識して。

呼吸は、一定。


十歩。

二十歩。


胸は苦しくならない。

脚も、動く。


「……数字で見えないのが、惜しいな」


前の世界なら、心拍数やペースが分かった。

だが、体感でも十分だ。


三十分ほど歩いたところで、あえて休憩を入れる。


木陰に腰を下ろし、水を飲む。


すると、また視線を感じた。


昨日声をかけてきた村人――屈強な男が、腕を組んでこちらを見ている。


「お前さん、冒険者か何かか?」


「いいえ。ただの……流れ者です」


「ふぅん。ずいぶん地味な鍛え方だな」


「ええ。地味です」


男は肩をすくめる。


「そんな歩き方で、魔物と戦えるようになるとは思えんがな」


正論だ。

この世界では。


「戦うために、歩いてるわけじゃないので」


そう返すと、男は少しだけ眉をひそめたが、それ以上は何も言わなかった。


――走る時間になった。


俺は、立ち上がる。


いきなり全力では走らない。

まずは、軽く。


足を前に出し、リズムを刻む。


「……っ」


五分。

息が乱れる。


すぐに、歩きに戻す。


これでいい。


周囲から見れば、意味不明だろう。

走ったと思ったら、すぐ歩く。

怠けているようにも見える。


だが、知っている。


これは、最短ルートだ。


再び、走る。

今度は六分。


「……お?」


さっきより、少し楽だ。


「……はは」


思わず、笑みがこぼれる。


村の若者たちが、遠くでこちらを見ている。

ひそひそと、何か話しているのが分かる。


「変なやつだな」

「走るなら、ちゃんと走れよ」


聞こえてくる声。


構わない。


「正しい努力は、理解されないものだ」


昼前には、完全に脚が重くなった。

そこで、今日の運動は終了。


「やりすぎない」


これも、重要だ。


午後は、体を休めながら村の手伝いをした。

水汲み。

薪割り――は、危険なので軽作業のみ。


それでも、夕方になる頃には分かった。


「……昨日より、確実に動けてる」


疲れてはいる。

だが、倒れそうにはならない。


昨日は、十歩で息が上がった。

今日は、普通に歩ける。


成長だ。


それも、異常なほど早い。


夜。

納屋に戻り、天井を見上げながら考える。


「この世界では、努力の定義が雑だ」


才能がある者は、多少無茶をしても伸びる。

だから、誰も疑問を持たない。


だが、才能がない者は――


「壊れるか、諦めるか」


だから、凡人は強くならない。


俺は、拳を握った。


このスキルは、派手じゃない。

だが、確信している。


「これは……積み上げた分だけ、必ず返ってくる」


正しいやり方で。

正しい量で。


才能がないからこそ、最適化する。


――この世界で、それをやっているのは。


「今のところ、俺だけだ」


外では、虫の声が響いていた。


静かな夜。

だが、俺の中では、確かに何かが動き始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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