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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 七瀬ミコト


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第10話 夜襲

夜は、静かすぎるほど静かだった。


虫の声が途切れ、風も止んだ。

その違和感に、最初に気づいたのは見張り役の若者だった。


「……来るぞ」


低い声。

だが、確かに届いた。


闇の向こう。

林の奥で、何かが動く気配。


「魔物だ!」


警鐘が鳴る――はずだった。

だが、今回は違った。


「待て」


若者の一人が、手で制した。


「騒ぐな」

「数を確認してからだ」


闇に目を凝らす。


――三。

いや、四体。


ゴブリン。

しかも、前回より動きが静かだ。


「……夜襲か」


誰かが、息を呑む。


ここで、自然と視線が集まった。


――俺が、いない。


そうだ。

今夜、俺は村の外れで休んでいた。

出立の準備のために。


「……どうする?」


一瞬、迷いが走る。


だが、その直後。


「役割を思い出せ!」


誰かが、低く叫んだ。


「前に出るのは二人!」

「魔法は合図があるまで撃つな!」


――動いた。


まるで、何度もやってきたかのように。


前衛が、あえて姿を見せる。

ゴブリンが反応する。


「ギィッ……!」


「下がれ!」


合図と同時に、二人が後退。

誘導だ。


林の中へ。

足場の悪い場所へ。


「……まさか」


遠くから、その様子を見ていた俺は、思わず息を止めた。


――同じだ。


俺が考えた通りの動き。

いや、もう“俺の”動きじゃない。


「今だ!」


短い号令。


魔法が、地面を焼く。

炎と煙。


「ギィッ!?」


混乱するゴブリン。


「欲張るな! 一撃で下がれ!」


剣が走り、すぐに距離を取る。

追撃しない。


四体のゴブリンは、完全に連携を失った。


「……いける!」


一体が倒れ、

二体目が逃げようとする。


「逃がすな、囲め!」


包囲。

だが、深追いはしない。


最後の一体が倒れた時、

誰一人として、大きな怪我をしていなかった。


静寂。


「……終わった?」


誰かが、震える声で言う。


「終わった」

「全員、無事だ」


夜の闇の中、

遅れて、安堵の息が漏れる。


その時だ。


「――よくやった」


闇の端から、俺が姿を現した。


一斉に、視線が集まる。


「見てたのか?」


「途中からな」


俺は、正直に答えた。


「完璧だった」


誰かが、信じられないという顔をした。


「俺たちだけで……?」


「そうだ」


はっきり言った。


「もう、俺はいらない」


ざわ、と空気が揺れる。


だが、それは否定のざわめきじゃない。

戸惑いと、誇り。


古参の男が、深く息を吐いた。


「……ああ」

「確かに、そうだな」


彼は、周囲を見渡す。


「こいつらは、もう“守られる側”じゃない」


若者たちが、互いに顔を見合わせる。

疲れている。

だが、怯えてはいない。


俺は、胸の奥が静かに満たされるのを感じた。


――通じた。


俺のやり方は、

俺がいなくても、機能した。


それが、何よりの証明だ。


夜明け前。


俺は、村の外れで荷を背負っていた。


古参の男が、見送りに来る。


「行くのか」


「はい」


短い沈黙。


「……お前がいなくなっても」

「この村は、大丈夫だ」


「ええ」


それが、俺の目的だった。


男は、少し笑った。


「冒険者ギルドか?」


「ええ」

「もっと厳しい場所で、試します」


「災難だな」


「かもしれません」


そう答えて、俺は一歩踏み出した。


振り返ると、

村はいつも通り、静かだった。


だが、確かに変わっている。


――教えただけなのに。


それだけで、人はここまで変われる。


俺は、空を見上げる。


これから先、

もっと大きな世界で、

もっと強い相手が待っている。


だが、もう怖くはない。


「次は――個人としてだ」


夜明けの光が、道を照らしていた。

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