第8話 酒好きはドワーフだけに非ず
さっそく転送されてきたオロチ酒造の【大蛇の涙】を空間拡張バッグに入れ、桃花と瑞葉と一緒に先ほどの世界へと移動する。
今回の移動も特に問題はなかったので仮拠点にてお酒を取り出し、2人にどうすれば呼べるのかを確認することにした。
「ノームさんってどうやって呼び出せばいいのでしょうか」
「ノームたちならお酒をコップに入れて放置してればすぐに来ます! もちろん精霊の多くいる場所限定ですけど。この森にはノームもいるのであっという間のはずです!」
「なるほどです。じゃあ早速設置してみますか」
瑞葉のアドバイスを元に【大蛇の涙】を付属していた升に入れてしばらく待つことにした。
するとどこからともなく精霊の気配が近づいてくるのを感じた。
「酒! 酒の匂いだ!」
現れたのは身長100cmほどの大きさの髭面のまるで物語に出てくるドワーフのようなずんぐりむっくりした見た目の男性でした。
「どこの誰かは分からんが、この酒を貰ってもいいだろうか?」
敷物の上に置かれた升酒を見てからボクの方を見るノームさん。
「もちろんです。ちょっとしたお願いをしたくて用意しましたので」
「ふむふむ。そうかそうか。では願いとやらは後にしてまずは一口」
ノームさんはそう言うと、恐る恐る升酒を持ち上げてじっくり観察する。
「ほほう。これはこのまま飲むものなのか。珍しいのぅ。毒になるような成分はなし。香りは極上。酒精も十分なようだ。簡単な鑑定だが異世界の上質な酒を出ておる。では失礼して。んぐ!? 何だこの酒は!! う、うまいのぅ!!!!」
ノームさんは一口を口に含むとそのように叫んだ。
するとどこからともなくたくさんのノームさんたちがやってきたのだ。
「なんだどうした」
「おい酒があるじゃないか。あいつめまさか一人で先に?」
「あの大の酒好きを見ろ。まるで人間の子供のように大はしゃぎをしているじゃないか」
「だとしたらあの酒の味が気になる」
などなど、集まってきたノームさんたちはお酒に興味津々なご様子だ。
「いや~、わしらが加護を与えておるドワーフ連中の酒も旨いが、これはそれ以上だな、驚いたわい。」
「なんだと!? そんなに旨いのか!?」
「お前だけずるいぞ! わしにも寄こせ」
「まぁまて、まずはこの異界の嬢ちゃんの話を聞いてからだ。見たところ姿は変わっているが見知った気配の精霊を従えておる」
ノームさんたちは口々に酒とボクと桃花と瑞葉を見てそう話す。
そろそろ本題に移ろうかな。
「ありがとうございます。ボクは異世界の領域からやってきた新神の妖狐という種族のもので、狐白という名前です。ノームさんたちにはボクの領域の建物の建築などをお願いできればと思いお酒を持参してやってきました。2人の精霊は相性が良く契約した下級精霊たちです」
ボクがそう話すと、ノームさんたちは桃花と瑞葉を見る。
「通常人型になれるのは中級精霊からだ。最下級は言語を話せんし、下級はテレパシーでしか意思を伝えられん。だが見たところ下級精霊のまま普通の中級精霊以上の力を得ておるように感じる。この世界の人間にはできん芸当だ。お主の話にも嘘は感じられない。ちょっと集まったやつらと相談するから待っておれ」
ノームさんはそう評すると、集まってきたノームさんたちを話し合いを始めた。
それからどのくらいの時間が経っただろうか。
桃花と瑞葉が疲れてボクの膝を占領して寝始めた頃、ようやく話し合いが終わったようだった。
「建築などの件、よくわかった。わしらと契約するというなら先ほどの酒かそれに近い酒を用意してくれるのだろうな?」
ノームさんはそう言うと、すっかり空になった升を指さした。
「入手は可能ですけどいつでもあるかはちょっとわかりません。ただ美味しいお酒が飲めることは保証します」
ボクの説明を聞いたノームさんは一回頷くと、再び口を開いた。
「入手するのに必要なものがあるなら手伝おう。まぁわしらは材料がなければ何も生み出せん。道具はどうにかできるがな」
「わかりました。ちょうどそろそろ何か作って商品購入用のポイントを増やしたかったところなんです。歓迎しますのでご協力をお願いします」
「うむ。よかろう。とりあえずわし含めここに集まった5人が先にそちらに移動しよう。他は色々準備が出来てからだ」
「ありがとうございます」
こうしてボクはノームさんたちを迎え入れることに成功した。
あとで【大蛇の涙】を提供しておこうと思う。
「おぉ、言い忘れておったがそのゲートは精霊が自由に行き来できるようにしておいてくれ。他のノームたちが出入りしたりお主と契約したい者もやってこれるようになるだろうからな」
「わかりました」
とりあえずホワイトリスト機能があるので登録しておこうかな。




