第86話 ゴブリンで実力を見よう1
アルドさんとエミリーさんを迎え、イストーの街近郊の森の中腹へとやってきた。
廃墟の方面は通らないようにしたのでアイリたちと出会うことはないものの、外にいたらどうだろうか。
それはさておき、森中腹にやってくるのはこれで2回目だ。森がどんどん深くなり、木々も大きく成長して見通しづらくなるこの場所には、様々な魔物が棲んでいる。
例えば前に出遭った一角猪もそうだ。
「ここで注意しなければいけないのは周囲の状況だ。ゴブリンを見つけてもすぐに攻撃に移ってはいけない。なぜならここには一角猪や森狼などの魔獣が棲んでいるからだ。ゴブリンを攻撃中も一角猪や森狼を攻撃中もほかの魔獣に襲われる可能性に常に注意を払え」
「特にこの辺りはゴブリンがほかの魔獣を狩ってたりもするから鉢合わせる確率も高いからね。ぼやぼやしていたらいつの間にか囲まれていましたなんてことになりかねないよ」
アルドさんとエミリーさんの言葉を聞いて、前にゴブリンと遭遇した時のことを思い出した。
あの時は確かにゴブリンは一角猪を狩っていたはず。
つまりいつでもそういう状況が起きうるということだ。
「一応ゴブリンの巣穴が近くにあるという話もある。定期的に見回って潰したりはしているがいたちごっこなのが現状だな」
魔物としてのゴブリンはいつの間にか棲みついているのだろうか。
どこかに大きな村でもある?
「ゴブリンの村とかはあるんですか?」
「村か……。あるにはあるが……」
「たしかにゴブリンの村ではあるんだけど、亜人としてのゴブリン種なのよね。私たちは村の中に入れたことがないからどういった状況なのかはわからないから何とも言えないけど、もしかしたら村の方で何か情報を得られるかもしれないわね」
「なるほど」
「とりあえず周囲を確認しながら課題のゴブリンを探すぞ」
イストーの森中腹から奥には亜人としてのゴブリンが住み着いているそうだ。ということは亜人としてのオークなんかもいるのだろうか? ともあれ、森の浅瀬以外は案外魔境なのかもしれない。
そんなことを考えながら進んでいると石の武器を持ったゴブリン3体組に出遭った。
前も3体だったはずなので、もしかしたらあれが1つの纏まりなんだろう。
「石器ゴブリンだな。あいつらは前衛2と後衛1の組み合わせで現れるのが基本だ。初心者の場合は地形をうまく生かして離れすぎずに狙って戦うのがベストだ。前衛の武器はナイフや槍がほとんどだけどたまに木に石を挟んだような石器を持っているやつもいる。小さいからって油断するなよ?」
「援護はするから1人ずつ戦ってみようか。連携はその後確認してみよう。アルドはゴブリン2体を引きつけられる?」
「そちらは問題ない。まず誰から行く?」
どうやら3体のうち2体はアルドさんが引き付けてくれるようだ。となると基本は1対1での戦いとなる。
「お母様、私が行きます」
早速名乗りを上げたのはクルスだ。そういえばクルスが戦ってるところを見たことがないかも。
「じゃあクルスちゃん。普通の攻撃でもいいし魔法でもスキルでもいい。実力を見るから戦ってみて」
「はい」
「クルスがんばって」
エミリーさんのアドバイスとルナの応援を背に、クルスはゴブリンに立ち向かった。
そしてーー。
「敵対者よ、己が罪を清算する時が来た【ディバインブレード】」
クルスがそう口にした瞬間、クルスが若干浮き、その背に光の翼と頭に光輪を出現させる。
そして手を上に翳と同時にクルスの背にいくつもの光の魔法陣のようなものが描画され、そこから輝く光の剣が現れる。
その件はそのままゴブリンに向かって直進し、その身体を貫いた。
「ゲッ……ゲギャァァァァァァ!?」
ゴブリンは光の剣で貫かれた直後、断末魔の悲鳴を上げ白い炎を体中の穴という穴から放出させて灰となって崩れてしまった。
「終わりました。今のは単体用の攻撃スキルです」
「「……」」
「クルスやりますね」
「クルスさすが。昔から変わってない」
「大気圏内専用というだけあってなかなかいいですね。3型の戦いは初めて見ますが面白いです」
敵を抑えているはずのアルドさんと敵であるはずのゴブリンがその光景を見て固まり、エミリーさんは絶句していた。
そしてーー。
「ギャッ、ギャー!」
ゴブリン2体は逃げ出した。無我夢中で振り返ることもなく武器も投げ捨てて。必死に逃げ出してしまったのだ。
「天使、様?」
そう呟いたのはエミリーさんだった。
この世界に天使って種族いたっけ? とボクは思ったがもしかしたら神の遣いか何かでいるのだろう。
「お母様。褒めてください」
その背と頭から光輪や翼を消したクルスがとてとてとこちらに歩いてくるので頭を撫でて抱きしめてしっかり褒める。
「よくできました。偉いですよ」
「えへへ」
クルスは普段落ち着いているけど、こういう時は本当に嬉しそうで可愛らしい表情をする。
「次見つけたら私」
そしてルナは対抗心を燃やした。




