第83話 イストー探索者組合で登録しよう
イストーの街まではそれなりの距離を歩くわけだけど、その間に何もしていないわけではない。
一番良くやることといえば薬草などの素材収集だろうか? この辺りの素材は探索者組合の採集系依頼に良く載っているようなので集めておいて損はない。というかボクが欲しい素材も多いんだけどね。
「傷薬になるソーン草、疲労回復用のアルム草、おっ、こんなところにクリネ草がある」
「マスター、そろそろ森から出ましょうよ。登録してから採集でもいいじゃないですか……」
森をみんなで歩いてる途中、なじみ深い薬草が群生していたのでついつい採集してしまった。
1つ見つければ2つ見つけ、2つ見つければ別の物を見つけるという感じで現在地はまだ森の中だ。
「うっかりしていました。つい採集するのが楽しくて。あっ、これは【陽光石】だ」
【陽光石】は太陽の光を中に集めてため込む性質があるちょっと変わった石だ。日中はちょっとオレンジ色なだけでほかの石とあまり変わらない。だけど夜になるとうっすらオレンジ色に光るという特性がある。ほかにも【月光石】や【星光石】といったものもある。
これらの石は面白いことに砕くと中に小さな結晶がある。
なんでも吸収した光を石の中で結晶に変える性質があるんだそうだ。
結晶の成長度合いに応じて石の部分が徐々に結晶に置き換えられていくようになる。
利用方法としてはこの結晶を取り出して粉砕して、薬などに加える。
まぁ添加剤のような役割があるというわけだ。
例えば傷薬を作るときに結晶の粉末を混ぜれば、傷の治りが早まる効果を追加することができるという感じ。
ちなみにこの結晶、鉱石というわけではないらしく石から取り出すと適切な保存をしない限り1日くらいで消えてなくなってしまう。
「組合に納めるにはもったいないですね。いいなぁ。素材の宝庫……」
なぜだかはわからないけど、この森は良い素材がたくさん採集できるようだ。
「もー。早く行きますよ? 妹ちゃんたちもマスターを引っ張るの手伝ってください」
「「はーい」」
「うぐぐ。わかりましたよぉ。それじゃあそろそろ行きましょうか」
ミーティアだけじゃなく、クルスやルナにも引っ張られてしまったら立つ瀬がない。とっとといって終わらせて素材集めしてやる……。
イストーの街まではみんなでおしゃべりをしつつ徒歩で移動する。途中馬車に追い抜かれ、行商人に話しかけられ、旅人にじろじろと見られながらも門に辿り着く。
「いつ見ても賑わっていますねぇ」
「そうですね。この辺りでは一番大きな都市のようですから当然でしょう」
「お母様、いつもの門は空いています」
「早く行きましょう」
双子にも急かされつつ神殿側の門を通過。特に何事もなくイストーの街へと入ることができた。
「お母様、私たちの領域もいずれこのように発展できるのでしょうか?」
「今はみんなでお家を建ててるけど産業はお母様とノームさんたちがほとんど」
「たしかにそうですね。今後特産品について考える必要がありそうです。たとえばよくあるのは工芸品。ノームさんたちが協力的なので武具類や道具類でもいいかもしれませんけど、設備をもう少しどうにかしたいですね」
「しばらくの間は汚染が問題になりそうですのでそのあたりだけ気をつけていただければいいかと思います」
発展には自然環境の破壊や汚染が付き物。この辺りをどうにかしておきたいところだなぁ。
そんなことを考えながらイストーの街を歩き、探索者ギルドのある庁舎までやってきた。相変わらずここは人の出入りが多くて活気があるのを感じる。さすがあらゆる組合が集まっているだけはあるだろう。
「こんにちはー」
「あっ、狐白さん。こんにちは。今回はまた知らない子たちが増えていますね」
受付前でそう声を掛けて来たのはイストーの街探索者組合受付のお姉さんことファニスさんだ。
彼女は一応ランクの高い錬金術師という側面も持っている。
「今回はこっちの子たちの登録に来ました。ボクの従者のミーティア、引き取って母替わりをやっている双子のクルスとルナです」
「これはまた可愛い子たちですね。分かりました」
今日のミーティアはシャツとパンツに革防具を身に着けていてボーイッシュな感じの探索者らしさを前面に押し出している。双子は白と黒のお揃いのワンピースに革防具を所々配置している。具体的には胸と腰回り、腕、手、ひざ、脚、靴だ。
「では登録致しますので身分証をお願い致します」
「はい。こちらです」
「お預かりいたします」
ファニスさんに身分証明書を渡すとそのまま新規登録のための作業を始めに裏へと行ってしまった。
出来上がるまで暇になってしまう。
「うーん。ちょっとだけ依頼ボードでも眺めてみますか? どんな依頼があるか確認してみるのも面白いかも」
「そうですね。依頼の傾向とかわかればいいかもしれません」
「賛成」
「依頼ボード、どこにあるんだろう」
そんなわけで、ボクたちは依頼を眺めて過ごすことにした。
採集依頼あるかな?




